ナンセンスな 地獄めぐり ドラマ 「 ヤコペッティの大残酷 」 | berobe 映画雑感

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「 映画 」と「 本 」の感想

「 ヤコペッティの大残酷 」 (イタリア・1975)

 

グァルティエロ・ヤコペッティ  と、 フランコ・プロスペリ が 監督した

「 ファンタジー・人間ドラマ 」。

 

映画本 『 怖い、映画 』 で 取り上げられていて 興味が 湧きました。

「 TSUTAYA 」 に 「 発掘良品 」 として あったので 鑑賞。

 

 

原作は ヴォルテール『 カンディード 』 で、

「 楽天主義 」( 善なる神 が 選んだ世界は 最善の世界 ) に

疑問を呈するため、書いたみたいです。

 

タイトル に 「 大残酷 」 とありますが、グロ系 ではなく

「 人間の所業 」 としての 「 残酷 」 です。

 

 

城で暮らす 優しい若者 カンディード

男爵の娘、クネゴンダ姫 と 愛し合っていた カンディード は、

その場面を 男爵 に見つかり、城を追放されてしまう…。

 

 

主人公・カンディード の 「 時空を超えた 地獄巡り 」 の話ですが、

ナンセンスな 展開と シニカルな笑い で 「 コメディ 」 としても 観れ、

エロ要素 も 多めです。

 

 

ほぼ ネタバレ。

 

カンディード は 心優しく 純粋な 若者で、

彼が 慕う 哲学者・パングロス

「 この世界は 最善、何事も 最善 に仕組まれている 」 を 提唱して

います。

 

パングロス男爵らに 「 豚や鳥は 食べられるためにいる 」 と 暴食 を進め、

「 口があるのは 動物を 食べるため、腸は空にするため 」 など と

何事も 良い方( 最善 )に こじつけて います。

 

この 暴食場面、見逃せない?のが 「 三つのおっぱい 」 がある 女性が 幼児に 授乳している ところ。

 

「 三つのおっぱい 」 は、『 トータルリ・コール 』(90年)に ついで、

個人的には 2例目ですね。

 

クネゴンダ と イチャついていた( ク○ニ していた )のを見つかり、

城を 追放された カンディード が 出会ったのが、ブルガリア軍

( 大砲が あったけど、時代は 良く わからない… )

 

兵士の 三角帽子 に “目” が描かれているのが オカルティック で、

滑稽でもあり 好きな ビジュアル。

 

「 鉄条網 」“歯” で 噛み切る 訓練も くだらなくて 好き。

 

戦う相手は 何故か 現代の兵士

なので アサルトライフル で バンバン殺されます。

 

“張りぼて”ブルガリア軍隊“火炎放射で 燃やされる” 描写は

シュール ですね。 こういうのも 好きだな~。

 

天使の格好を させられた カンディード は、死ぬことを 命ぜられていましたが、生き延びます。

 

しかし、「 この世界は最善 」 として “原罪” を信じない パングロス と共に 審問官 に捕まり、異端として 拷問に掛けられることに。

 

この 拷問場 の場面、

圧延機 で プレスされた 女性 が、「 ペラペラの紙 状態 」 になって、

「 巨大な本 」( 拷問の紹介本?) に 貼り付けられたり、

 

裸の女性たち股間に “葉っぱ” を付けられ、次々と

ミンチに されたり( 全然グロくないです )と、かなり 楽しいんですよ。

 

拷問場で 拷問を 見ていた クネゴンダ が、

お尻を 叩かれている カンディード を見つけて、は 拷問から 解放

されるのですが、

 

クネゴンダカンディード“顔” ではなく、 “お尻”

気付くのが 笑えます。

 

その後 カンディード は、

「 主人がいない罪 」 で “吊るし首” に されそうになっている

黒人奴隷・カカンボ を、「 私が主人だ 」 と名乗り出て 救出します。

 

処刑者たち の 衣装は ちゃんと “KKK” 風 だ )

 

でも、檻に 閉じ込められていたり、拘束されている 女性 を

助けようとはしない

カンディードカカンボ には 苦笑してしまいますね。

 

そして カンディード と再会した クネゴンダ の回想では、

ロックを 聴いていた クネゴンダ と、鎧を着た ギタリスト との

セックス場面が。

 

鎧を着てのセックス は 今年は 『 エクスカリバー 』(81年)でも あったので、今年 2例目です。

 

しかも 体位を 変えていて 結構 長く、エロくて(?) マヌケで、

ノリノリの 音楽も流れ 楽しいぞ~。

 

その後、審問官ギタリストユダヤ人 に さらわれた クネゴンダ を追い、

カンディードカカンボ と 共に 「 コロンブスの船 」 で

現代のアメリカに。

 

アメリカ で再会した パングロス は、哲学者 から TVディレクター に

変わっていて、

TV を使い 大勢に 向け 「 世界は最善 」を発信 しています。

 

しかし ギタリスト と ショー を( 予定?)していた  クネゴンダ

ここには おらず、

 

カンディードカトリック と プロテスタント が対立 している

アイルランド へ行きます。

 

「 アイルランド紛争 」 審問官 は カトリック です )

 

ここでの パングロス の コメント、

「 キリスト教の 平和な理想 が 起こす衝突 」 が 皮肉たっぷり で、

 

紛争の中 普通に暮らす 人々の描写に ニヤリと しちゃいます。

 

手りゅう弾で 遊ぶ 子供が 兵士を 吹っ飛ばして 喜ぶ様に

『 ザ・チャイルド 』(76年)を 思い出し、うすら寒く なりますが…。

 

審問官 がいる教会の 「 ステンドグラスの絵 」クネゴンダ ですが、

当の クネゴンダ審問官捨て イスラエル へ 行ったことが

わかり、カンディード は 後を追います。

 

その イスラエル では 「 兵士姿のクネゴンダ 」 の 大量の ポスター が

剥がされています。

 

出てくる イスラエル兵士全員女性 ですが、

それは イスラエル では 女性にも 兵役義務 が あるからでしょう。

 

なので 兵士達の シャワー場面が 普通に 楽しい。

女好きな(?) カカンボ の ニヤニヤ が 何気に 印象深いですね。

 

その後の イスラエル兵パレスチナ兵( こっちは男性 ) との

赤い花が 咲き誇る原野 ( 死後の世界のようだ ) での銃撃戦は、

 

「 死 」 と 「 美 」 が 同居する映像で、音楽も 美しく 印象に残る

名画面。

 

 

カンディードクネゴンダ を捜し 彷徨い、

“何でもない物”( シンボル ) を作る、

「 フラワーチルドレン 」( ヒッピー )たち と出会い、そこで クネゴンダ と再会。

何故か 男爵夫人など 城の者たち もいます。

 

でも、カンディード も含め、みんな 老人のような容貌。

 

カンディード「 何でも知っている 」 という ダルヴィーシュ

 

「 人間という 妙な動物は なぜ 存在するのか 」と 問うと、

「 そんなこと 知る必要がない 」との返答が、

 

「 この世は 邪悪すぎます 」と 問うと、

「 善悪を気にするなど お前のやることか 」との返答がきます。

 

そして 「 どうすれば 」の問いに、

「 頭がかゆい時、平気でノミを殺すだろ 黙って頭をかけ 」

と 身も蓋も無い 答えが…。

 

でも、個人的には 諦念や 達観は あまり 感じないな。

 

「 善悪は気にするな 」 は、

「 考えても 悪は無くならない 」 や、「 そもそも 善悪など無い 」って事

かな?

 

「 黙って頭をかけ 」「 好きなようにしろ 」って事なんですかね。

 

 

最後、川辺で佇み 思考する カンディード は、

対岸に 子供たちと 戯れる 若いカンディード を見つけます。

 

カンディード若い自分「 行くな 痛い目に遭うぞ!」

叫びますが 声は届かず、若い自分 は 去っていきます。

 

それを見た カカンボ

「 あんたと同じ、痛い目に 遭いたいのさ。 俺は遠慮するぜ 」 と、

去っていくんですね。

 

この カカンボ のセリフ が 監督の 心情っぽいな。

ヤコペッティ は 脚本も 書いていているし。

 

あと、監督 として 「 最後の作品 」 なので、

去りゆく カカンボ監督 が重なって見えますね。

 
最後の カンディード「 ループ 」若いカンディード は城に戻る ) も、
 
どうせ “悪い所業は 繰り返される” のだから、
「 善悪を気にするな 」( 気にしても 無駄 ) に 繋がるのかな、とも
思えます。
 
 
それとは 別に クネゴンダ の境遇が 興味深いですね。
 
クネゴンダギタリスト との
「 官能的な ショー 」「 看板広告 」 が出てる ) に 出されそうに
なったり、
審問官の教会 の 「 ステンドグラスの絵 」イコン )に 使われたり、
 
イスラエル ( ユダヤ人 ) では 「 女性兵士のポスター の モデル 」
なったりと 利用されて いますが、
 
最後は 男たち( 宗教や 争い ) から 抜け出してます。
審問官 は 激怒、ギタリスト に至っては 自殺する )
 
この 女性の したたかさ、たくましさ に 時代性を 感じますね。
 
( イスラエル での 戦闘場面は 「 女 対 男 」 の構図とも 取れるかな?
両者とも 全滅?してるけど… )

 
というわけで 今作は 哲学的な 意味合いもある、
ナンセンスな ( エロもある )コメディ で、個人的には かなり 楽しめました。
楽しめる人は 結構いそう ですね。