「 ブリムストーン 」
( オランダ/仏/独/ベルギー/スウェーデン/英・2016 )
マルティン・コールホーヴェン 監督、脚本 の
「 宗教サスペンス・西部劇 」 作品。
19世紀、アメリカ。
言葉を発する事 ができない 助産師の リズ は、
夫・イーライ と 2人の子供( 息子と娘 ) と暮らしていた。
ある日、顔に傷がある “牧師” が 村に来た ことで、リズ は動揺する…。
リズ 役、ダコタ・ファニング。
“牧師” 役、ガイ・ピアース。
ジョアナ 役、エミリア・ジョーンズ。
アナ 役、カリス・ファン・ハウテン。
宗教モノ で、エグい場面も あるようなので 気になっていた 作品です。
耐え忍ぶ 女性を 描いた 「 人間・ドラマ 」 だったけど、
サスペンス、宗教 色が 強いです。
個人的には ミステリー や ホラーの 要素 も感じましたね。
ほぼ ネタバレ…。
OP は 水中で、そこに 打ちこまれる 銃弾 の後、少女 の後ろ姿 が
映るのですが、
この 状況 と、ナレーションの 声の主 が気になります。
「 第1章 」 は 「 REVELATION 」 で、
発覚、暴露 の意味 のほか、宗教的な 「 啓示 」 の意味も あるようです。
( ここだけ なぜか 字幕 無しだった )
「 1章 」は、村に来た “牧師”と リズ の関係 のほか、
息子の リズへの態度 や、リズが 言葉を 話せない理由 と、
気になるところ が 多く、話に 引き込まれます。
あと、リズ家 が 飼っている 羊たち が 殺されるのですが、
「 羊飼い 」 は イエスの事 でもあるので、かなり 意味深な 描写なんですね。
最後は、リズの夫 が “牧師” に殺され、 リズと 息子、娘は
夫の父の家へ 逃げることに…。
次の 「 第2章 」 は 「 EXODUS 」、出国 ですが、宗教的には
「 出エジプト 」 の意味。
行き倒れた 少女・ジョアナ が、「 娼館 」 に売られる展開 ですが、
そこでは 娼婦にとって “理不尽な規則” が まかり通って います。
規則 を作ったのは 男 だからですね。
( 力ある者が ルール を作る ( 曲げる ) は、今も あるけど… )
年月が流れ 成長した ジョアナ が リズ だとわかり、
章題 通り “娼館からの逃亡” の流れに なるのですが、
ここは ミステリーっぽい “定番トリック” が あったし、
『 ジョジョ 5部 』 の 某キャラ の “覚悟” を彷彿とさせる描写も
あったりで、個人的には 盛り上がりましたね~。
この章で “気になるところ” は だいたい判明し、この話が
「 女性が 男性の 支配から逃れる 」話 だと わかります。
( 「 出エジプト 」 で 奴隷だった イスラエルの民 は ジョアナの事と
いえるが、逃げる きっかけ を作ったのが ”牧師” なのが 皮肉っぽい )
でも、この章 でも 少女・ジョアナ の意味深な発言、
「 ずっと 前から大人 」 が ありますが…。
次の 「 第3章 」 は 「 GENESIS 」 で、発端 のほか 「 創世記 」 の意味も。
( 字幕では 起源 だったけど 発端 の方が合ってるような… )
さらに 時を遡って 少女・ジョアン の家族の話に なるのですが、
結構 エグイ展開 で、個人的には ここから ホラー度 UP でしたね。
妻・アナ は 夫( “牧師” ) との セックスを 拒んでいるけど、
その事から 半ば 無理やり 結婚させられたってことが 推測できます。
1章、2章 では 「 口がきけない 」 女性 が出てきますが、
この章でも “鉄の口枷” を装着した形 で 登場し、
さらに、父( “牧師” )が 娘・ジョアナ に “手を出す” という 鬼畜展開にもなっていて、結構 滅入りますね…。
個人的に 面白かったのが “男が助けに来る” 場面。
逆光の “男” に “天使の羽が生えている” ように 見えるんだけど、
「 3章 」 最初に、“天使(?)に会った” との 「 祝福の報告 」 の場面 が
あるので、あの描写と 顛末 に 笑えるんですよ~。
( 天使は いない ( 救ってくれない ) という ブラック・ジョーク かな?)
最後の 「 第4章 」 は 「 RETRIBUTION 」 で、報い や 天罰 の意味。
「 第1章 」の続きで、リズ と “牧師” との 対決の展開です。
ほんの少ししか ないけど、
“牧師” の 『 ハロウィン 』(78年) の マイケル を彷彿とさせる
後半の 描写が 個人的に ホラー度 が 高かったですね。
“牧師” は 地獄を 受け入れている( 救済を求めていない ) のが
わかるのですが、
そこから 1章の 「 羊殺し 」 が “神と決別した” の暗喩 とも 取れそうです。
あと、「 第2章 」 の最後で “牧師” は リズ ( ジョアナ )に
“首を切られて” いて、死んでる可能性が 高そう だったので、
( ここを ツッコんでいる人 が結構いそうだな )
村に来た “牧師” は 「 悪魔?になった “牧師” 」 と 捉える事も
できそうですね。
( それだと オカルト に なってしまうが、 ホラー好きな 私には しっくり
くる )
村で起こった 妊婦の死産の原因 として、
「 お腹を 触った “牧師” のせい 」 と リズ が言ったのは、
“牧師” を 悪魔と思った からじゃないかな。
初めから 何となく わかるけど、
“牧師” が リズ( 娘・ジョアナ ) を 執拗に 捜し求めた 理由は、
シンプルに 「 愛が欲しい 」 ( 意味としては “所有 したい” )でしたね。
( 「 耐えられないのは地獄の炎? 違う、愛が無い事 」 のセリフあり )
“牧師” を倒し?、イイ感じで 終わりそうだと 思っていると、
思わぬ形で 「 報い 」 を受けるのが やるせないな…。
でも、私は ブラック・ユーモア や 犯罪・ミステリーっぽさも 感じましたけど。
( 伏線っぽい のも あったし )
話が遡る構成 だけど、章が 進むごとに “牧師” の 酷さ が増していく のが 面白いし、
ミステリーな趣も 感じたので 個人的には 良かったですね。
テーマ としては、
男たちが 「 宗教 」 を 自分たちの 都合のいいように 解釈、利用し、
女性たちを 従わせて( ないがしろに して )きた。
だから 女性は “沈黙” するなって事かな?
あと、この話は 「 宗教 」 だけ、又は 「 サイコパス男 」 だけ、で 観ては 楽しさや 魅力は 半減する 気がします。
個人的に この作品の 楽しさの肝 は、「 宗教 」 と 「 サイコパス 」、
2つが 合わさった時の 「 凶悪性 」( 恐怖 ) だと思いますね。
リズ 役の D・ファニング が 設定上 ちょいエロ でした。
もちろん 演技も 良かったですよ。
“牧師” 役の G・ピアース は 個人的には 最高でした。
聖書の自己解釈 による 「 正当性 の 顕示 」 が DV男のようで 怖いんですよね。
( 「 聖書 」 は 絶対的 だから 尚更 達が悪いのだ )
神を 信じるが故の 開き直り( 覚悟 )の 体現も 素晴らしかったな~。
妻のアナ 役、カリス・ファン・ハウテン も、 従属する女性 を 好演していました。 ( 裏・主人公 といえる…かも )
上映時間 149分 と 長いのですが、好みの作品だったので、
私は あまり 気になりませんでした。
以外にも ミステリーや ホラー を感じ ( 個人的にです )、楽しめましたね。
一応、「 リズ が 話せない理由 」 の ネタバレ を簡単に。
「 第2章 」
娼館 で、ジョアナ と仲が良かった 娼婦・エリザベス が、
客との いざこざの “罰” として “舌を切り取られ”、館の主・フランク に 殺意を 抱く。
しばらくし、エリザベス は 結婚仲介所 を介して、息子のいる
イーライ の元に 行く 計画を立てる。
しかし、娼館を 逃げ出す日の夜、“牧師” が 娼館を 訪れ、ジョアナ に暴行する。
“ナイフを 持った” エリザベス が止めに 入ったが 返り討ちに遭い
殺される。
ジョアナ は ナイフ で “牧師” の 首を切り、
エリザベス の “死体の顔 を燃やす”。
病院?で 自分の舌 を切った ジョアナ は、エリザベス( 愛称はリズ )として イーライ の元へ…。
( ここに 残っていた場合、“牧師” 殺しで ほぼ 確実に 絞首刑 になるので、生きるためには 逃げるしか 選択肢がなかった。
客を殺した 娼婦の 絞首刑 があるが、伏線の意味も あるのだろう )
結末の 「 思わぬ形でくる 報い 」 の方も。
「 第4章 」 の最後、平穏に 暮らしていた リズ( ジョアナ ) と
娘 だったが、 ( 息子は “牧師” に殺されている )
娼館があった町 から 保安官 がやって来る。
それは 館の主・フランク を殺した 犯人である エリザベス を捕まえる
ため だった。
逃げ出した日、エリザベスは ジョアナ を 助けに入る直前、
ナイフ で フランク を殺していたのだ。
「 舌が無い 」 特異な特徴を 持つ リズ ( ジョアナ )は、イカダで
連行させられるが、
途中 彼女は 自ら 川に身を投げるのだった…。
( そして 川に 銃弾が撃たれる OP に。 見ていた少女は 娘 )