ミステリー 1冊、ノンフィクション 1冊。
「 その可能性はすでに考えた 」 井上真偽
本格・ミステリー で、ミステリー界で 話題になった 作品。
閉ざされた山里で起こった 新興・宗教団体 の集団自殺。
“ただ一人” 生き残った 少女 は 祠で 目を覚ますが、そこには
彼女を 抱きかかえ 運んでくれた 少年の、“首を切断された 死体”が…。
“奇跡” を証明しようとする 探偵、上苙丞( うえおろ じょう ) は、
10年以上前に 起こった この事件の 調査依頼を 受ける。
彼は 「 全ての可能性 」 を考え、“奇跡”「 首なし聖人 」 を証明したが…。
多くの探偵は 不可解な謎 を解く存在 ですが、
この 作品では、“奇跡” を証明するため 考察する 存在です。
てっきり 事件を 多方面から考察する展開 かと思っていたら、
そこは あっさり流し、
“奇跡” を信じる探偵 VS “奇跡” を否定する者 の、
推理バトル が展開します。
面白いのは、
“奇跡否定”側 が、“「 可能性 」 さえあれば” どんな トリック( 事象 )でもいいのに 対し、
探偵側 の反証は、あくまで
「 事実や 証言に 基づかなければ ならない 」 所ですね。
そんな 不利な条件での 「 可能性 」 の論破 が気持ちイイんですね。
対戦相手の考えた トリックに 名前が 付いているのも 気分を盛り上げます。
個人的に 3戦目の トリックの “発端の考え” が白眉でした。
最後に 提示される 「 可能性 」 も ドラマッチックで、温かい余韻 を
残しています。
人物も それぞれ魅力的 ですが、
特に、探偵・上苙丞 に 1億円も 貸している、元・中国黒社会 出身
フーリン の、
上苙 には 何故か甘くなる?心情が 微笑ましくて 可笑しかったですね。
あと、中国拷問・トリビア も 勉強に なったな~。
ミステリー満足度は かなり高くて、お腹いっぱいに なりました。
「 科学捜査ケースファイル 難事件はいかにして解決されたか 」
ヴァル・マクダーミド
犯罪科学捜査の ノンフィクション。
海外ドラマ 『 CSI:科学捜査班 』 を 観てから 科学捜査に 興味を
持っているので 読んでみました。
著者は スコットランド出身の ミステリー小説家 です。
犯行現場、 火災現場、 昆虫学、 病理学、 毒物学、 指紋、
飛沫血痕 と DNA、 人類学、 復顔 、 デジタル・フォレンジック、
法心理学、 法廷、
についての 説明と、それにまつわる 実際の事件も 取り上げています。
個人的には 実際の事件が かなり 興味深くて、面白かったですね。
( 凄惨な事件が 多いですが… )
捜査側、専門家側 の 誤認や 偏見による 問題点も 挙げています。
第2章 「 火災現場 」
『 ファイア・ラバー 』( 02年 レイ・リオッタ が出演 ) として 映画化された、
84年 ~ 91年 まで続いた 連続放火事件 を取り上げていました。
犯人が 消防士 で、自身で “その放火事件” を基にした 「 小説 」 を
書き 出版社に 送っていたり、
放火件数 が 2000件を越えていたりと、なかなか 狂気な話でした。
第3章 「 昆虫学 」
死体を食べた ウジ から その死体の 「 DNA 」 が 採取できるのは
知っていたけど、
ウジの 「 脱皮した殻 」 からも 「 DNA 」( 使用薬物も )採取が
出来ることがあるんですね。
死体に 集まる 「 腐肉食ハエ 」 の
生態サイクル ( 卵 → ウジ → サナギ → 成体 まで 15日間 ) は
ほぼ決まっていて、
そこから 殺害、死体遺棄 の日時 が推測できます。
もちろん 現場環境 や 気候 などによって 「 サイクル 」 も変わってきます。
( ハエの種類によっても 微妙に違って来るようだ )
ここらへんは 川瀬七緒 の ミステリー小説、
『 法医昆虫学捜査官 』 シリーズ1作目 でも詳しく説明していました。
第5章 「 毒物学 」
19世紀は 「 ヒ素 」 による殺人が多く、
メアリー・アン・コットン の、夫(3人)、わが子(8人) など 20人以上
殺害した事件は かなり陰惨。
1924年 時計工場での 「 ラジウム塗料 」 による 女性工員の
体調悪化、死亡 の話も かなり辛い。
( 女性たちは “ラジウム・ガール” と呼ばれる )
あと、1978年に “傘の銃” で 「 リシン 」 を 撃ちこまれた、
亡命作家 ゲオルギー・マルコフ の暗殺事件や、
ハロルド・シップマン による
25年間 続いた “モルヒネ投与” 殺人( 200人以上 殺害 ) も
取り上げています。
第6章 「 指紋 」
スコットランド人の 医療宣教師:ヘンリー・フォールズ が、
“東京” で 「 指紋 」 に気づき、泥棒で 告発された男の 潔白を
証明している ようです。
面白いのが、フォールズ が 「 指紋科 」 の立ち上げを
ロンドン警視庁( スコットランドヤード )に 提案したのですが、
却下 されていた ことですね。
指紋鑑定人 が、容疑者の指紋 と、現場の指紋 の
“共通点 を見つけようとする” 「 バイアス 」 が働くことがあるのが
興味深いです。
第7章 「 飛沫血痕とDNA 」
初期の DNA鑑定 は、それなりの量が 必要でしたが、
「 ポリメラーゼ連鎖反応 ( PCR )」 で DNA を増やすことができるようになります。
その後、「 低コピー数( LCN )DNA鑑定 」 が開発されましたが、
信頼性が低く?、裁判では 認められていないようです。
第11章 「 法心理学 」
「 サイコパス好き 」 には 有名な、
神経科学者:ジェームズ・ファロン の話が載ってました。
ファロン が 自身の家族の 「 脳・スキャン画像 」 を見ていると、
その中に 「 サイコパス 」傾向 のある 「 脳 画像 」 を見つけます。
その画像の人物が、なんと ファロン自身だった・・・という話です。
“( 遺伝的 )傾向” があっても “育った環境” が重要なんですね。
( NHK の番組、『 時空を超えて 』 “悪は根絶できるか?” の回 でもやってました )
事件としては 1940年 ~ 57年 まで 続いた、
エジソン社に 恨みを持つ 爆弾魔、「 マッド・ボンバー 」 が面白かったですね。
エジソン社 が 「 破棄した 」 としていた 「 元・従業員 記録 」 を
事務員が調べ、
そこから あっさり 犯人が浮上した、という 顛末にあきれます。
あと、1992年の 女性の殺人事件。
プロファイルに 非常に近い 第一容疑者 に、女性警官を 使った
“おとり捜査” ( 男の 暴力性を煽る やり取りをした ) を行い 逮捕したが、
“冤罪” だった話も かなり酷い…。
( 後に 犯人判明、 女性警官は “心的外傷のため” 早期退職… )
第12章 「 法廷 」
弁護士の 専門家への 「 個人攻撃 」 への “恨み節” が、
ひしひしと 伝わります。
( 「 個人攻撃 」 は、海外法廷ドラマで 良く見ますね )
「 法科学 」 で判明した情報も、あくまで 1つの “情報” として
捉えるべき だと 改めてわかります。
ミステリー好き はもちろん、科学や 事件・犯罪に 興味がある人にも
オススメです。