記憶サスペンス、 人間ドラマ・ホラー、 アンチ・ミステリー の3冊。
「 記憶破断者 」 小林泰三
記憶が 数十分 しか持たない 「 前向性健忘症 」 の 田村二吉 は、
重要な事、気になる事を ノートに 書き込んでいた。
記憶が 消えた時、ノートを読み 自身の病気 を知るのだが、
そこには 「 今、殺人鬼と戦ってる 」 との言葉も書かれていた…。
小林泰三 作品は 『 アリス殺し 』 が 面白かったですね。
この作品も、ミステリー だと 思っていましたが、
エンタメ・サスペンス でした。
「 殺人鬼 なんて いないんじゃないの? 」 なんて
“ミステリー的な 勘ぐり” をしましたが、ちゃんといました。
映画でいえば
『 メメント 』(00年) + 『 超能力者 』(韓・10年)な 感じかな?
主人公 が記憶障害 なので、
同じような場面が 多いですが、思ったよりも テンポ が良かったです。
興味深かったのは、
“言葉” ではない “動作の記憶”「 手続き記憶 」( 非陳述記憶 に分類)で、 もう少しそこを 掘り下げても 良かったような…。
対する 殺人鬼 は、“記憶改ざん” の 能力 があり、
金を奪ったり、女性を抱いたり、犯罪を なすりつけたりと、やりたい放題で、
子供の時から その 能力 を使っていたから か、
“ソシオパス” の傾向が強くて、 共感性が無く、 暴力的で かなり凶悪です。
“犯行” の場面も多く、 “記憶改ざん” に 容赦がなくて、かなり
イヤな気分に なりますね。
展開は 地味め ですが、 記憶障害を 知られないよう 言動に気を付けたりと、なかなか スリリング。
後半は そんな上手くいくかな~と、思いましたが、
最終的には だいたい 納得。
( 伏線っぽいのも 一応 あったし )
謎の人物2人 は、どうやら 短編で 出てくるらしく、
ラストの オチは あまり気にしなくても良いようです。
( いろいろ 考えて、イヤ~な オチを 想像してしまった… )
「 淵の王 」 舞城王太郎
ホラー・ファンタジー・人間ドラマ?
3つの部 ( さおり、果歩、悟堂 ) で構成されていて、
それぞれの 主人公を 見守る “何者か” の視点で語られます。
ミステリー 要素は ほとんどなく、ホラー要素が強いです。
各主人公を 見守る “何者か” の正体が 一応ミステリー要素かな?
「 さおりの部 」 では、普通の青春・恋愛もの として進むけど、
後半から、「 人間ホラー 」 な展開に。
この 日常を壊す、「 理不尽な人間 」 の身勝手な言動が
かなり イヤ~な感じで 楽しいですね。
親友を助けようと “悪意” に 立ち向かう 場面は 緊張感があり、
居心地が悪いです。
さらに “黒い影” も出てきて 謎が深まりますが、
そこで あっさり終わっちゃう・・・。
「 果歩 の部 」 では、目標に向って猪突猛進な 主人公 は読んでいて面白いです。
広瀬 との会話の “温度さ” も 可笑しいけど、チョット切ないな~。
これも 途中から “怪談”っぽい 展開に。
家に無いはずの グルニエ( 屋根裏部屋 ) の “記憶” と “出現” が
不条理、幻惑的で 好きですね。
最後の部 は、悟堂 と 女性2人の “三角関係” の話から、
まさか “呪の話” になるとは…。
人を救うためとはいえ、“呪い” を継続する 悟堂 に恐怖を感じるな~。
“虫が大量発生” してるようなので、周りの家にも 迷惑掛けているんじゃないの?
自分自身が “悪いもの” を作っているような…。
さおり は他人への思いやりが強かった はずなのに…。
それで 最後に ハッピーって言われてもな~。
でも 結構 面白かったです。
「 翼ある闇 メルカトル鮎最後の事件 」 麻耶雄嵩
ミステリー作品で、麻耶雄嵩 の デビュー作です。
依頼を受けたため ヨーロッパの古城のような館、“蒼鴉城” を訪れた
探偵・木更津 と、小説家・香月。
しかし “蒼鴉城” では すでに殺人事件が 起こっており・・・。
ミステリーにおける ”探偵の 存在意義、役割”、
ミステリーの “定番、お約束” を 上手く使った作品で、
密室、 死体装飾、 双子、 血筋 など、ミステリー要素 が てんこ盛り です。
サブタイトル にある、メルカトル鮎 が登場するのが 後半に入ってからなので、
構成と 展開が なんとなく読めますが、見事に 裏切られました~。
探偵・木更津 の 自身に満ちた 探偵像は、メルカトル鮎 と 被りますが、
コッチは 衒学的 なところがあり、また別の 面倒くささが ありました。
しかも、自信家のわりに どんどん被害者が 増えていくのが ヒドくて、
1部の 最後は 笑っちゃうな~。
“ヘイスティングス を自認” ( ワトソン じゃない )している 香月 の
無力感は なかなか切ないです。
でも、これが 後から効いてきます。
メルカトル鮎 は サブタイトル に 名前があるのに まさかの扱いで、
驚愕しましたよ~。
終盤の、“名探偵がわかる” 展開は 衝撃的でしたし、
脱力しちゃう 推理 も良かったな~。
“その前” も ある意味 衝撃的でしたが・・・。
アンチ・ミステリー 作品 らしいけど、
パロディ のように 小気味良く、楽しく読みました。