スピーチに関する相談で最も多いのが、
“本も読んでみたけれど、なかなかうまくいかない”
私たちは親、兄弟、先生に囲まれながら母国語を自然に身につけてきました。オギャーと生まれた瞬間から日本語を模倣(mimic)する機会に恵まれて育ってきたわけですね。
スピーチに関してはどうでしょう? 母国語を身につけると同じように、誰かのスピーチを模倣するチャンスがあったでしょうか?
“私もあんな風にスピーチがしてみたい!”
心の底からそう思えるような体験値が実に少ない。取ってつけたような自己紹介や面白みに欠ける学校授業、このような“負の体験”を積み上げて私たちが大人になったのだとすれば、教育者の責任は重大です。スピーチ上手になるための土壌が日本には育っていない!
スピーチが上手になる秘訣、それは真似てみたい、模倣してみたと感じることができる人が周囲にいるかどうか、この一点につきると私は思っています。
生まれ持った能力など小さな要因に過ぎません。この点、オバマ大統領の出現は日本人に大きな影響を与えてくれましたし、同時に、岸田首相の不甲斐ないスピーチも日本人に大きな影響を与えているのです。
“人間が他の動物と異なる点は、人間は最も模倣的な動物であって、人間の最初の知識は模倣を通じてなされるという所にある”。(アリストテレス『詩学』)