“ここがダメ、あれがダメ”。こう言われ続けるとスピーチは成功しません。指摘されたことだけに意識が向き、自然な(spontaneous)話し方からどんどん遠ざかってしまうわけですね。
“本番では注意してくださいね”。
“はい、わかりました”。
そして見事に見事に失敗する。これではスピーチがますます苦手になってしまいます。
“正しい話し方”というものあって、そのお手本を見習って学んでいく。スピーチとはこういう性質のものではありません。話し手自身の中に、その人らしさを発揮するコア・エネルギーが存在していて、それを引き出してあげること、これが指導の要です。
コア・エネルギーとは、話し手の“持ち味”です。これは、スピーチの練習をしているときよりも、休憩しているとき、食事をしているときや世間話をしているとき、あるいはまた、電話やラインでやり取りをしているときに偶然、発見されるものです。
“どうしてもココだけは指摘したい”。
指導者であれば誰でもこういう衝動に駆られるものですが、そういう気持をグッと抑え、持ち味を引き出すタイミングを待つ。これが優れた指導者だと私は思っています。
スピーチの醍醐味、それは“持ち味”が存分に発揮されると、欠点さえも個性に見えてくるということです。
スピーチ指導には、 だから、
“ここがダメ、あれがダメ”。
という言葉は不要なのです。