フジ住宅株式会社事件の判決から | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。

2021年11月18日、大阪高等裁判所において、フジ住宅株式会社(東証一部上場企業)に対して、損害賠償等を命じました。
判決内容は、社内で従業員に対して民族差別のヘイトスピーチ・資料の配布を行い、教科書採択運動へ従業員を動員し、それらを訴えた在日3世の労働者を非難する資料を社内で配布したことに対して、損害賠償及び資料配布の差止めを命じた、というものです。

判決からすると、社内ではすさまじい嫌がらせが行われていたことが分かります。
SDGsの精神とはかけ離れており、上場企業がこんなことをして良いのだろうかと疑問に思います。

さらに驚いたのが、社内では、原告に対して、「温情を仇で返すバカ者」、「腹が立って・殴り倒してやりたい気持ちです・・・クズと関わっても仕方ありません」などと 侮辱的文言や身体に対する攻撃を示す内容の従業員の感想文が配布されていたということです。

実は、労働裁判をしていると、解雇された労働者原告の能力などをおとしめるため、同僚といわれる人達の陳述書が提出されることがあります。しかも、訴訟のテーマと関係がない人達が陳述書を書くことも多い。
会社の指示に従って、わざわざ同僚・元同僚をおとしめるような陳述書を書く。気持ちのいいものではありません。日本においては、会社に人格的に従属している社員が一定数いることに薄気味悪さを感じます。

欧米であれば、社内での評価は仕事そのものを基準に判断します。個人の信条や人格権は、仕事とは別ものとして扱われます。
ところが、日本では、仕事そのものよりも、それ以外の、会社に対する忠誠とか貢献などが評価されるところが残っており、前近代的におもえます。

グローバル化する世界において、会社への忠誠心を基準にすえる発想を転換しなければ、日本企業は立ち後れていくでしょう。
フジ住宅株式会社事件の判決は、そのような立ち後れに対して審判が下ったものといえます