過労死認定基準の改定 | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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9月15日、過労死認定基準が初めて改定されました。

それまでの過労死認定基準(2001年)は、法定外労働時間(残業時間)が、直前1か月に100時間以上、または、直前6か月平均で月80時間以上の場合には原則として、「業務起因性」があるとして過労死を労災認定するというものでした。

それ以外の事情、たとえば、不規則勤務、ストレスなどの負荷要因は総合考慮されてきましたが、明確な基準とは言えませんでした。

そのため、労災認定では、残業時間を長く認めさせるための立証活動が重要視されてきました。なお、直近の残業時間が長ければ労災給付の基礎額が増えるので、残業時間の立証はいずれにせよ重要な作業でした。

あらたな過労死認定基準で重要な点を簡単に説明します。

1 労働時間とそれ以外の負荷要因とを総合考慮することを明らかにした

2 負荷要因が大きい場合には、労働時間が短くても業務との関連性が強い場合があることを明示した

3 インターバル(勤務終了から次の勤務が始まるまでの時間)が短い場合、休日のない場合は、それらも考慮することにした

特に労災実務においては、2が重要です。
重要なポストをいきなり任された、とか、上司からハラスメント受けた、などは、業務の負荷を増やすものですが、労働時間の長さからはまったく見えてこない問題でした。そうした、個人個人の差異が大きな要因についても考慮することを明記したのは大きな前進と言えます。

ただし、もともと月100時間以上の残業とか、直近6か月で月80時間の残業、というのは、常識で考えてもかなり長時間です。
この時間数はもっと短くすべきだったのに、今回の改定ではそこまで踏み込めなかったのは問題です。


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