シフト権濫用の法理を裁判所が認める | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。

半年前に、シフト権濫用の法理が認められるべきだと書きました。

> シフト権濫用の法理

これは、コロナウイルス休業に関連して、シフト制を悪用されると休業補償(休業手当)を受けられないことの問題意識から考えたものです。
つまり、休業手当は本来出勤すべきときに出勤できなかった場合に受け取ることができるものなので、会社が、シフトを組み替えてしまえば、会社は休業手当を支払わなくて済むという問題を解決したかったからです。


ところが、最近、シルバーハート事件(東京地裁令和2年11月25日判決、労判1245-27)が、

シフト権濫用法理

を認めていたことが分かりました。当職が以前からブログなどで主張していたものです。うれしい。

この事件は、シフト日数が、
平成29年5月 13日
平成29年6月 15日
平成29年7月 15日
平成29年8月 17日のシフト予定が5日に削減
平成29年9月 1日
平成29年10月 0日
と突然減少していました。

これについて、裁判所は以下のように判断しました。

◆裁判所の判断

シフト制で勤務する労働者にとって、シフトの大幅な削減は収入の減少に直結するものであり、労働者の不利益が著しいことからすれば、合理的な理由なくシフトを大幅に削減した場合には、シフトの決定権限の濫用に当たり違法となり得ると解され、不合理に削減されたといえる勤務時間に対応する賃金について、民法536条2項に基づき、賃金を請求しうると解される。


裁判所はこのように、シフト権限の濫用の場合には賃金を支払わなければならないと判断しました。

そして、本件では、9月、10月の賃金についてシフトの削減がなければ、シフトが削減されはじめた8月の直近3か月(5~7月)の賃金の平均額を得られたはずであると、裁定したのです。


◆本判決の意義

本件はコロナ前の事件ですが、コロナによるシフト削減の場合には非常に有効な法理となります。