労働審判と裁判員裁判のちがい | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。

つい最近、裁判員裁判が1つ終わりました。

裁判員裁判は、裁判官とともに市民から選ばれた裁判員が、刑事事件の有罪無罪と刑罰を判断するという裁判です。一般的に裁判官3名、裁判員6名の合計9名(補充裁判員は別途あり)という構成です。

裁判員裁判は、この20年間の「司法制度改革」の一環として導入されてきたものです。

同じく、司法制度改革の一環として導入されたのが、労働審判制度です。

労働審判制度は、労働事件について、裁判官とともに、労使の代表からなる労働審判員が、労働事件について判断を下すというものです。裁判官1名、労働審判員2名(使用者側1名、労働者側1名)で構成されています。

最高裁判所の調査や寄稿をみていると、司法制度改革として、裁判員裁判と労働審判制度は、市民参加型の裁判として評価が高いそうです。

私は、刑事事件も労働事件もたくさんやっていますので、それぞれの相違がよく分かります。

労働審判と裁判員裁判の共通点

・ 早い
 労働審判は、ほぼ1回目の裁判で解決することが多い(和解型)。
 裁判員裁判は、始まって5日以内に終わるのがほとんどです。

 通常の裁判だと、1年以上かかることも多いので、この早さは画期的です。

・ 口頭主義
 労働審判は、最初から裁判官がどんどん質問してきますので、それに答えないといけません。
 裁判員裁判は、証拠書類より、証言が重視されます。昔の刑事裁判が調書中心主義だったのとは大違いです。


異なる点

とはいっても、労働審判と裁判員裁判は、別の制度だと感じることがあります。

・ 予断をもっているか?
  裁判員裁判は、裁判がはじまるまで証拠を見ることができません。したがって、裁判員も含めて、予断なく、法廷での証言などを一生懸命きいてくれます。
  労働審判は、事前に証拠などを提出しているので、裁判所は予断をもったうえで、審判に臨みます。そのため、書類の確認になりやすい面があります。

・ 中途半端な解決のおそれ
  裁判員裁判は必ず判決が出ます。したがって、裁判所(裁判官・裁判員)も必死で証言を聞き取り質問してきます。
  他方、労働審判は、裁判所が和解に向けた説得を積極的にやります。そのため、中途半端なところで妥協してしまうおそれが、やはり高い。とくに、解雇事件では、会社がイヤがる復職は難しく、金銭解決でまとめようとする裁判官もいます。


最後に

個人的な感想でいえば、労働審判も裁判員裁判も、よい制度だと思います。

しかし、労働審判は、先ほど述べたように、裁判所が和解を積極的に進めてくるところに特徴があります。
そして、事前の証拠の整理・提出、口頭での回答が重要となってきます。
したがって、弁護士の立場でいえば、短期決戦の裁判であると肝に銘じ、そのための準備にいそしむ必要があります。