テレワークと労働法の課題 | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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テレワークの労働法上の課題を、思いつくままピックアップしました。

1 テレワーク命令にしたがう必要があるか・法的根拠は?
  「家で働け」というのは「どこどこの部署に異動して働け」という配転命令と同じなのでしょうか?


2 テレワークに伴う費用負担
  通信費用、自宅での水光熱費などは誰が負担するのでしょうか?
  自営業者の確定申告と似たような考え方をするのでしょうか?

3 自宅を職場化することによるプライバシーの問題
  ZOOMなどで自宅が丸見えになってしまいます。
  背景処理やイヤホンなどで完全にプライバシー侵害を防止できるでしょうか?


4 プライベートと仕事の境目の基準
  かなり曖昧になります。究極的には時間管理の問題です。

5 テレワークの場合の労働時間管理・指揮命令
  実は、もっとも難しい問題です。
(1) 一般的に労働時間とは、場所的・時間的拘束があり使用者の指揮命令が及んでいるといえるかなどを基準に考えます。(残業代請求など)
  すると、テレワークは、場所的な拘束、時間的な拘束があるのか、使用者の具体的な指揮命令が本当に及んでいるのか、かなり怪しくなります。
  こういう問題について、それでも労働時間管理という考え方で労働法関係を考えていくことができるのか、これまでと同じような労働時間を中心とする労働法関係を考えるのであれば、どういう基準をたてるのか真剣に考えなければなりません。

(2) その反対に、労働時間を中心とした労働法関係を考えることが難しいと割り切ってしまった場合、賃金体系は労働時間で考えるべきか・それとも成果主義になるのか、を考えないといけません。
  さらに、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度という悪名高い残業させ放題のような制度になってしまってよいのか悩ましい問題が出てきます。
  さらに成果主義を徹底していくと、それは雇用ではなく、請負とか業務委託になるのではないか、それらとの区別はどうなるのか、これまでの雇用概念を大転換しなければなりません。
  あわせて、請負、業務委託、個人事業者のような人たちについて、労働者なみの保護をどう図っていくのか、大きな課題が立ちはだかっています。

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