三権分立とは何か | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。
 
安倍政権が、東京高等検察庁の黒川弘務検事長の定年を半年延長したことは、法律家の間に衝撃を与えています。
 
検事総長の後任に、安倍首相らと仲が良い黒川氏を当てるための横車人事とささやかれています。
 
法律上の問題を整理します。
 
1 合理的な理由がない
 
森雅子法務大臣は、重大で複雑・困難な事件の捜査や公判に対応するため不可欠な人事だったと主張します。ゴーン被告人逃亡事件に対処するためということらしい。
 
しかし、ゴーン事件は、東京地方検察庁の管轄であり、東京高検検事長の任期を延長するのは理由になりません。
 
もし黒川検事長がゴーン事件に携わっていたというのであれば、逃亡された責任をとらせるべきであり、本末転倒です。
 
つまり、定年延長の理由がありません。
だから、いつもの「お友達人事」と揶揄されるのです。
 
2 法律上の根拠がない
 
今回の定年延長について、森法相は、国家公務員法に定年延長の規定があり、「検察庁法は国家公務員法の特別法にあたり、特別法に書いていないことは一般法の国家公務員法が適用される」と述べています。
 
しかし、検察庁は特別公務員であり、国家公務員法は適用されません。
1981年の国家公務員法改正(定年制)の際に、政府は、検察官については定年制の(改正)は適用されない、と答弁していたということです。
 
つまり、定年延長は、違法行為です。
 
3 三権分立に反する
 
結局理由のない定年延長です。
 
それによってもっとも重大な被害を与えるのが、憲法の定める三権分立です。
 
三権分立は、立法(国会)・行政(内閣)・司法(裁判所)のそれぞれの権力が、相互に抑制とチェックを果たしながら国家を運営していくというシステムです。
 
1つの権力が大きくなりすぎると独裁に走り、国民を弾圧してきたという何千年もの人類史の反省にたって、形成された制度です。
 
検察は司法に属します。一般の行政職と異なり、高い独立性が求められています。だから、一般の公務員とは異なる法律で特別に定年を決めているのです。これまで、内閣が検察庁の人事に介入することはなかったと言われています。
 
安倍内閣による今回の定年延長は、自分の身内をひいきして、自分たちの都合の良い人物を検察庁のトップにしようとするもので、三権分立どころか、独裁に近づく愚行です。
 
考えてみれば、安倍内閣は2013年にも「憲法の番人」ともいわれる内閣法制局長官に、これまでの慣例を破って集団的自衛権行使を容認する人物に就任させました。
 
また2017年、当時、日弁連が推薦したのと異なる候補者(学者)を一本釣りで最高裁の裁判官に任命しています。
 
安倍首相は、以前、自分のことを「この国の最高責任者」であると答弁したことがありますが、内閣総理大臣は行政職の責任者であり、国会(立法機関)の代表者ではありません。憲法には「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」と書いてありますから、日本の最高機関は国会です。
 
安倍首相は、内閣だけでなく、国会、そして司法機関の全てを自分の統制下におこうとしているのではないか、それこそ独裁ではないか
 
法曹会では、今回の人事に深刻な衝撃があります。