「働き方改革」法律案要綱の疑問 | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。
 
安倍内閣が進める「働き方改革」は、法律案要綱が作成されました。
その内容には、あっと驚かされました。
 
今回の法律案要綱で、労働条件の改善とは関係がない、「労働生産性の向上」・「経済成長」が法律の目的の1つになっていたのです。
 
「働き方改革」は、もともと、過労死を生むような長時間労働を是正してほしい、正規社員と非正規社員の格差がひどすぎる、子育て・介護と仕事の両立を図りたい、といった要望に応えという触れ込みで始まりました。キーワードは、長時間労働の是正・同一労働同一賃金・ワークライフバランスの実現でした。
 
それが、経済成長?
 
この経緯を説明します。
厚生労働省は、現在の「雇用対策法」を「労働施策総合推進法」に改める、としています。
改正法の目的は、「国が、経済社会情勢の変化に対応して、労働に関し、その政策全般にわたり、必要な施策を総合的に講ずることにより、労働市場の機能が適切に発揮され、労働者の多様な事情に応じた雇用の安定及び職業生活の充実、労働生産性の向上等を促進して、労働者がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、これを通じて、労働者の職業の安定と経済的社会的地位の向上とを図るとともに、経済及び社会の発展並びに完全雇用の達成に資することを目的とするものとする」などです。
また、この目的を達するために、国が、しなければならない施策として「各人が生活と調査を保ちつつその意欲及び能力に応じて就業することを促進するため、労働時間の短縮その他の労働条件の改善、多様な就業形態の普及、雇用形態または就業形態の異なる労働者間の均衡のとれた待遇の確保に関する施策を充実すること」を挙げています。
 
このように、もともと労働者保護法である雇用対策法が、労働生産性の向上、経済発展をも目指す法律になるというのです。
しかも、国の施策も、同一労働同一賃金を目指すのでなく、処遇格差がのこる「多様な就業形態を普及」させることになっています。
さらに「働き方改革」の具体的な施策の中には、
・「多様で柔軟な働き方」として、残業代を支払わなくてよい制度の拡充
・多様な就業形態の労働者は、同一労働同一賃金ではなく「均衡待遇」とする
ということが盛り込まれています。
 
労働生産性=利益÷人件費、です。
そうすると、政府の目指す「労働生産性の向上」とは、労働政策としては人件費の切り下げしかありません。
正社員に残業代を払わない、同一賃金でなくてもよい非正規労働者を増やす、という施策によって人件費を切り下げることを目指すのでしょうか?
 
驚きの要綱でした。