落語に見る食の風景~おでん
寒い日、日本酒におでん・・・最高の組み合わせです
「おでん」とはもともと田楽に「お」をつけた「お田楽」が変化した女房言葉だったそうです。
田楽というと今日では「味噌田楽」でお馴染みのように、串で刺した豆腐やナスなどにタレをつけて焼いたものをいいますが、昔は焼き田楽と煮込み田楽とがあったそうで、そのうち煮込み田楽のほうだけを「おでん」と呼ぶようになったといわれています。
今ではコンビニで冬場の看板商品となっていますが、これとて具材は地方によって異なります。
ちなみにセブン・イレブンのホームページ上で確認できますが「ちくわぶ」は関東・東北限定ですし、「ぎょうざ巻き」は福岡と佐賀の一部限定となっています。
「厚揚げ」「がんもどき」「ちくわ」などは、地方によって違う種類のものが用いられています。(2012年2月現在)
ダシや調味料も地方色があり、関東と関西での色や味の濃さの違いだけではなく「静岡おでん」や名古屋を中心とした「味噌おでん」のように、調味料そのものが異なるものもあります。
九州暮らしが長かった私は、寒い夜に博多や久留米の屋台で、コップ酒をあおりながら熱々のおでんを食べていい心地になったものです。
落語の世界で「おでん」といえば、やっぱり「替り目」ですね。
酔っ払った男が自分の家の前で人力車に乗ったものの、梶棒を上げたとたんに「そこの家の戸をたたけ」と車屋に命じます。
女房が表に顔を出すと、酔っ払いの亭主が車の上にいるので呆れ顔で家に入れ、車屋には謝って寸志を渡して帰ってもらいます。
女房は早く寝かせようとしますが、亭主はもう一杯飲まなければ寝られないと言って絡みます。
なんとか女房が折れて酒が出てくると、今度は「あれがあったろう、これがあったろう」と何か肴を出すように言います。
あれもこれも女房が「食べちゃった」とつれない返事で、最後の切り札の漬物もないと言うと、亭主は「野菜を生のまま口に入れて後から糠を食って、最後に頭に塩を乗せる」と言い出す始末。
仕方なく女房は「じゃあ、おでん屋へ行って、何か買ってくるわよ」ということに。
亭主は「がん」に「やき」を買ってきてと頼みます。
女房が「あら、がんの焼いたのがあるのかしら」と言うと、亭主は「おでん屋行って、がんもどきを下さい、焼き豆腐を下さいなんて、江戸っ子が言えるかよ。がんもどきがガンで、焼き豆腐がヤキだ!」と怒鳴ります。
すると女房は「あらそうなの。半分にして言うのが通なの?じゃあアタシもついでに、ペンとジでももらってこようかしら」
亭主が「なんだ、そのペンとジってのは」と聞くと「あら、わかんないの。はんぺんとスジ・・・」
「ペンでもインクでもなんでもいいから買って来い!」
と怒鳴り散らします。
そして、いざ買いに行く段になると、女房が鏡台の前に座って化粧を直し始めたので「そんな必要はない、さっさと行かねえとたたき出すぞ」と、女房をけしかけます。
女房がいなくなると、とたんにおとなしくなって
「考えてみりゃ、あいつは世間でも器量良しだと言われてるし、あんないい女が俺の女房に来るなんて、本当にありがたいことだ。いつも怒ってばかりで、陰じゃすまねえと思っているんだが、こんなことは、本人の前じゃ絶対に言えねえ」
と独り呟いていたら、女房はまだそこにいるじゃありませんか。
「あれ、まだ行かねえのか。大変なこと聞かれちゃった・・・」
この後、女房がおでん屋に行っている間に、屋台のうどん屋を呼び入れて、うどんは頼まないで、酒の燗だけをさせて困らせるということに展開していきます。
おかみさんが帰ってきてうどん屋に燗だけさせて何も頼まなかったという話を聞いて「うどん屋が気の毒だ」と表へ出てうどん屋を呼び戻そうとします。
通りがかりの人が「おい、うどん屋、あそこの家で呼んでるぜ」
「あそこはいけません、ちょうど銚子の代り目です」
「おでん」は年中ありますが、やはり冬場に食べたくなります。
お店や屋台で食べるのも情緒があっていいものですが、あれこれ食べていると結構なお勘定になるものです。
家でも簡単に作れますので、おでんパーティーもいいものですよ。
ダシは基本的にはカツオと昆布ですが、鶏ガラなどもコクがあっていいですね。
カツオと昆布でダシを取る場合は、大きめの鍋に具材を入れても余るくらいの量の水を入れ、昆布をしばらく(できれば半日くらい)浸けておき、それに火をつけて沸騰直前に昆布を取り出します。
そこに鰹節を入れてカツオの香りが立ったら火を止めて漉します。
そこに醤油または薄口醤油、酒、みりんで味付けをして、具材を入れて煮ていきます。
定番は大根、厚揚げ、がんもどき、コンニャク、ハンペン、竹輪やゴボウ天などの練り物。
他にも茹で卵、白滝、ジャガイモ、里芋、タケノコ、椎茸、スジ、結び昆布、ロールキャベツなど、いろんな具材を楽しむことができます。
具材からのダシが相まって、煮れば煮るほど深い味わいになっていくものです。
体も温まり、お酒も進みますよね。
家でやると経済的。いろんなものが食べられます。
