落語に見る食の風景②「サンマは目黒に限る?」
サンマは秋の味覚の代表格。大きな群れを作り、餌を求めて移動する回遊魚です。
8月になると北海道から漁期が始まり、三陸沖、常磐沖と少しずつ南下して11月には銚子沖までやってきます。
今年の出端は不漁で値も高かったのですが、少しずつ安くていいものが入荷するようになってきました。
東日本大震災で宮古や気仙沼などが被災して、さんま漁が心配されましたが、元気に出漁しているニュースを見て安心しました。
サンマはEPAとDHAの脂質が豊富で、ビタミンDやビタミンB12が多くて、カルシウムやタウリン、カリウムも含まれています。
何といっても塩焼きがうまい。炭火で焼くと脂が落ちて火がつき煙もいっぱい出て、もう火事のようになります。
でも、あの真っ黒になってジュウジュウという焼きたてのサンマに、大根おろしと柑橘系の絞り汁をたらして食べる旨さは、最高ですね。
ワタの苦いところがまた旨いんですよね。
最近は新鮮なものが入手可能になったので刺身も口にしますし、蒲焼や煮物、つみれなどもいけますね。
さて、サンマの旨さを語るに、「目黒のさんま」という落語はあまりにも有名です。
目黒まで馬を走らせたお殿様が、お昼時分に近くの農家からサンマを焼くいい匂いに「この匂いは何じゃ」と家来に尋ねます。
「サンマと申す下魚にございまして、お上の口に入るようなものではございません」
「かまわん。余は空腹じゃ、なかなかよき匂いのサンマとやらを所望いたす」
と言われたもんですから、ご家来衆は大変です。
何とかその農家に頼んで焼きたてのサンマを譲ってもらい、お殿様は生まれて初めて口にしたサンマがすっかり気にいりました。
お屋敷ではサンマが出されることはないので、夢に見るほどサンマが食べたくて仕方がありません。
ある日、親戚に呼ばれ「お好みのお料理をなんなりとお申し付けくださいませ」という申し出に、すかさず「サンマ!!」と答えました。
台所方は驚いて、日本橋の魚河岸から最上級のサンマをとり寄せます。
「かように脂が多いものでお体に障っては一大事」と、蒸してすっかり脂を落とし小骨を丁寧に取って、骨抜きになったサンマを椀物にして出しました。
お殿様は久しぶりにサンマと再会できると喜んで蓋を取りますが、思い描いていたサンマではありません。
変わり果てたサンマの姿に「なに、これがサンマと申すか。まちがいではないのか?」
脂が抜けてスカスカになったサンマがおいしいはずがありません。
「このサンマ、いずれより取りよせたのじゃ?」
「日本橋魚河岸にござります」
「あっ、それはいかん。サンマは目黒にかぎる」・・・というお話。
今でこそ目黒といえば東京都心ですが、当時は野駆けや鷹狩りに行くような山里です。
魚河岸よりも山の中のサンマに限るというのが、話の「落ち」です。
毎年、宮古から提供されるサンマが震災の影響で無理なのではないかと心配されましたが、今年も7000匹が届けられたそうです。大根は栃木、スダチは徳島、備長炭は和歌山から、今年もやってきました。
午前10時開会というので、目黒駅に9時半に着きました。
会場は駅前商店街なのですが、もうすでに延々と列ができていて、最後尾にたどりつくのに20分。
9時54分から並んで、サンマにありつけたのはなんと12時10分でした。
まだ9月なので脂の乗りはそこそこですが、塩加減も焼き加減もほどよく、2時間以上行列した甲斐のあるおいしさでした。缶ビールがぐいぐい入って行きました。
今回は被災地宮古の支援という目的もあり、募金と同時に支援グッヅの携帯ストラップや大分のカボスなども入手しました。
ちなみに目黒駅は品川区にあります。
この「目黒さんま祭り」は駅の東口側(目黒通り)で開催されますが、主催団体は品川区にある目黒駅前商店街連合会。
2週間後に「目黒まつり」が開催され、そのときにも焼きサンマがふるまわれますが、それは西口を出て目黒川を越えた目黒区で開催されます。
なにかややこしい話です。
