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子供の頃から親しんできた、蒲焼屋さんが暖簾を降ろした。
『ひとつの時代が終わった』
そう思えた。
私の知る限り3度店の場所を変えている。
私は直接蒲焼屋のおやじさんと関わりは無いが、おやじさんと親しい人から話を聞くことがある。
最後の店は、この町で一番交通量が多い処であるらしい。
『商い』
という展望をシッカリと持っていたということだ。
毎年7~8月にかけて、丑の日・お祭り、お盆と続く。
私が見せに向かう頃には、もう白い煙が昇っている。
順番待ちの人が何人か店の前にいる。
『売り切れました』
の札が掛かる日々となる。
そういう光景を見ていると、やはり羨ましいなと思う。
しかし、この商品は
『季節物』
である。
季節外れはアルバイトもしていたようである。
蒲焼だけでやっていけるようになったのは、ごく最近らしい。
金沢で、蒲焼と言えばドジョウである。
勿論うなぎもあるが、そのドジョウが居なくなったことが閉店の一番の理由らしい。
子供の頃、田んぼや、その脇の用水でよくメダカやフナを獲っていたが、網でグイグイ隅の方や水草の根の辺りを動かすと、たまにドジョウが獲れた。
丸い口にヒゲ。
とても愛嬌がある。
そんなドジョウは祖父や父が夏から秋に掛けて酒の肴として、よく食卓にのぼった。
甘辛いタレの味。
焦げのある固い身をかみしめると味が出る。
何と言っても香りがドジョウの一番の魅力じゃないかと私は思う。
そんな頃の家庭の風景や夏の青空を想い出す。
こんなことを想い出すのは私だけではあるまい。
そんな記憶に残る店であり味であった。
ただ凄いなと思う。
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