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子供の頃から親しんできた、蒲焼屋さんが暖簾を降ろした。

『ひとつの時代が終わった』

そう思えた。


私の知る限り3度店の場所を変えている。

私は直接蒲焼屋のおやじさんと関わりは無いが、おやじさんと親しい人から話を聞くことがある。

最後の店は、この町で一番交通量が多い処であるらしい。

『商い』

という展望をシッカリと持っていたということだ。


毎年7~8月にかけて、丑の日・お祭り、お盆と続く。

私が見せに向かう頃には、もう白い煙が昇っている。

順番待ちの人が何人か店の前にいる。

『売り切れました』

の札が掛かる日々となる。

そういう光景を見ていると、やはり羨ましいなと思う。

しかし、この商品は

『季節物』

である。

季節外れはアルバイトもしていたようである。

蒲焼だけでやっていけるようになったのは、ごく最近らしい。


金沢で、蒲焼と言えばドジョウである。

勿論うなぎもあるが、そのドジョウが居なくなったことが閉店の一番の理由らしい。


子供の頃、田んぼや、その脇の用水でよくメダカやフナを獲っていたが、網でグイグイ隅の方や水草の根の辺りを動かすと、たまにドジョウが獲れた。

丸い口にヒゲ。

とても愛嬌がある。

そんなドジョウは祖父や父が夏から秋に掛けて酒の肴として、よく食卓にのぼった。

甘辛いタレの味。

焦げのある固い身をかみしめると味が出る。

何と言っても香りがドジョウの一番の魅力じゃないかと私は思う。


そんな頃の家庭の風景や夏の青空を想い出す。

こんなことを想い出すのは私だけではあるまい。

そんな記憶に残る店であり味であった。


ただ凄いなと思う。



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無農薬で育てた小麦を製粉している。

収穫量は600g。

ささやかだが、とても貴いものだ。

理想に向けての一歩になるかもしれない。

あるいはゴールになってしまうかもしれない。


酵母に魅せられたパン屋-小麦製粉1


自分で育てた小麦を発酵させて酵母を取る。

自分で育てた小麦をひいてパンを焼く。

もしくは自分で育てた作物を発酵させて自分で育てた小麦をひいてパンを焼く。


貴い600gの小麦。

これから、どう進むかは自分でも解らないのだが方向性のある一歩になる。


今回は、まず全粒粉として使う。

製粉のやり方は粉砕法だ。笑

めん棒の先で押し潰す。

一粒ずつである。

暇なパン屋だからこそ出来る技である。


無作為にバンバンやると小麦がピンポン玉のように飛んでゆく。


酵母に魅せられたパン屋-小麦製粉2


原始的作業は小麦に熱を加えないので味や風味が損なわれない。

細挽きにはならないが、やや荒挽きの全粒粉になる。

石臼があればいいなぁと思っている。


少し前散歩中に隣町の大野の路地で石臼を発見した。

大野は昔の街並みが残り、車1台がやっとといった路地が残っている。

そんな路地と少し広い路地が交差する角家の隅に石臼は積み重ねられて置かれていた。

黄色いペンキが一部塗られている。

『路が狭いよ、気を付けて』 的な標となっている。


何度も歩いている所なのだが、今までは気付かなかった。

目が刻られてあった穀物を入れる穴と軸の穴なのだろうか、穴が2つあった。


そのお宅に入って譲ってもらえないだろうかとお願いしようかと思ったが、思い留まった。


石臼の事を少し調べてみた。

私がやっている製粉は5万年前の手法である。

洞穴に住み、食べ物は豊富にあり、洞穴絵画を描いていた。

その時の絵の具は意思を叩きつけこすり合わせて作った。

まさにそれと同じだ。

約1万年程前豊富にあった食料を食べつくし深刻な食料不足に陥った。

それを克服したのは、まさに製粉化である。

粉にすれば食べれる素材となるという発見が文明を開花させた。

この次に如何に粉にするかという問題を克服することで工業文明を発達させることになる。


さて日本ではどうだったか。

主食は米なので粉にする必要が無い上に自然に恵まれ山・川・海の幸があった。

製粉は杵と臼で行われ、余り必要性が無かったようだ。

石臼が普及したのは鉄砲に使用する火薬の製造によるものであり、江戸時代初期のことである。

時代が安定してくると、石臼は水呑み百姓達に利用される。

年貢の取立てで米は食べられず、くず米、そば、稗などの雑穀しかない。

これを粉にすることによって命を繋いだ。

飢饉の言い伝えに

『粉にすれば何でも食べられる』

と言うのがあり粉にすれば保存も効く。

徳川幕藩体制を支える重要な役割を石臼は果たしたと書かれている。


話を戻して・・・・

少なくとも150g製粉しなければならない。

1日少しずつだが小麦を挽く。

ふすま、胚芽等の茶色が目立つ。

土色、ブラウン色とも言うが、力強さと優しさの色である。


残りは店周りの農園と湯涌の畑に播く。

小4の娘は来年の夏休みの自由研究にしようとしているので今から成長を記録しようとしている。

小6の息子は湯涌の畑の麦播きを手伝ってくれると言ってくれた。

何かが子供達にも伝わっているのかも知れない。



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柿が黒ずんできてひと回り小さくなった。

冷えた空気や寒風が吹くと一層変化する。

寒さが美味しさを引き出す。

白菜やネギなどもそうだ。


数年前沢山干し柿を作った時、一部を小屋の中で干したのだが、よくカビが生えた。

カビを取るのは大変だった。

小屋は隙間風は入ってくるのだが、トタンで被われているため陽射しも直接当たらない。

この条件がよくなかったと自分では思っている。


店の軒下で干した物は全くカビが生えなかった。

『北風と太陽』

ではないが、おだやかすぎていてはいけないなぁと思うのである。


温度が上がったり下がったり、晴れたり曇ったり、風が吹いたり吹かなかったり。

自然のひとつひとつの力は生命力をもたらしてくれる。

色々ある程豊かな複雑味が出るようだ。


酵母に魅せられたパン屋-干し柿


口の中に入れると、とても渋い柿が白い粉(オリゴ糖)を見事に身にまとい強烈な甘味を持つ干し柿へと変身する。

自然の加乗減除は何とも美味しい。



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