夜の虎光という光が消え失せ、闇の底にただ悲しみの灯ばかりが点り、世界中の誰からも自分は祝福されていないのではないか…そんな感覚に、胸が詰まりそうなぐらいに苦しい夜。そんな夜には、羊の代りに‘虎’を数えてみる。爛々と輝く瞳でしっかりと前を見据え、威厳に満ちた足取りで颯爽と草原を進む立派な虎を、一頭一頭数えてみる。やがて虎は闇に溶け、浅いまどろみのうちに、夜の世界へと染みこんでゆくだろう。…そして虎は私の胸の奥で、唸り声をあげ牙を剥く瞬間を、ただじっと待つのである。