夜の虎 | 桂米紫のブログ

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米朝一門の落語家、四代目桂米紫(かつらべいし)の、独り言であります。

光という光が消え失せ、闇の底にただ悲しみの灯ばかりが点り、世界中の誰からも自分は祝福されていないのではないか…そんな感覚に、胸が詰まりそうなぐらいに苦しい夜。

そんな夜には、羊の代りに‘虎’を数えてみる。

爛々と輝く瞳でしっかりと前を見据え、威厳に満ちた足取りで颯爽と草原を進む立派な虎を、一頭一頭数えてみる。

やがて虎は闇に溶け、浅いまどろみのうちに、夜の世界へと染みこんでゆくだろう。

…そして虎は私の胸の奥で、唸り声をあげ牙を剥く瞬間を、ただじっと待つのである。


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