第六夜「修業中の悪夢」
修業中の事。
落語家の修業というは、なかなか厳しいものだ。
入門を許されてから三年間は、基本的に休みなし。
周りのあらゆる人達から叱られ、注意を受け…師匠のお宅でも落語会の会場でも、気の休まる時間がない。
睡眠時間も極端に減り、肉体的にも精神的にも、極限状態に追い込まれてくる。
そんな修業期間中に見た夢…。
私は師匠のお供を終えて、深夜クタクタの身体で帰宅する。
「やっと寝られる」と思うと、心底ホッとする。
修業中は、寝ている間だけが唯一気を抜ける時間である。
自分の部屋に敷かれた万年布団が、まるで天国みたいに思えてくる。
私は疲れた身体をいたわるように、ゆっくりと布団に潜り込む。
そして睡眠の至福に包まれるべく、静かに目を閉じた…。
…と、途端に目が覚めて、私はそれが夢だったと気づいた。
現実には、もう起きて師匠のお家に行く準備をしなければならない時間になっていた。
…全く寝た気がしなかった。
これが、私がこれまでに見た夢の中でも、最悪の悪夢である。