(臨時営業)韓国版Costco、あるいはイーテウォンのモスク
2013年8月31日(土) いま通っている韓国語講習でたまたま何人かの知人が出来、なかでも中東から韓国に移り住んで個人で事業をしている中年男性とは住んでいる場所も年代も比較的近いこともあって、週末などにたまに会い韓国語での会話の練習のためお互い拙い言葉で会話を交わしたりしている。 既に韓国に6年以上住んでいるこの人は、冗談で「言葉を除けば韓国人みたいなものだ」というくらい韓国での生活にすっかり馴染み、忙しい仕事の合間に夫人とともに韓国各地に旅行や散策に出かけたりしている行動派でもある。 ソウルに来て1年3ヶ月以上が過ぎた一方の私はと言えば、最近でこそ韓国語講習のために外出する機会は増えたものの、それを除けば基本的に自宅に引きこもって、家を出るのは食料品の買出しと犬の散歩くらいのものである(以前このブログでも採りあげた「韓国映像資料院」での大映特集を見に出かけたのは、従って例外中の例外と言っていい)。 そんな私のことを心配してか、この友人はまず私が関心を示した米系の会員制スーパーマーケット「Costco」に連れて行ってくれた。会員制と言う通り年会費を払って会員になった人しか購入できない(入店も出来ないのかも知れないが、私が行った時は会員証のチェックなどは特に行われていなかった)Costcoは、むかしアメリカに住んでいた時にもその存在すら知らず、各地に出店しているらしい英国でも日本でもこれまで一度も行ったことがなかった。 ソウルではたまたま自宅から徒歩20分ほどで行けるある大型スーパーマーケットの目の前にあることから気になってはいたのだが、年会費35,000ウォン(約3,150円)払ってまで行く価値があるかどうか疑問のため、見てみぬ振りをし続けてきたのだった。 会員であるこの年上の友人のおかげでようやく念願のCostcoには行けたものの、一般のスーパーマーケットではなかなか手に入らない海外の食料品などが安く手に入るのだと思っていたのに対して、実際は期待ほど「安く」はなく、韓国でも手に入るものであれば(韓国のインスタントラーメンや牛乳、冷凍食品なども普通に売っていた)、韓国のスーパーマーケットで買っても同程度の価格で買えるのではないかというものばかりだった(もっともアメリカや欧州など海外製の生活用品や電気製品、衣料品やアウトドア商品などをはじめ、お菓子や食べ物が確かに大量に売られてはいた)。 一方、韓国では簡単に手に入らないもので私の買いたかったものと言えば、日本のようにプリプリと弾けるようなものまでは期待してはいなかったものの、少くともどれも魚肉ソーセージのような噛み応えの韓国風「ではない」ソーセージや、欧米では入手するのが容易だった穀物状のパスタ「クスクス」くらいのものだった。生憎クスクスはCostcoでは売られていなかったが、ドイツだか東欧だかの白ソーセージを買うことが出来、久々にソーセージらしいソーセージを食べることが出来た(ちょうど英国の元同僚に勧められて浦沢直樹の漫画「モンスター」を読んだばかりだったので、そのなかに出てくる白ソーセージのことが忘れられなかったのである)。 しかし1キロで10,000ウォン強(約1,000円)のそのソーセージは、家族3人で食べても量が多く結局ただ茹でただけのものを2日続けて食べることになったため、正直のところ当分はソーセージを食べなくてもいいと思うくらい存分に堪能したと言っていい。食感も日本のウィンナー・ソーセージなどとは比較になりはしないものの適度な弾力があり、香辛料やレモンなどの風味といい塩加減のちょうどいい味といい、韓国に来て1年数ヶ月たって漸くまともなソーセージにありつけた。 それでは、結果的に果してCostcoの会員になるだけの価値が(私にとって)あるかと言えば、1,000円のソーセージをたまに食べるだけのために3,000円超の会費を払うつもりはないし、他にも特に買いたいと思うようなものがほとんどなかったことから、答えはなんの躊躇もなく「No」である(唯一少しだけ惹かれたものに日本のゴマ風味ドレッシングがあったのだが、業務用のものなのかやたらとサイズが大きい上、賞味期限切れ直前でとても買う気にはなれなかった)。 もともと生活用品などは韓国のスーパーマーケットで普通に手に入るし、上記の数少い商品を別にすればアメリカや欧州の製品、特に食べ物やお菓子などにはわざわざ食べたいと思うようなものはほとんどない(英国でよく食べたドライド・トマトやバジルのパスタ・ソースやグニャグニャの英国風ソーセージ、サンドウィッチなどに塗って食べる野菜を煮込んで作ったBranston社のPickle=チャツネなどはもし売っていればちょっと食べてみたい気もするものの、ないならないで別段困りもしない)。 そしてなによりどの商品もサイズや量が巨大で家族3人ではとても消費しきれず(だから隣近所や知人と共同で買って分け合う人が多いらしい)、結果的に無駄なものを高いお金を出して買う結果になるだけのような気がして、私のようなケチケチ人間には、こうしたアメリカ的な大型スーパーマーケット(日本のコストコのウェブサイトの表現によれば「会員制倉庫型店」)は向いていないと言うしかない。やはり私にはすぐ隣にある韓国系のスーパーマーケットで買い物をする方が、たとえ魚肉ソーセージのようなものしかなくとも精神的にも経済的にも気楽でいい。 アメリカ系のスーパーマーケットということで、顧客層には欧米人が多いのかとも思っていたのだが、実際に入ってみると客のほとんど(9割超)は韓国人か私のような東洋人で、端から期待などしてはいなかったものの異国的雰囲気を感じることはなかった(生憎携帯カメラを持って行くのを忘れたため写真はない)。 続いて件の友人が連れて行ってくれたのは、近くに米軍基地があることから米国人を中心とする欧米人や外国人の多いイーテウォン(이태원=梨泰院)だった。 韓国語講習でたまたまこの街のことが話題になった際、私が一度も行ったことがないと言ったことがきっかけで、上記の友人は、事業を始めるために韓国に来た当初、単身赴任だったこともあって毎週のようにイーテウォンを訪れ、中東の食事をしたり食材を手に入れたりすることでストレス解消をしていたとのことで、この街は彼にとって自宅の庭のようなものだと言って良いほどのようだった。 実際には、私は韓国を初めて訪れた25年ほど前にイーテウォンに行ったことはあるのだが、外国人の多い大通りをあてどなくぶらつき、決して安くないお金を払って米軍払い下げの(?)革ジャンパーを買っただけで、特に印象に残るような記憶や思い出もなく、これまで再訪したいという気が起きなかったのだった。 あえて関心があることと言えば、上のCostcoで売られていなかったクスクスが此処の外国食材品店でなら買えるかも知れないということと、韓国で最初に建てられたというイスラム教寺院(モスク)を訪れてみたいということくらいだった。 イーテウォンに行くことを約してすぐ、新たに通い始めた別の韓国語講習で私は南アジア出身でイーテウォンで外国食材品点を経営しているという人と、たまたま知り合いになった。 私は以前このブログで触れたように韓国文化理解のクラスを早々に脱落したためそのクラスに途中編入することになったのだが、全部で10人弱しかいない生徒たちは既に英語チームと中国語チームの2大勢力に分れて談笑していて、それらの集団からは距離を置いて一人静かに勉強している南アジア人と私だけが休憩時間中もポツンと席に腰をおろして教科書を眺めたりしていた。 ある日講習が終って帰ろうとするとこの男性もちょうど校舎を出て行こうとするところだったので、早足で追いついて話しかけてみると、上記の通りイーテウォンで食材品店を営んでいるという話だった。来週友人と一緒にイーテウォンに行く旨を伝えると、サービスするから是非来てくれと言われ、笑顔で肩を叩かれた。 いつも通り前置きがすっかり長くなってしまったのでイーテウォンそのものについては簡単に書くことにするが、上記の革ジャンパーなどを売る衣料店が何軒か立ち並んでいるのを眼にしたときを除けば、25年近く前の記憶はほとんど甦って来ず初めて訪れたのと同然だった。ただ、かつて抱いた米軍の街という雰囲気は稀薄で、今回訪れた店やモスクのせいかも知れないが、むしろイスラム教徒を中心とする街に変貌しつつある(あるいは既に変貌した)のかも知れない。もっとも中東の友人の話では金曜の夜になると街の様子は一変し、一夜のパートナーを求める欧米人やその相手をする韓国の女性たち(プロもアマチュア?も含めて)で溢れ返るということだったので、私が目にしたのはイーテウォンという街のごくごく限られた一面に過ぎぬのかも知れない。 モスクはかつて訪れたパリやロンドンのものよりは規模が小さいものの、遠い異国に暮すムスリムたちを抱擁するかのように、高台の上からソウルの街を見下ろしているかのようだった。男女別々の祈祷場所が設けられた寺院の横には、祈祷前に信徒たちが体を清めるための施設も併設され、更に同じ敷地内にはイスラム子弟のための学校も設けられていた。パリやロンドンと違うのは、この寺院にはレストランや食堂がなくイスラムの食事をするには寺院を訪れるために上がってきた急な坂道などにある飲食店を利用しないといけないことで、モスクを訪れたムスリムたちに囲まれながら庶民的な食事を楽しんでみたい私としては残念である(もっともパリのモスケにあるレストランはお高めで、結局私は一度も利用したことがない)。 ともあれ、韓国の日常生活にそろそろ飽きの来はじめている私にとっては、久々に異国(韓国以外)の雰囲気を味わえる良い機会ではあったが、此処もまた改めて訪れてみたい場所かどうかと問うならば、さほど食指が動かないというのが率直なところである。 最後の写真は上記の食材品店でようやく買うことの出来たクスクスと、クスクスにかけて食べるスープに使うレンズ豆やヒヨコ豆(いずれも乾燥したもの)。再三固辞したものの、結局クスクスは件の西アジア人がサービスしてくれ、他にもジュースなどをご馳走になった。持つべきものは友である。 イーテウォンにもカメラを持っていかなかったため、写真はいずれも中東出身の友人が撮影してくれたものである。