(臨時営業)加藤登紀子&中島みゆき「この空を飛べたら」、あるいはビリー・アイリッシュの新譜
2024年7月3日(火) ふと気がつけば今年も既に半分が過ぎ去ってしまった。 前半は決して安穏な日々とは言えなかったが(当ブログでも触れた某英国銀行との不毛な攻防のせいで悪化した胃の調子も未だ良くなっていない)、果たして後半はどうなることだろうか。 今日は5年前にこの世を去った愛犬の月命日。 何度も書いて来たように、私はもう2度と犬猫などのペットを飼うつもりはないのだが、それでも日々の散策をはじめ家から外に出るとひたすら犬猫の姿を目で追っているし、自宅の窓からぼんやり外を眺める時などもほとんど動物にしか視線や関心が向かない。 とりわけ飼い主に連れられた犬たちが嬉しそうに通りを闊歩している様を目にしたりすると、ついついこちらも嬉しくなって思わず笑顔を浮かべてしまう。 もっとも根っからの人間嫌いなので、どんなに可愛いワンコを連れていたとしても飼い主の方に声をかけることはなく、表面上は犬になど全く興味がないといった顔つきでそっぽを向きながら犬の方をチラチラ伺うだけである。 そして飼い主があらぬ方を見ている隙に乗じて、こっそり犬にちいさく手を振ってみせたり目で合図を送ったりするのだが、もしそんな姿を誰かがどこかから覗き見ていたら、さぞ奇妙でおかしなオッサンに映っているに違いない。 ともあれ、亡き愛犬が今もどこかで穏やかな眠りをむさぼっていることを願いつつ(RIP)、同時にこの世に存在するあらゆる動物たちが少しでも健康で平和な日々を過ごしていることを心から願わずにはいられない(もっともそのうち記事にするかも知れないが、多くの動物にとって自然界は平和でも安全でもない危険極まりない緊張の場であって、日々死と隣り合わせの過酷な状況なのだが)。以下の動画は自動車の音がうるさいので要注意 相変わらずブログの記事を書く気力がないので、今回もいつも以上にどうでも良い話題を。 まずは先日たまたまYouTubeで目にした以下の音楽動画について。 動画からキャプチャーした写真を何枚か上に掲げてみたが、これは加藤登紀子と中島みゆきが「この空を飛べたら」(1978年)という曲をデュエットで歌っているもので、偶然ふたりの演奏と歌を眺め始めた途端、思わず鳥肌が立って一気に演奏に惹き込まれ、それから何度も繰り返し見返さずにはいられなかった(いつ削除されてしまうか分からないため、ほぼ同じ内容だが以下に2つ貼付しておく)。 この空を飛べたら(1978年)加藤登紀子この空を飛べたら(1978年)加藤登紀子www.youtube.comこの空を飛べたら 中島みゆき 加藤登紀子www.youtube.com 以下は加藤登紀子のライヴ演奏。Konosorawo Tobetara (Live)Provided to YouTube by Universal Music GroupKonosorawo Tobetara (Live) · Tokiko Kato · Kiyoshi HasegawaTokiko Kato Kiyoshi Hasegawa Live℗ 1978 USM JAPAN, a d...www.youtube.com この曲は当時まだ20代半ばだった中島みゆきが作詞・作曲して加藤登紀子に提供したものだが(テレビで目にした中島の才能に注目した加藤が曲を書いて欲しいと直接依頼して生まれたものだそうである)、演奏が始まるや否や、聴く者の魂の奥底までじわじわと深く沁み入って来るようなこうした曲に接すると、テレビやインターネットなどから日々流れて来る昨今の音楽(と同じ名称で呼ぶのが適当なのかどうかすら分からない)などとは全く次元の違う別物としか思えず、やはり私にとって「音楽」(及び美術や文学、映画等の文化活動全般)は確実に前世紀の後半で終わってしまったことを痛感せずにいられない。 などと、ひとりよがりで傲慢な決め付けをしたすぐ後で恐縮だが、以前このブログでも採り上げたことのある米国の歌手ビリー・アイリッシュが先般、約3年ぶりにアルバムを発表したというので聴いてみることにした(過去記事「若き異才ビリー・アイリッシュ」→https://ameblo.jp/behaveyourself/entry-12594305998.html)。 そもそも私は洋の東西を問わず、最近の(より正確にはここ四半世紀ほどに登場した)大衆音楽というものを(上記の通りテレビやインターネットから勝手に流れて来るものを除いて)全くと言って良いほど聴くことがない(しかも聴こうという気にならないだけでなく、むしろ耳にするのも不快なほどである)。 しかし今から4年半ほど前、上の記事にもあるようにクラシック音楽から最近の大衆音楽まで幅広く親しんでいる友人が、「本当の逸材かも知れない」と言って紹介してくれ、また某Amazonのレビュアーが「この人を評価するかどうかで新世代と旧世代の分水嶺になりそう」だと書いていたこともあって、ビリー・アイリッシュというこの若き歌手(当時はわずか18歳ほどで、現時点でも未だ22歳でしかない)の曲を聴いてみることにしたのだった。 そして結果的に私はこの人(及び共同で曲作りをしている兄フィニアス・オコネル)の才能に多少なりとも感服し、日常的に聴き返すことまではないものの、新曲が出るたびにとにかく聴いてみようと思うほぼ唯一の(若手)歌手となった次第である。 そこで今回も5月半ばに件の新アルバム「Hit Me Hard and Soft」が発表されると、すぐにYouTube上で公開された音源(下記参照)に耳を傾けた上、全曲をダウンロードしてスマートフォンに入れ、近所の川べりを散歩する際にも何度か繰り返し聴いてみた(同じ内容だが、以下に何個かPlaylistを貼付しておく)。Billie Eilish - “HIT ME HARD AND SOFT” (Full Album)“Hit Me Hard and Soft” is the third studio album by American singer and songwriter Billie Eilish, released on May 17, 2024. The album serves as a follow-up t...www.youtube.comBillie Eilish - HIT ME HARD AND SOFT (2024) (Full Album Topic)Share your videos with friends, family, and the worldwww.youtube.comHIT ME SOFT AND HARDShare your videos with friends, family, and the worldwww.youtube.com 私が音楽や映画関連の記事をよく参照する英紙ガーディアンを始め、欧米メディアでもこのアルバムは概ね好評のようで、音楽誌などによる今年上半期の中間総括でも高い評価を得ているようである(以下はガーディアン及び米誌ビルボードによるレビューなど)。Billie Eilish: Hit Me Hard and Soft review – still the great outlier of American popOn this deeply involving third album, Eilish once again breaks the rules for arena-filling artists: it’s subtle and understated, yet jars the listener with eerie show tunes and exp…www.theguardian.comBillie Eilish’s Audacious ‘Hit Me Hard and Soft’ Completes Sublime Coming-of-Age Trilogy: Critic’s TakeBillie Eilish's third studio album 'Hit Me Hard and Soft' is sharp, sensual and revelatory. Read Billboard's album review.www.billboard.comBillie Eilish’s ‘Hit Me Hard and Soft’: All 10 Songs RankedBillie Eilish's new album 'Hit Me Hard and Soft' has arrived. Here's all 10 songs ranked from worst to best.www.billboard.com しかしそうして発表直後こそ何度か繰り返し聴きはしたものの、その後はまたクラシック音楽やジャズ、ザ・ビートルズを始めとする1960~70年代のロックやポップスへと戻ってしまったため、率直なところこのアルバムの印象は既にかなり薄れてしまっている。 従ってかなりうろ覚えではあるものの、全般的に暗く内省的な印象を受けた過去作品と比べ、よりポップで明るい曲調になったというのが私のざっくりした感想で、クオリティは相変わらず高いと言えるものの、やはり日常的に愛聴し続けることはないだろうというのが正直なところである(それでも私のような偏屈で古臭いオッサンに何度もじっくり聴いてみようと思わせるだけで、あえて傲慢な言い方をするなら他の「有象無象」とは確実に一線を画しているとは言えるだろう)。 むしろ今回私は、2023年公開の映画「バービー」(未見)のために彼女と兄フィニアス・オコネルが提供した「What Was I Made For?」という曲をこれまでろくに聴いて来なかったことに気づき、遅ればせながらYouTubeで視聴してみたのだが、2021年公開の「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」に続いて、この兄妹がふたたび極めてキャッチーで鑑賞後に深い印象をもたらす優れた主題歌をものしたことを知ったのだった。Billie Eilish - What Was I Made For? (Official Music Video)Listen to “What Was I Made For?”, out now: https://BillieEilish.lnk.to/WhatWasIM...Directed by Billie EilishFollow Billie Eilish:Facebook: https://BillieEili...www.youtube.comBillie Eilish, FINNEAS - What Was I Made For? (Live From The Oscars 2024)Listen to “What Was I Made For? (From The Motion Picture "Barbie")”: https://BillieEilish.lnk.to/WhatWasIMadeForWatch the Official Music Video: https://Billi...www.youtube.comWhat Was I Made For? (From The Motion Picture "Barbie") [2024 GRAMMY Performance]Listen to “What Was I Made For? (From The Motion Picture "Barbie")”: https://BillieEilish.lnk.to/WhatWasIMadeForWatch the Official Music Video: https://Billi...www.youtube.com 結果的にこの「What Was I Made For?」は、「NoTime to Die」に続いてグラミー賞やゴールデン・グローブ賞、アカデミー賞などの主要(映画)音楽賞を制覇することになったのだが、その一方で英国でこそシングル・チャート1位を獲得したものの、米国のビルボード・チャートなどではそこそこの順位を記録するに留まったようである。 ヒット曲やベストセラー本など、広く大衆の関心を惹くものが必ずしも質的に優れたものでない(すなわち良質のものが広く大衆の支持を得るとは限らないという)数多くの例の一つと言えるだろうが、良い年をしたオッサンやオバサンたちが自分たちの子や孫のような若いアイドル・グループなどに入れ上げている日米韓などの昨今の状況などを見るにつけ、小学生の時ですらキャンディーズやピンク・レディーといったアイドル歌手を応援している周囲の友人たち(当然彼らも小学生だった)などを軽薄だの幼稚だのと小馬鹿にしていた私のような根っからのひねくれ者としては、今の世はひどく幼稚で理解不能な狂騒の極みと言うしかない。 いくら平均寿命が伸びたからと言って、とうに40や50の坂を越えたような(あるいはさらに年長ですらある)醜いジジババたちが自ら好んで小中学生レヴェルにまで堕落するのは(どうせ遠からずボケて幼児以下に退行する定めだとしても)さすがに◯◯◯というものだろう。まさに世も末である。(もっともかく言う私にしても、還暦近い薄汚いオッサンだと言うのに、飼っていた犬が死んだくらいで、5年たった今でも毎月のようにブログでしつこく言及し続けているくらいなのだから、所詮「目糞鼻糞を笑う」でしかないのだが・・・・・・。嗚呼)Billie Eilish - No Time To Die (Official Music Video)Listen to “No Time To Die”, the theme song for the 25th James Bond film, out now: http://smarturl.it/NoTimeToDieShop the “No Time To Die” 7” Vinyl: https://s...www.youtube.comBillie Eilish, FINNEAS - No Time To Die (Live From The Oscars 2022)Listen to “No Time To Die”, the Academy Award-winning theme song for the 25th James Bond film: http://smarturl.it/NoTimeToDieFollow Billie Eilish: Facebook: ...www.youtube.com 上記「Hit Me Hard and Soft」にしても、英国を始めとする主要国でこそチャート1位を獲得したものの、やはり米国ビルボード・チャートでは(私はこれまで全く聴いたことのない)テイラー・スウィフトという人の後塵を拝して2位止まりに終わったようである(ちなみに日本では10位圏内にも入らなかった由)。 そもそも最近の音楽チャートなどといったものは、旧時代のオッサンにとっては何の意味もなさない歌手名や曲名の無意味な羅列に過ぎないのだが、私のような人間でも一応その名前を知っている上記「ビルボード」にしても、音楽ジャンルの細分化やリスナーの嗜好の拡散、デジタル配信サービスの台頭などによって売上構造や音楽鑑賞の手段が大きく変化し、前世紀後半のある時点までかろうじて存続していた、老若男女の誰しもが知っている「ヒット曲」といったものがほぼ絶滅したこともあって、一部の熱狂的なファンの動向に大きく左右される虚しい競争の道具に成り果ててしまったのかも知れない。 兎にも角にも、これまで私のような古臭いオッサンのすっかり干からびた耳にも秀でた才能を示し続けて来たビリー・アイリッシュ(及び兄のフィニアス・オコネル)だが、今回の「Hit Me Hard and Soft」は上述のようにより大衆化してある意味で聴きやすくなった分、従来のように悪趣味すれすれの突出した個性や独自の音楽性は減退してしまったとも言え、果たして今後音楽的にさらなる成長や発展を維持していけるのか懸念がなくもない。 もっとも私自身は、クラシック音楽を始めとして20世紀までに作られた古今東西の数多くの音楽だけで手一杯&十分満足しており、これからの音楽業界がどうなろうと正直「知ったことではない」のだが、音楽以前の音楽(あえて反撥覚悟で言うなら「耐え難い雑音の数々」)が世に氾濫する中、この若き兄妹には今後もその才能を最大限に発揮して力強く存在感を示して行って欲しいものである。