明らかに過発酵である。
なぜなら、一次発酵を終えた時点で、少しアルコール臭がしたからだ。
二次発酵の膨らみも悪かった。
しかし、前回よりも冷めてもすごく固いわけではない。
自分の生活とパンのタイミングを合わせられないのが、ネック。
焦って、途中で室温を上げてしまったことも、失敗の要因か。
まだまだ、冷蔵庫に種は残っているので、パンは焼ける。
しかし焼きたてのときは少しだけ、心が折れそうだった。
こんなに時間をかけたのに、また失敗した…と感じたからだ。
でも、不思議なことに、一晩経って食べてみると、焼きたてとは明らかに違う味がする。
なんとなく、天然酵母を使った手作りベーカリーのハードパンに近い味わいである。
ずっしり重たいけど、噛めば噛むほど小麦粉の甘みがして、あとを引く味なのだ。
何しろイースト独特の味がせず、最後にほんのり柿の味が残るような、奥行のある風味。
少しの酸味ですら、ライ麦パンっぽくて、なんだか美味しい。
自家製酵母のオーバーナイト法は、時間が経つほど、味わいが深くなるとどこかで読んだ。
これは、本当だ…と実感する。
焼いたあとも、熟成しているのかもしれない。
パン作りは、すべてがリンクしているのです。
と、誰かが言っていた。
酵母も種おこしも、一次発酵も二次発酵、焼成に至るまで、それぞれに適切なタイミングと温度がある。
できたときは、最初に希望してた感じにはならない。
でも、どこかの過程がその希望の結果になることを邪魔しても、この子は"パン"になる、という運命をまっとうするために、どこか他の過程で、自身を修正するのかもしれない。
慣性の法則とでも、言えばいいのか。
社会から見捨てられ、自殺しようとしていた文太にエスパーの能力を与えた兆(文人)。
兆は、自身の妻である四季が10年度に死ぬことになる運命を変えるために、未来からやってきた。
兆は、文太に四季を愛さないように彼女の夫を演じることを命ずる。
記憶を改ざんされた四季は、文太を自分の夫だと信じ、愛するようになり、やがて記憶が戻ったとき、どちらの"ぶんちゃん"も愛していることに戸惑う。
四季を救うために1000万人の人間が死ぬことになることを厭わない兆と、どちらも失いたくない文太の間で諍いが起きるが、最後は文太らが、10年後に四季が死ぬ可能性があっても、兆(文人)と四季が結ばれるという元の状態に戻す。
生きることに絶望した文太が、愛してはいけない人を愛したことにより、愛する人が自分を愛さなくても、幸せになる方法を選んだ。
慣性の法則が、四季の命を近いうちに奪うことになろうとも、未来を知らない二人(記憶を失った兆と四季)のままで、その間、精一杯愛し合うことを信じて、自身の愛をまっとうした文太。
愛が運命を自分の希望のままに変えるのではなく、愛した記憶だけが、今の自分を肯定する。
「Sì,amore.」
キミは、どうあっても私を美味しくさせる運命。
二週間もの愛を注がれて。

