小老女セイラ | 想像と創造の毎日

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写真は注釈がない限り、
自分で撮影しております。

  うちのオカンのスマホにLINEを入れた。

  普段は友達と電話でやり取りしてるのだが、みんながLINEを使っているから、自分もそうしたいというのだ。


  メールも使うが、ほとんど返さない。

  そもそも、スマホで文字を入力するのがめんどくさいらしい。


  それで事足りているのなら、入れなくていいんじゃないか?と言ったが、昨今の人付き合いではそうもいかなくなっているのは私にもわかる。


  しかし、ダウンロードした途端に、いろんな人からLINEが来て、オカンは焦り始める。

  なんで、私が電話番号も知らない人から来るのか、とか、この人知らないとか言い始めて、私はすぐにLINEを入れたことを後悔した。


  それから友達以外のLINEは受け付けないように設定しなおしたのだが、それからことある事にオカンから連絡が来るようになった。


  ある友達がオカンにLINEしたのだが、既読にならない。年を取った人が返せないのはわかるけど(こう言われてもそこには不快さを感じない我が母😭)せめて既読だけはつけてくれと言われたんだけど、そもそもLINEなんて来てないとかいって焦っている。


  たぶん、その人を友達登録する前に友達以外の人からの受信を拒否したものだから、そうなったんだろう。


  なので、その人を友達登録し、私が代わりに事情を説明する文章を打ったのだが、そのあとの返事が長く、オカンは何て返せばいいか、困っている。


  おい、オカン。なんだ、そいつ。メンヘラか?めんどくせぇな。と私が言うと、オカンは、そうなのよ。この人、めんどくさいのよ。とため息をついた。つか、メンヘラって何?と聞かれ、ビョーキだ。と答えた。


  今まではLINEをしていなかったから、友達同士の揉め事に関与しなくて済んでいたものが、オカンが参加することにより、連絡ミスからの仲間外れの誤解などが生じ、それがそのめんどくさい友達の被害妄想となって人間関係が悪化しているのである。


  オカンは天然キャラである。

  持ち前の鈍感さで、同い年の同棲の揉め事に巻き込まれることがあまりなかったタイプなのだが、その鈍感が、人によってはイライラするのだろう。

  しかもLINEという文字だけを伝える道具がそこに介在することにより、直接のコミユニケーション以上のスキルがオカンに求められることとなるのである。


  特にその人は、お金持ちの暇を持て余したマダムで、お姫様気質らしく、わがままらしいのだ。


  うちのオカンは、典型的な田舎のダサいおばはんなので、そこに嫉妬することもなく、周りに誘われるまま、ぼうっとそこに参加しているのだろうが、

暇と承認欲求を持て余すマダムの複雑な心理は理解しかねるのだろう。


  一生懸命、絵文字を選びながら、文字を間違えつつ、返事をしているのを見ていると泣けてくる(つか、笑えてくる)。


  もうあんたさ。私は文字打てないんで、大事な用事はなるべく電話でって言えよ。あと、既読だけでいいって言ってるんだから、もう返事すんな!嫌われたからって困るか?そんなことで嫌う友達なんていらんだろ。と言ったら、オカンは笑って、スマホを閉じた。


  ババアも中学生となんら変わりない。

  すぐに返事が来ないから無視してるだの、私には返事がないだの、そんなん知るか!と吐き捨てると、オカンはまたまた大笑いし、やめるのかと思いきや、ちょっと、またわかんなくなったら聞きに来るから。と言って颯爽と帰っていった。


  私はぇぇえ!と、半ばうんざりしたが、しかしボケ防止の観点から言っても、やるに越したことはないか、と思い直す。


  うちのオカンはアホだけど、最近はすごい人かもしれない。と思い直すことが多い。


  なんというか、人としてクズじゃないのかもしれない。と上から目線だが思う。

  

  ちょうどうちの娘が私に上から目線でモノを言ってくるのと同じ感覚で、私も自分の母親にそういう態度を取っているのだから、血は争えない。


  オカンは去年まで仕事をしていたが、そこに中国人やらベトナム人の子達がいて、周りのオバサンたちはその子たちを図々しい。と言って、無視したりしていらしいのだが、オカンは、そっと、ここではそこにあるお菓子とかを勝手に取ったり、タダだからって全部独り占めしたらいけないよ。とか、言っていたらしい。


  中国人やベトナム人の女の子たちは、そうオカンに言われると素直に言うことを聞いて、オカンのことをオネエサン、オネエサンと呼んでくっついてきて、それはそれでめんどくさい。とオカンは言っていた。


  オカンが置いていった高級そうなお菓子をおもむろに口に運ぶ。

  こんな上品なこの辺じゃ見たことないお菓子は、どうせあのわがまま少女マダムからもらったものだろう。


  こんな田舎で、この高級なお菓子の価値もよく分からんおばさんぐらいしかこの辺では友達になれないというのもよく考えれば可哀想かもしれない。


  小公女セイラのセイラとベッキーが思い浮かんだ。

  というかマダムはセイラほど慈愛に満ちたお嬢様ではない。

  どちらかというと、ラビニアか。



  最近では、離れた場所に住む息子(私の弟)に勝手にエコーショーだかを設置されていて、毎週、連絡が来るのだが、電気代がもったいないと言って、電源を切っていたら電話が来て怒られると言っていた。


  そしたらもう、電話でいいじゃん!と私は思うのだが、もはや、世の中が、便利なんだか不便なんだかわからんくなってるオカンである。


  つか、相互監視社会、大成功!っつーことか。

  

  そしてオカンは、いよいよめんどくさくなったら、スマホの電源も切るのであろうと予測する。

  オカンは、無意識で変革社会への抵抗勢力である。