同情の正しい使用法 | 想像と創造の毎日

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写真は注釈がない限り、
自分で撮影しております。

みーちゃんは約束の時間から一時間遅れて焼肉屋さんにやってきました。
私ともう一人の後輩は、みーちゃんが遅れる。と言ったときは一時間は待たされることを知っているので、さっさと自分たちの食べたいものを注文して、話すこともたいして話さず、ちょうど良い肉の焼け具合と対峙するためにひたすら焼き網を睨んでおります。

私は腸が高齢化していますので、脂がキツい部位を多量に摂取することができません。
いつも同じものを一通り注文します。
サガリにミノ、ユッケにナムル、牛トロ丼です。
後輩は、レバー、マルチョウ、カルビにラーメン。
並べられた皿を見ていると歳の差を見せつけられて、なんだか悲しくなりました。
「りりこさん。ホルモン、あんまり食べちゃダメですよ。」
と釘を刺されます。

何度も後輩たちと焼肉屋に行って、トイレとお友達になりましたので、そんな日は彼女たちの話題に入ることができませんでした。けれども後輩たちは、別に私がその場に居なくても、全然関係ありません。

一気に食べ終えてから、そういえば、みーちゃん!と思い出して、電話をしてみると、
「ごめん。ちょっと職場で後輩に捕まっちゃって。今から行くから、赤身とあの生肉ご飯に載ったやつとか、あと適当に頼んで置いて。」
と言うので、もう一度注文すると店員さんにまた同じメニューを食べるのか?というような怪訝な顔をされたのでその勘違いを訂正すべく、
「もう、みーちゃん、早く来ないかなー。」
と店員さんの去り際に独り言のように呟いた声が不自然に裏返ってしまって、後輩は吹き出しました。

みーちゃんがやっと来て、それから私と後輩はデザートを頼みました。あんなに食べたのに後輩は、アイスとクレープの盛り合わせを頼んでいて、私も食べたかったのに、お腹痛くしますよ。とまた言われたので仕方なく、杏仁豆腐にしました。

みーちゃんは食べながら、ここだけの話。という名の職場の愚痴をマシンガンのように話し出しました。

最近、音沙汰がないなあ。と私にしては珍しく、自分から連絡してみたのです。
案の定、みーちゃんはイライラした顔のキャラクターのLINEスタンプを連打していて、この辺で息抜きしようか。という話になったのです。

みーちゃんはブラック企業みたいな私たちの職場で、唯一の救いの女神です。いや、戦士です。というかジャンヌダルクです。

私たち…というより、主に後輩たちの不満や悩みを聞き入れて、上の人達に直談判しに行きます。なのでみーちゃんは、その辺のお偉いさんみたいな人達に少し疎まれているのです。お偉いさんたちは、その上のお偉いさんたちの命令のようなことには忠実ですが、私たちのような下っ端は、使いっ走りぐらいにしか思っていないみたいなんです。

少し立場が上になったみーちゃんは、入れ替わりの激しい私たちの職場をなんとかずっと勤めたいと思える職場にしようと一生懸命でした。
それなのに上と下のサンドイッチになった、アホみたいな男が変なプライドをかざして、みーちゃんにこう言ったそうです。

「どっからの立場で言ってるの?
    辞めたい人をちゃんと止めてるの?」

そう言った人とみーちゃんは役職も年齢も同じです。
そして、辞めたい人には辞めざるを得ない事情があるのです。

どっからの立場??

バカな男は本当に嫌いです。
自分が論破されて、逃げ場がなくなると、今度は自分がどれだけ偉いのかを誇示してくるからです。

そして違う上司は、自分が後輩たちの仕事の注意点を記した書類をみーちゃんに再確認させたそうです。理由は今の若い子達はすぐにメンタルがやられるから、この文章でいいか、チェックして欲しい。ということでした。

後輩は、それを優しい。と言いましたが、私はそうは思いませんでした。自分は立場上、指導という名目で何らかの駄目出しをしなくちゃいけないけれども、それでショックを受けて辞めることになったら、自分の責任が問われます。だから、本当は必要のないチェックをみーちゃんにさせた。そうすると何かあったときにみーちゃんのせいにもできるからです。

勘繰り過ぎですか?
いえ。決してそんなことはありません。
もし、本当に後輩たちのメンタルが心配なのなら、文章ではなく、直接話し合えばいいのです。相手の様子を見ながら、ここはこうした方がいい。そう伝える時間ぐらい取ることができないのなら、そんな紙だけの指導、やめてしまえ。

くそジジイ!!
ホント、バカ!!
〇ねや!コラ!

と私がエスカレートとして怒ると、後輩は笑い、みーちゃんは少し泣きそうになりました。

みーちゃんは言いました。
すんごい腹立ってたけど、なんか話したらスッキリしたわ。

でも本当はみーちゃんのことをその上司たちがとても頼りにしているのもわかります。
頼り?それはやっぱり美化し過ぎだ。
みーちゃんに現場の権限を握られると今自分たちがいる意味がなくなるのです。だから、威厳を振りかざすしかない。

なんて、悲しい生物なんだろう。
これは、同情に値するではないか。


相応しい同情の方法を私とみーちゃんは手に入れました。
上と下を作り上げることで自分の立ち位置を確かめるしか頭の働かない人達こそ、本当に憐れむべき存在なのでした。

私達は散々悪態をついた後にこう締めくくります。

可哀想なオッサンだ。
しかしそのプライドがどこにあるかを突き止めたつもりで、意地悪な気持ちになっては負けなのだ。

同じ人間なのだ。
私達はあなた達の隙間を補うための便利な小間使いではない。
しかし、ここまでの基礎を作ってきてくれたことに敬意を示すというカードを私達は隠し持っている。

それをチラつかせて、私達はどうしたいのだろうか。

さて。そこが問題だ。