憧れ | 想像と創造の毎日

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自分で撮影しております。

最近まで、友達と呼べる友達がほとんどいなかった娘ですが、中学生のときに一人だけ、娘が自分から仲良くなりたがった子がいました。
それまでも彼氏がいたり、何人か遊びに誘ってくれる子もいたのですが、そのどの関係も娘が心から自分が望んで、楽しんでいるようには見えませんでした。
単に誘われたから、付き合っていたのでしょう。
自分から関係を深く築こうという気持ちがそこには見えません。その気持ちは、娘が口に出さなくても、惰性の雰囲気として、相手に伝わるものです。だからせっかく仲良くなったと思っても、自然と相手の方からそのうちフェイドアウトしていく。
娘はそんな人間関係しか作れない自分に寂しさを感じてもいたけれど、自分がなかなか人を好きになれないことが原因であることもわかっていたようでした。人と共感し合うことに、彼女は嘘がつけないのです。相手を喜ばせようと思うことで、自分に嘘はつけない。自分が心から楽しいことで、相手も同じように心から楽しくなってくれなければ意味がない。そんなふうにも思っていたのだと思います。

誰かといたいから、何かをするのではなく、何かをしていることで、誰かと繋がる。
娘を見ていると、人との本当の繋がりの意味を考えさせられるような気がしました。

中学生の時に転校してきた彼女は、ハキハキとして、何事にもとても積極的な子でした。成績はすぐにクラスで断トツ一番になるほどでしたし、スポーツもなんでもできた。本当に賢い子というのは、年齢を問わないのだなと彼女を見ていると思えます。彼女は他の同じ年頃の子達よりも、群を抜いて精神的に大人でした。成績の良さや部活での活躍は、元々持っている才能だけではなく、誰が見てもこの子は本気で努力しているということがわかるぐらいで、そのことは、周囲がくだらない嫉妬を彼女にぶつけることができないぐらいの気迫でした。

しかし彼女は、できることを鼻にかけることもなく、できない子を見下すこともない。ただ淡々と努力し、できたことを真っ直ぐに喜ぶ。できない子にはプライドを傷つけないように優しかったり、デリカシーのない男子には真っ直ぐに叱りつけたり。相手のことを良く観察して、その人の価値観を尊重しながらも、決して自分を譲ることはない。
けれども、そんな完璧に見えても、時々遅刻や忘れ物をするのです。そのことは、周囲に安堵をもたらしました。少しばかりのドジで、自分と周囲との隔たりを失くすという技術。しかもそれは、意図的ではなく、ごく自然、彼女の無意識下で行われる行為なのです。

そんな大人でも適わないと思えるような対人関係のスキルを持った彼女が、娘の心を掴んだことは当たり前とも言えました。
自分の考えや心を自分ですら把握できない娘に、彼女は巧みな言葉を使い、まるで代弁するように説明してくれたようなのです。友達になんて、褒められたことのない娘は、彼女の賢さや思慮深さに一気に虜になりました。
しかし娘が好きになるぐらいですから、彼女は他の子達からも人気者でした。
一緒にいつも遊びたいと願っても、思うように親密になることは進学して離れ離れになっても叶わなかったのです。

娘は、憧れという言葉を
彼女に対して使いました。
自分はきっとどんなに努力しても、
彼女のようにはなれないことを
わかっている。

それでも彼女は娘に
そんな虚しさを感じさせるよりも先に
娘を喜ばせることができるのでした。
それは、彼女の好奇心の強さと
彼女の人への分け隔てない愛情の
ようなものだと思います。

しかし残酷なのは、
彼女の中にも外にはハッキリと出さずとも
好きとそうでないものがあり、
彼女にとって娘は、
他の誰かよりも魅力的な存在では
なかったのです。

中学校を卒業する前に一度だけ
娘が彼女を自分から
遊びに誘いました。
進学のために引越すことで、
すこぶる忙しかった彼女ですが、
なんとか娘のために時間を
作ってくれました。
彼女はその日、娘だけと遊んでくれました。
彼女は知っていたのです。
娘が自分だけと心置きなく話がしてみたいと
ずっと思っていたことを。

彼女の家から帰宅した娘は、
とても楽しかったと
頬を上気させていました。

一緒にお菓子作りをしたり、
マンガや本の話をしたり、
哲学の話をしたり…

彼女は娘の好きな話題と
したいことを察して
それだけを一緒に楽しもうと
してくれたのだと思いました。

彼女のようにはなれない。
でも、彼女と友達になれたことが
すごく嬉しかった。
またいつか、会えるかな。
また遊びたいな。

そうだね。
またいつか遊べるといいね。

彼女は娘が思うほどの思いの強さで、
娘を好きではないのです。
だから、離れてしまうと
なかなか自然に会うことには
ならないでしょう。

それでも思います。
娘がいろんな経験をして、
そのたびに自分の力で
様々なことを考え、
感じられるようになれたら。

彼女のような素敵な友達は、
絶対に集まってくる。

人が怖かったり、
分かり合えないと諦めて
興味をなくしていても。

自分の好きなことを
自分が楽しいと思うことに
忠実でいれば。
大好きな人は向こうからやってくる。
寂しいから、人を好きになるんじゃない。
一緒にいて楽しいから、
人は人を好きになる。
人との関係に迷ったら、
いつも、そこに戻りたいなと思います。