一日で往復十時間も車に
乗っていました。
車に乗るのは好きです。
運転も下手くそだけど、
嫌いではありません。
目の前の景色が
どんどん移り変わっていくのを
眺めていると
時間を追い越していくような
逆に遡っているような
不思議な感覚になります。
景色を見つめながら
想像の世界に耽ることが
好きです。
頭の中には
たくさんの言葉や文章が溢れるのに
浮かんだ途端に
消えてしまうことが
いつももどかしかった。
峠を抜けると
桜が咲いていました。
山を一個超えるだけで、
世界は突然姿を変えます。
少し移動しただけで
空気の匂いも自然の色も
なにもかもが違うことに
いつも新鮮な気持ちで
驚きます。
まるで雨雲と一緒に
移動しているみたいでした。
青空を追いかけるように
車を走らせているのに、
フロントガラスに落ちる雨は
一向に止む気配を見せません。
澄んだ青と濃い灰色の狭間には
何度も虹が現れては消える。
幼い頃に友達と
虹の根元に辿り着こうと
必死で自転車を漕いでいた頃のように
強くアクセルを踏んで
高速道路を駆け抜けました。
声かけ、見守り、助け合い。
と書かれた旗から
虹が生えていました。
それは大きな弧を描いて、
目の前の道路を横切り、
となりの街への架け橋に
なっているみたいです。
とは、そのときには
思わなかったのが
正直な気持ちです。
今、思いついただけです。
嘘でした。
すみません。
どうにもこの標識の意味が
わからないのです。
知らない子供に
迂闊に声をかけると
不審者扱いされてしまう
世の中です。
信じることと疑うことの
境い目が
この年になっても
よくわからないのです。
何を奪われると不幸なのか、
騙されるということは
一体なんのことを言うのか。
世界が私を幸せにしたり、悲しくしたり
するのか。
それとも私が
世界を幸せにして、悲しくさせているのか。
考えても
ちっともわからないのだった。
それでも虹を見つけたときには
いつも同じように
ワクワクする気持ちになるのは
本当です。


