彼女のいつもの勝気な眼差しが
トロンと私に向けられたので
ドキリとした。
私、ここからが長いんですう〜。
いつものように周りが
それぞれの酔いに任せて、
勝手にテンションを上げていくのを
少し遠巻きに眺めていた。
倒れそうなグラスをよけたり、
話題が悪い方向に行くのを察知して、
なだめながら逸らしてみたりするのは、
そんなに苦痛じゃなく、むしろ、
楽しかったりもする。
ひと回り年下の彼女は、
すらっと背が高く、浅黒い肌をした
美人だった。
サバサバとして、大雑把で、
でもプライドが高くて、
そのプライドの高さの種類が、若いゆえに
同年代の同僚の鼻についているのだった。
私、好きな人がいたんですけど、
その人には決まった人がいたんです。
それでも好きだったから、
付き合っていたんですけど、
どうにもならないことがわかったから、
こっちに帰ってきちゃいました。
彼女が頬を蒸気させながら、
私の肩に頭を乗せた。
取り出したスマホの写メには
彼女と男が写っている。
は?ブサイクじゃん。
私は彼女とのあまりの釣り合いの取れていない
彼の外見に思わず、正直に言ってしまう。
そうですよねえ…
そうなんですよ。
でも。居心地が良かった…
彼女に見つからないように
私からはいつも連絡しないようにしてました。
彼は今までも私以外に何人もいたみたいです。
要は女好きなんですよね。
ビール!はダメだな…
あ。ハイボールにしよう!
空になったジョッキを持ち上げた手首に
ゴールドのブレスレットが光る。
似合うね。ゴールド。
そうですか?
私、色黒なのでゴールドの方が
似合うんです。
それで、今は?
いまでも普通に連絡は来ますよ。
彼女と結婚するんじゃないですか。
次はいつこっちに来るんだって。
こないだは聞いてきました。
わからない。って答えたけど。
あ。前の彼氏とは長かったんですけど、
友達との浮気現場を見てしまって
別れたんです。
ああいうときに乗り込める人って、
すごいなって思いました。
私、そのまま気づかれないように
立ち去るしかできなかった。
う〜ん。やっぱり、何度見ても
ブサイクだな。
気が利いて、やさしいから良かったの?
そんなこともないんですけどね。
好きになったときは、彼女がいるなんて
知らなかったですから。
人を好きになるって、
理屈じゃないんだよな…
でも若いのにこんなふうに
この子が男の人に扱われるのが、
なんだか急にかわいそうに
なってきてしまった。
え?かわいそう?
一瞬よぎった自分の思いに嫌悪感を持つ。
人の恋愛を自分の価値観に当てはめて
ジャッジするなんて下衆だ。
それを聞いていた隣の後輩が
口をはさむ。
私の旦那なんて、
前に人妻と浮気したんですよ!
初耳だったので、ギョっとした。
呼び出して、別れろ!って言っても
私はどっちも大事だとか抜かしたんで、
旦那にバラしてやりましたよ!
おまえは…こえーな…
私が若干引いていると、
彼女は気弱になって、こう言った。
だって…
私、あの人と別れたら、
一生、誰も結婚してくれないって、
思ったから…
一滴も飲んでいないくせに、
涙が出てきた。
バカ!バカ!世の中の男の大バカやろー!
くそ!ピー(自主規制)!
おい!緑茶!ホットで!
彼女たちは、吹き出して、
私の空いたグラスを交換しに行ってくれる。
あんたたちの話に、
一気に薄ら寒くなったわ!!
窓の外の小さなイルミネーションが、
チラチラと降り始めた雪を照らす。
イブを好きな人と過ごすのだと
自慢していた後輩が肩をすくめる。
浮かれてんだろ?いつもより
酔いが早いんじゃないか?
私、その彼氏。
あんまりいい男だと思わないんだよなー。
と思ってることは胸にしまう。
誰にもわからない。
男と女のことに。
誰も、誰も、口をはさめない。
今朝起きて、豆腐作りをした。
最初の不安はやっぱり的中する。
大豆をうるかす時間が短かったんだ。
豆乳が固まらなかったから、
飲み干した。
まずかった。
黒いブツブツはヒジキではありません。
焦げです。
しかし、この量に対して、
あの取れた豆乳の少なさを思うと、
豆腐って、すごく贅沢な食べ物なのですね。
しかし、おからの方が
栄養があるのです。
私は今日、おからを作りました。
クリスマスメニューは、
おからの煮物です。
子供たちが笑っています。
夫は朝からおまえは何をしていたんだ?
と言います。
娘が楽しみに熟するまで待っていた
マンゴーを夫が捨てたことを怒っていました。
どうしてパパは自分のものは
すぐに片付けないのに、
人のものは邪魔だからって、捨てるの!!
夫は謝ってるんだから、許せよ!
と声を荒らげて、マンゴーをゴミ箱から
拾って、丁寧に洗いはじめました。
夫はマンゴーに全然興味がないみたいです。
自分に必要のないものは、
彼にとっていつもゴミでした。
悪気があるわけじゃないんですけど、
世界はいつも彼を真ん中にして、
動いているんだと思います、羨ましい…
娘は普段、大人しいくせに
食べ物の恨みはホントに恐ろしいな…
あの温厚でやさしくかわいらしい子を
一瞬で鬼みたいな顔にさせる…
そんなにマンゴー好きだったとは知らずに。
私もあまり好きじゃないから、
放置してたよ。ごめんね。
キリストさん。ごめんなさい。
こんな聖なる夜に
私たちは互いの欲望のために
食物を無駄にし、食物のために
争ってしまうのです。
こはぜ屋さんは、
いつも一緒に走ってくれました!
これからも一緒に走っていきたいんです!
と、テレビで茂木くんは叫んでいます。
演技でもいつも泣きます。
言葉や表情は、熱を持っている。
心はどこで震えますか?
それは、抗えない欲望から
単を発しているのではないですか。
だから神様。ごめんなさい。
欲望だらけの私たちを
どうかどうか、赦してください。
MerryX'mas🎄
