夏休み明けの9月が終わろうとしています。
9月は中旬くらいから、ず~っと天気が悪く、運動会の練習に支障をきたした小学校もあったのではないでしょうか。特に関東地方では、9月中旬(11~20日)の日照時間が10時間に届かないという状態・・・。ご苦労お察しいたします。
さて、水泳指導がおわり、運動会に向けた取り組みに全力を注いでいるであろうこの時期に、また不幸な事故が起こったというニュースを見かけました。
水泳の授業中、高校3年生がプールに飛び込んだ際に首を骨折し、胸から下が麻痺状態になってしまったという事故です。
小学校の水泳指導で飛び込みが禁止の理由
今回の事故は高校でした。
実は、高校での飛び込みの指導は禁止されていません。学習指導要領にも取り扱うことができる技能の1つとして記載されています。
では、小学校ではどうなのでしょうか。
現職の先生は当然ご存知かと思いますが、
小学校では飛び込みは禁止
です。中学校でも飛び込みは禁止です。
学習指導要領では、「水中からのスタートを指導する」と明記されています。
2012年前までは禁止になっていなかったため、私たちの子どもの頃は普通に飛び込みの練習をしてましたよね。
でも、今は小学校・中学校で飛び込みの指導はやってはいけません。
では、なぜ禁止されているのでしょうか。
大きな理由として、2つあります。
①学校プールの構造的な問題
②飛び込みによる重大事故
学校プールの構造的な問題とは、プールの造り、特に水深に問題があるということです。
そもそも、水泳指導で一番怖いのは、子どもたちがプールで溺れてしまうことです。これは直結して命にかかわる問題です。
そこで、学校のプールは浅くつくられています。特に小学校では、1年生~6年生までが同じプールに入ります。各小学校で学年ごとに水位が決まっていて調節して入ります。基本的には背の低い子でも足がつくようにします。
さらに、プール自体の水深も↓のようになっています
つまり、中央部分が一番深くなっていて、Aに近い場所ほど浅くなっているという造りになっています。
水深が浅いプールの、さらに浅いAの部分から飛び込みをするのが、いかに危険かわかりますよね。
体の大きな子がAの位置から、普通に足から飛び込んだって危険が伴います。ましてや、頭から飛び込むとなると、、、危険なのは明白です。
頭から飛び込んで、プールの底に打ち付け、頭や首の骨折、脊髄損傷による麻痺など、重大事故につながってしまいます。
飛び込みをするには、十分な水深が必要なのです。小学校のプールではその水深を実現するのが難しい。飛び込みの技術を習得するよりも、溺れたりしないような安全性を優先させているわけです。妥当かつ合理的な判断だと思います。
もう一つ、隠れて理由としては教員の指導力不足もあげられるでしょう。もしかしたら、ある程度の水深にして安全に指導できる先生もいるでしょう。特に、大学まで水泳をつづけた方などは、指導の仕方を心得ていると思います。
しかしながら、そんな人はごくわずか。そして、事故が起こってしまえば、子どもの命や一生に関わる重大事故になってしまう。そんなリスクはとれませんよね。
私たちの子どもの頃は、飛び込みの指導があったこともあり、水深も深かったと思います。中学年までは、いざとなったらつかまれるように、プールサイド付近のコースでしか練習できなかった覚えがあります。
小学校での水泳指導で●●は行ってもいいのか
波のプール
流れるプール
この2つ、聞いたことありますか?
小学校の水泳指導でよく行われていたものです。今でも、授業での水泳指導、夏休み中の水泳指導で行っている学校もあるのでは?
波のプールとは、先生の笛の合図でAとAの間を子どもたちが行ったり来たりと往復することで、人工的に波をつくることを言います。
流れるプールは、子どもたちがプールサイド際に並んで、同じ方向にグルグルとまわって、人工的に流れるプールをつくることを言います。
さて、みなさんの学校はこの2つ行っていますか?
ある自治体では、全面禁止という通達があり、全小学校で一斉に行わなくなりました。
理由は、危険であること。そして、水泳指導の内容に含まれるか疑わしいこと。
たしかに、危険はあります。
みなさんは、どう考えますか?
私は、たしかに危険があるとは思いますが、やはり一番の問題は水泳指導として成立しているかどうかという点にあります。
子どもたちにとっては楽しい。
そして、「 学び+楽しい 」がとても効果的であることは重々承知しています。
しかし、流れるプール、波のプールについては、「学び」の部分が疑わしい。
2つとも、その現象を起こすために多少の時間を要します。時間をかけてまで行う上に、水に不慣れな子にとっては危険も伴います。
絶対的に良くない、というわけではなく、
他にやることあるのでは?
という思いが強いです。
他にも、こんなことが禁止になったという情報があれば、教えていただければと思います。ぜひ、コメントかお問合せからよろしくお願いいたします。
学習指導要領に明記されたことは、知らなかったではすまされない
これは、水泳指導に限った事ではありません。
迷ったら、指導要領を見よ
これ、鉄則です。もちろん、個人的な思いとしては、もっとたくさんのことを教えてあげたいという気持ちがあるでしょう。向上心をもつ先生は特に。
しかしながら、学校の先生である以上、学習指導要領に従って指導することは当然のことです。もっと、高レベルの指導をしたいのであれば、学校の先生ではなく、塾やスポーツ教室(チーム)の指導者となるべきでしょう。スイミングスクールでは、当然のごとく飛び込みの指導をしますしね。
個人的には、もっといろいろなことを教えてあげたいと、高度なことを教えようとする先生は、実は大した指導力もない人が多いと私は思っています。
自分の「教えたい」という欲求と「難しいことを教えた」という自己満足を満たしているだけで、現実は授業内容や指導内容に一部の限られた子どもたちしかついていけず、大半の子どもが置き去りにされている状況となっています。(本人は気付いてない場合が多いが)
そもそも、全教科の学習指導要領の内容を、子どもたち全員に身に付けさせようと思ったら、それ以上のことを教える余裕などないはずですしね。
重大事故が起こる可能性は「水泳」だけではありません。
●器械運動(マット運動・跳び箱運動・鉄棒運動など)
●理科の実験(薬品の取り扱いなど)
●図工(用具の取り扱いなど)
細かく言えば、もっとありますかね。
危険なことを言い出したらキリがないという考えもあります。
まぁ、たしかにそうですよね。子どもたちを何もない空間に閉じ込めれば、外的要因で怪我をする恐れはなくなりますよね。でも、そんなことには何の意味もないどころか、マイナス要因ばかりであることは言わなくてもわかりますよね。
先生と言う立場で教える以上、安全という言葉は常についてまわります。経験のないことを指導する時はもちろん、過去に指導経験があることも、目の前にいる子どもたちに指導する時には安全性に十分に配慮する必要があります。
学習指導要領の確認、指導書の確認、先輩教員の助言など、少しでも危険性があることは必ず確認するようにしなくてはいけません。
安全性を確保したうえで指導することこそ、先生にとっても子どもたちにとっても、安心して学べる環境と言えます。
「不幸な事故」と言うのはありますが、「防げた事故」と言うのもまた存在します。そして、「防げた事故」は、不幸な事故ではなく、『準備不足・知識不足による事故』です。
「防げた事故」を0にすること、これが教師にとって一番大切であり、一番最初に取り組むべきことでしょう。
PS
書いている途中で見つけた記事です。
とても参考になるので、ぜひご覧ください。
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