土曜日は上の娘の
成人式の前撮りの撮影の日だった。
本当の成人式は来年の1月。
晴れ着を2年前に決め、
成人式の前の年に前撮りを撮影する、
というのが、最近の流れなのだとか。

家族写真の撮影もサービスというので
(晴れ着のレンタル代に含まれてる)
家族総出で出かけた。
私の中の家族愛は消えかけだが、
もしものときの遺影代わりに
プロが撮ってくれたものがあったら
その方がいいな、と思って
撮影をお願いすることにした。

晴れ着を着た娘が、
いろんなポーズで写真を撮っている。
時折ふっと見せる表情が、
大人の女性になったり、
七五三のときの面影に重なったりする。

ぼんやりとその姿を見ていたら
よくまぁここまで育ってくれたなぁ、と
少し感傷的になった。

夫の稼ぎのおかげで
子どもにかけるお金がないという
苦労や心配はなかったんだ。
夫にも感謝せねば、と思ったり…

娘が吹奏楽やピアノを通して
私に新しい世界を教えてくれたこと、
大会でいろんな場所に行ったことを
思い出したり…

今は医療系の大学で
課題は随分大変そうだけど、
一人暮らしでよく頑張ってるよなぁ…とか

あの子は今まで
親に迷惑かけたことないもんな…とか

いろんな気持ちがないまぜになって、
撮影前なのにうっかり
泣いてしまいそうになった。

撮影の最後が家族写真の撮影だった。
全員で声を合わせて
「ハッピー」と唱和させられたりして、
幸せ家族はニッコリと、
何枚も写真に収まった。

前撮りを忘れないようにと
娘が決めた、その撮影日は
夫の49回めの誕生日だった。

久しぶりに家族4人揃っての夕食。
何を食べたいのか、
ケーキはどんなものがいいのか。
夫は「みんなの好きなのでいいよ」と
言った。
自分の誕生日なんだから
自分で決めろよ、と内心思ったが、
 多分、初めて行く写真スタジオで
疲れたんだろうな。仕方ない。ハッピー…

ケーキは写真スタジオの近くの
ショッピングモールで娘たちが選んだ。

「じゃあ、夜はお寿司にしようか。
    どこで買う?」
と私が尋ねると、夫は
「◯(いつも行く近くのスーパー)」と答えた。
同じモール内じゃないのは不思議だが
まあいいや。
夫はそのスーパーが大好きなのだ。

いつも行くそのスーパーで
お寿司は適当に私が選んだ。
自分の分と娘たちの分を見比べて、
「俺のはちょっと大きいんだね。
    ありがとう」
と夫は嬉しそうに言った。

スタジオで撮影が終わって、
パソコンでチェックした写真は
娘たちは2人とも
本人達も驚くほど、夫に似ていた。
「マジ、似てて嫌だ」
晴れ着の写真なのに絶望していた上の娘。
「しょうがないじゃん!」
キレ気味の下の娘。
「夫が3人…これじゃ私、キツイ訳だ」
黙って画面を見つめた私。

ケーキを前に、手拍子と共に
ハッピーバースデーを歌う。
幸せ家族のはずの女3人は
揃って絶望を胸に抱えていた。

夫は嬉しそうに一緒に歌を歌ったあと
テレビを見ながらケーキを食べた。

ケーキは美味しかった。
夫への感謝の気持ちは
いつのまにかどこかへ吹っ飛んでいた。