カルシウム不足なのか
カルシウムは私たちの体内に最も多く含まれるミネラルで、体重70kgの成人の体内には1200mg程度存在している。
そのうちの99%は骨と歯の中にあり、残りの1%は血液、筋肉、神経に存在し、重要な働きをしている。
カルシウムの1日の必要量は「600mg」とされている。
ただし、これは平均値ですべての人に当てはまるとは言えないのだ。
栄養学では、「体重1kgあたり10mgとし、最低600mg」となっている。
さらに、骨を丈夫にするのであれば「体重1kgあたり20mg」が理想とされている。
また、汗の中にもカルシウムは含まれているので、運動をする人や、よく汗をかくという人も多めに摂取することが必要となってくる。
多くの栄養素と同じように、カルシウムにも吸収率が定められている。
例えば鉄分は、毎日1mg程度が失われている。
ところが、失った1mgの鉄分を補給するには、その10倍の鉄を摂らなければならないのだ。
また、植物性食品に含まれる非ヘム鉄よりも、動物性食品に含まれるヘム鉄のほうが吸収率がいい。
動物性食品を積極的に摂らないという人は、鉄不足になりやすいので注意が必要だ。
鉄分に比べると、カルシウムは吸収率が高く、50%程度で計算されている。
牛乳などの乳製品のカルシウムは吸収率がよく、60~70%だ。
そして、小魚などの骨ごと食べられるものが40~50%、野菜などの植物性食品に含まれるカルシウムは吸収率が30%程度で計算されている。
では、実際にカルシウムが不足すると、どのような症状がでるのか。
まずでてくる症状としては、脚がつったり、手足のしびれ、神経過敏、不整脈、腎機能の低下などがある。
運動中に水分、塩分が足りているのに筋肉がつったりするのはおそらくカルシウム不足と考えていい。
しかし、カルシウム不足による最大の問題は、血清カルシウムを正常値に保つために、骨に蓄えられているカルシウムを溶かして、それを補おうとすることにある。
このとき、私たちの体は必要以上のカルシウムを溶かし、余ったカルシウムを血管や細胞内に沈着させてしまう。
「カルシウム不足→骨を溶かす→余ったカルシウムが沈着」
この一連のパラドックスが、様々な病気の引き金になっていると考えられているのだ。
では、どうしたらしっかりカルシウムを吸収し、丈夫な骨を維持できるのだろうか。
スーパーなどの食品売り場には、「カルシウム入り」を強調した食品がよく目にとまる。
これだけカルシウム入りの食品が出回っているのになぜ、カルシウム不足の人や骨が弱くなってしまう人が多いのだろうか。
それは、骨への刺激が不足していると考えられる。
人間の骨は負荷をかけていないともろくなってしまうのだ。
年齢を重ねるにつれて、全身に負荷をかけるような運動を心がけている人は少ないのではないだろうか。
全身に負荷をかける運動は、筋トレなどの無酸素運動が理想的だ。
ウォーキングなどの有酸素運動だけでは、骨密度の低下を防ぐ刺激にはならないのだ。
筋肉は、筋トレなどで筋線維を破壊し、十分なたんぱく質などの栄養を摂取することで強く、太くなる。
なにもせずにプロテインを摂取しても、筋肉がたんぱく質を求めていないので筋肉は発達しない。
骨も同様に、骨組織を破壊するという条件を満たさないまま、カルシウムを強化した食品ばかりを摂取しても、骨自体がカルシウムを求めていないのだから、骨が強くならないのは当然と言えるだろう。
現代人は、カルシウム不足というより、カルシウムを必要とする条件、すなわち全身に負荷をかけるような運動をしていないことのほうが問題なのだ。