小説 都営大江戸線の六本木駅で抱きしめて ──その7── | Berryz LogBook

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Berryz工房を中心とした、ハロプロについてのブログです。
彼女たちを登場人物にした、小説も書いてます。

「そうだ!」すごく良いこと考え付いたと、りかの顔が明るくなる。
「いっちゃんも『部活』って返したら?」

「なにそれ」

突然の提案に、伶奈は目を細め、りかの顔を覗き込む。

「とにかく、彼氏さんから連絡があったら『部活』って返すの!」
「例えば?」

よくわからないといった様子で、尋ねる。

「そうだなぁ、『会いたい』って言ってきたとするでしょ?」
「うん」
「そしたら『部活』って返すの」
「何してんの? ってLINEが来たら?」
「部活!」
「何食べたい? って訊かれたら?」
「部活!!」
「それって、おかしくない?」

同意を求める伶奈に、汐里と紗耶も首をひねる。
確かにおかしい。会話になってない。

「おかしくても、いいの。いっちゃんが怒ってることを、アピールするのが目的なんだから」

りかが、そう力説した。が、他の三人は、納得ていない様子だった。

とその時、伶奈のスマホから着信音が流れた。
手に取り顔を歪める。画面を三人に向け、指さした。

彼氏からの電話だ。

「いっちゃん、部活だよ部活」

そう言って握り拳を振るうりかに、伶奈は頷き「応答」をタップした。

背もたれに体を預け、足を組む。
そして「なに?」と不機嫌な声で応えた。

「次の日曜? ムリ、部活だから」

冷たく言い放って、わざとらしい仕草で髪をかき上げる。
これでどうよと、視線をりかに送る。
りかは笑顔で頷き、それでいいと親指を立てた。
が次の瞬間、伶奈の顔が曇った。

「……えっ、引退!? いや、そうだけど」

先週の地区予選敗退をもって、伶奈は部活を引退したのだった。
ここ数日は、引継ぎと荷物の引き上げで、顔を出しているだけだ。

明らかに動揺した様子をみせる伶奈に、りかは頭を抱えた。

ところが、しばらく通話を続けるうちに、伶奈の顔色が明らかに変わった。

「……マジ!? 行く行く!……えっとねぇ」壁の時計を見上げる。
「二〇分ちょいで着くと思う。うん、じゃあ品川で!」

伶奈は電話を切ると、よしと小さくガッツポーズをした。
困惑する三人に、ゴメン用ができたと手刀を切り、カバンを抱え立ち上がった。


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