漁父 -11ページ目
続き。
時には驢馬に乗って、
町に入り、人に物乞いを
したり、乞食たちを呼んで、
連れ帰り泊らせ、酒食を
振る舞ったり、らじばんだ…いやいや。
世間の人には意味不明。
孝廉や賢良方正、有道などに
推挙され、三公の役所からも
呼び出しがあるが、就任せず。
彭城の姜肱、京兆の韋著
とともに召しだされるが、
彼は応じなかった。
その後彼は趙国の相に
任ぜられた。
世間の人はきっと彼が
質素倹約を旨とするだろう
と思っていたが、今までと
事変わりかれはきれいな
車に乗り、いい馬をつけた。
着任すると、六に文書を見ず、
官舎の中は草ぼうぼう。
召し返されて、侍中に任ぜられ、
朝廷で大事があるたび、彼は
顔色を正して、侃々諤々の論を
はく。
百官はこれを憚った。
この頃張角が乱を起こした。
彼はその対策を建議した。
内容は帝の側近を相当に
非難するもので、
「国家が兵を出すのは、
望ましくない。ただ将軍を
黄河のほとりに派遣して、
北を向いて『孝経』を朗読
させたら賊はひとりでに
消滅するであろう。」と。
中常時の張議は、
「彼は国家が将軍を任命し、
軍を出すことを阻止致しおり
ます。ひょっとするとこれは
張角と腹を合わせて内応
するものではござらぬか。」
と讒言。逮捕し殺した。
当時は党錮の禁然り、
清流が弾圧され、
宦官佞臣か跋扈。
その中正面切って、
『お前らがいなければ』
なんていったもんだから、
佞臣讒臣宦官に恨まれ、
殺さる。と。
一見狂人に見えるが
実際の人物像はどうか。
賛に言う、
(賛はその人を評価して
後の人がつけた物)
賛に言う、
「正しい道に乗って違わず、
義に臨んで惑う事がない。
この剛毅で清潔な人だけだ
思い切った行動をして道徳を
育てるのは!!」と。
「後漢書」<独行伝>より。
向栩(字は甫興)河内郡の人
「後漢書」<逸民伝>②の
向長の子孫に当たる。
若いころ書生であった。
変わり者で人付き合いが
悪い。
『老子』をいつも読み、
仙道修行のようであり、
粋狂のようでもある。
髪を長くのばし背に垂らし、
紅い鉢巻をしている。
いつもかまどの北で、
床几(しょうぎ)のうえに
座っている。
物言う事が嫌いで、口笛を
吹くことを好んだ。
いつもうつむいていて、相手
の顔を見ない。
弟子がいて、顔淵・子貢・季路・
冉有などと名付ける。
(いずれも孔子の弟子。『老子』
を読んでいて仙道修行的なこと
しているのにね。)
続き。
隠棲して『易経』を読んだ。
「損」卦(欲望を減らし
倹約の意味)と、
「益」卦(上位者から減ら
して下位者に益すの意味)
まで読み進んで、嘆息して
言った。
「わしはすでに富むよりは、
貧しいのがまし、
身分が高いよりは、
卑しいがましと悟った。
ただ、死ぬことより、生きる
ことがましかどうかだけが
まだわからない。」と。
建武年間に、男の子には
嫁を娶り、女の子は嫁がせ、
そのあと家の者に戒めて、
「家の事は一切わしの耳には
入れるな。わしが死んだもの
としてそのようにはからえ。」
と。
それから彼はしたい放題。
北海の禽慶とともに、五獄(五
つの山、泰山とか)を遊び歩き、
どこで死んだかわからない。
『逸民』は端的に言うと、
伯夷・叔斉。
向長(字は子平)
河内郡の人、
官にはつかず隠居していた。
性格は穏やか。
生活は貧乏で、
飯も食えない(まあ、
職についてないから)。
物好きな人が食物を
届けると、腹いっぱい
食って後の残りを返す。
(貯めおかない。)
『老子』、『易経』を愛読。
(所謂、老荘思想。
後の竹林の七賢みたいな。)
王莽の大司空が毎年、
彼を招聘する。
何年かしてようやく出てきた。
ところで、(招聘)は招くこと。
類義語で(招致)がある。
「東京へオリンピックを招致」
的な。
閑話休題。
王莽の大司空(漢代には
御史大夫、後漢では司空。
丞相の副)が王莽に彼を
推薦したいという。
向長は
「絶対にやめてくれ。」
と。
大司空はこれであきらめた。
続き。
靖郭君(田嬰)…斉の人。
孟嘗君(田文)の父。
男…斉の人。
靖郭君は「三言過ぎたら
煮殺せ」と言う男に、
引見することにした。
男は小走りに靖郭君の
前に進み出て、
「海、大、魚」と言って、
すぐに方向転換して
走り去ろうとした。
靖郭君が
「客人よ、ここでゆっくり
してその詳細を教えてくれ。」
と言った。
男
「私は身分は卑しい
ものですが、命は大事。」
と言った。
靖郭君
「殺したりはしない。
続けて申されよ。」と。
そこで男は答えて言う、
「わが君にはおそらく、
大魚をご存じでしょう。
網でも取り押さえることが
ならず、釣り針でも、引き
上げることは出来ません。
そのような大魚でさえも、
大波で陸に放りあげられ、
水を失えば、蟻でさえも
思うがままです。
いったい斉の国は、
わが君にとっての
大魚における水です。
〈薛〉に城を築いて
どうするのですか。
斉を失えばたとい、
〈薛〉の城壁を高くし、
天に届くまでになさっても、
所詮役には立ちますまい。」
と言った。
それでやっと靖郭君は、
「なるほど。」と言い、
〈薛〉に城を築くことを、
見合せた。
靖郭君は皆が城を築こうと
することに反対するもんで、
もう誰も会わんと。
そこである男が知恵を使って、
『たった三言』で会う事に。
たった『三言』で伝わらないとは
わかるけど、逆に気になるだろうと。
それで意見を聞いて、間違いを
すぐに直す靖郭君もすごいけど。
この時代の説客達の妙を楽しむ話。

