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花井 『櫻井』
あず 『あれーっ?一沙・・・・じゃなかった、花井さーん!どうしてここにいるんですかー?』
天王寺 『俺が連絡して迎えに来てもらった。お前、こんな酔っ払ってちゃ帰れないやろ?』
あず 『天王寺さん、ずいぶん気が利きますね!ありがとうございますっ!!』
花井 『天王寺、本当にすまなかった、マスターも・・・・』
阿賀佐 『いやいや、全然』
天王寺 『一沙、櫻井にやさしくしてやれよ?』
花井 『え?』
天王寺 『こいつ、相当お前のこと好きみたいや』
花井 『・・・・変なこと言うな』
天王寺 『ま、気をつけて帰れや』
花井 『あぁ。迷惑かけてすまなかった。でもありがとう。ほら、行くぞ、櫻井』
一沙は足元がふらつく私を抱きかかえるようにして、モンステを後にした。
花井 『タクシー捕まえるから』
あず 『うんっ』
一沙は片手で私を支え、もう片方の手をタクシーに挙げ続ける。
花井 『なかなか捕まらないな』
あず 『私も手伝うよ!』
私は一沙の腕から離れ、タクシーに手を挙げた。
が、その反動でよろけてしまった。
(わっ)
私はとっさに一沙に抱きついた。
あず 『ご、ごめん』
花井 『相当飲んだんだな。酔っ払いすぎだ』
あず 『分かってる・・・・』
タクシーの数は多いものの、すでに乗客済みでなかなか捕まらない。
花井 『諦めよう』
あず 『え?』
一沙は私に背を向けてしゃがみこんだ。
花井 『乗れ』
あず 『の、乗れ?』
花井 『おんぶして送っていってやる。早く乗れ』
あず 『一沙・・・・』
私はためらいながらも、一沙の背中に乗って、首に腕を回した。
花井 『ちゃんと掴まれよ?』
あず 『うん・・・・』
一沙は私を抱えて夜の道を歩き出した。
あたたかくて大きな背中。
ときおり触れ合う頬。
一沙のぬくもりが伝わってきて、きゅんとする。
(一沙・・・・ずっと一緒にいられたらいいのにな・・・・)
花井 『あず』
あず 『ん?』
花井 『そんなに酔っ払うなんて、なにかあったのか?』
あず 『・・・・・・』
(本当のことなんて、言えないよ。だって言っちゃいけないことだし・・・・)
花井 『隠し事するなよ?』
あず 『・・・・・・』
(一沙こそ・・・・)
花井 『言えないことなのか?』
あず 『・・・・・・』
(一沙は言えるの・・・・?)
花井 『わかった。いつか話せるようになったら話せ』
あず 『・・・・うん』
(でもそんな日が来るのかな。お互いに話せる日なんて・・・・)
目の周りが熱くなってきた。
私はそんな自分に気付かれたくなくて、一沙の肩に顔をうずめた。
翌日。
みんな朝から出払っていて、2課には私と浅野さんしかいなかった。
バンッ
いきなりドアが開いて、桐沢さんが入ってきた。
桐沢 『みんな出払ってるのか』
あず 『はい、まだ戻ってません』
桐沢 『実は女性宅を狙った強盗が起きた。金品を取られただけでなく、なぜか髪を切られたということだ』
あず 『髪の毛・・・・ですか?』
桐沢 『ああ。怨恨(えんこん)の線も含めて洗ってほしい。至急、2人で捜査に出てくれ』
浅野 『わかりました。行くよ、櫻井』
あず 『はい』
私と浅野さんは2課を飛び出した。
事件の起きた女性の家に到着。
被害者は床に崩れるようにして泣いていたけれど、私たちは話を聞かなければならなかった。
浅野 『犯人の顔に見に覚えはありますか?』
被害者 『帽子を被ってマスクをしていたので、顔ははっきり見えなくて・・・・』
あず 『事件の状況を詳しく教えていただけますか?』
被害者 『宅急便を装った男の人が・・・・いきなり家に入ってきて、大きなハサミを向けてきたんです・・・・私、怖くて動けなくて・・・・そしたら髪を掴まれて、いきなり切られたんです・・・・』
床に散らばった長い髪を、鑑識課の木村さんがビニール袋に入れる。
木村 『犯人はためらうことなく一気に切っています』
浅野 『髪フェチの犯行ならば髪を持ち帰るはずだけど、切っただけか・・・・』
とそのとき・・・・
天王寺 『おい、櫻井!』
あず 『天王寺さん、お疲れさまです。早速ですが事件の概要を説明・・・・』
天王寺 『ちゃうちゃう、俺はお前を呼びに来たんや。ちょっとこっち来い!』
天王寺さんは私の腕を引っ張って、マンションの廊下に連れ出した。
あず 『な、なんですか?』
天王寺さんは内緒話をするように私の耳に顔を近づけた。
天王寺 『大変や。今、一沙が見合いしてるそうや』
あず 『ええっ!!??い、今???だ、だって、昨日断ったはずじゃ・・・・』
天王寺 『上層部のアホが押し切ったんやろ』
あず 『そんな!』
天王寺 『これから見合いの席に行くで?』
あず 『だって捜査が!』
天王寺 『おーい、修介!』
天王寺さんが浅野さんを大声で呼んだ。
浅野 『なに』
天王寺 『すまんが、ちょっとこいつ借りるわ』
浅野 『別にいいけど』
あず 『え、別にいいって、そんな・・・・』
天王寺 『ほら、行くで、急げ、櫻井!』
あず 『は、はい!』
私は何がなんだかわからないまま、天王寺さんのパトカーに乗り込んだ。
やってきたのは高級ホテルのラウンジだった。
天王寺 『あ、いたいた!』
天王寺さんが指差す方を見ると、
景色のいい窓側の席に、一沙と女性とあの上層部の人がいた。
私たちは一沙に気付かれないよう、背後のソファーに座った。
上層部 『どうだね、花井くん。素敵な方じゃないか』
花井 『・・・・・・』
一沙がひとこと発するまでの時間が、とてつもなく長く感じる。
上層部 『お似合いだと思うがね』
(どうするの、一沙・・・・?)
花井 『私は・・・・』
うまく息が吸えない。
苦しいよ・・・・。
一沙の静かな声に、私は目を閉じた。