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レストランでステキな時間を過ごした後、一沙と帰り道を歩いていた。
あず 『とってもおいしかった。一沙、ご馳走様でした。ありがとう』
花井 『どういたしまして。また行こう』
あず 『うん』
にっこり微笑むと、一沙がすっと私の手を取った。
とそのとき・・・・
グーッ
(まずい、お腹がなっちゃった!)
私は一気に顔が熱くなり、慌ててうつむいた。
花井 『緊張しすぎて食った気しなかったんだろ?』
あず 『え・・・・緊張してたこと、気付いてたの?』
花井 『もちろん。見てればわかる』
あず 『・・・・なんか恥ずかしいな』
花井 『うちに来てお茶漬けでも食べるか?』
あず 『わ、いいの?』
花井 『なんだ、いきなり目が輝きだしたぞ』
あず 『うっ・・・・』
花井 『フレンチの後にもシメが必要なんて、しょうがないヤツだな』
おかしそうに笑うと、繋いだ手の指を絡めてきた。
(お茶漬けもうれしいけど、一沙とまだ一緒にいられるのはもっとうれしいな)
きゅっと手に力を込めると、一沙がふわっと笑ってくれた。
一沙はジャケットを脱いでソファーに掛けると、腕まくりをした。
花井 『今お茶漬け作るから、座って待ってろ』
あず 『ありがとう、一沙』
キッチンへ向かう一沙の背中を見送ると、
テーブルに積み重なった本の山が目に付いた。
一番上の本を手にして捲くってみる。
(英語で書かれたプロファイリングの論文集。昨日の取調べで役に立ったって言ってたやつかな)
分厚い論文集にはたくさんの付箋がついていて、
小さな文字でメモが記されている。
(毎日忙しいのに、帰宅すると勉強してるんだ・・・・キャリアを磨くって、こうした努力の積み重ねなんだよね)
一沙が優秀なのはもちろん知っていたけど、
それを支えている努力のあとを目にしたら、胸がじんとした。
花井 『お待たせ』
一沙がお茶漬けを作って持ってきてくれた。
あず 『ありがとう、一沙』
(これ以上、一沙の勉強の邪魔したら悪いし、これ食べたら帰ろう)
あず 『仕事から帰ってもちゃんと勉強してるんだね』
花井 『勉強って言っても、読んでるだけだよ』
あず 『このあともするの?』
一沙は私が手にしてる論文集をチラッと見ると、それを取り上げた。
花井 『これは全部読んだし頭に入ってる。やることはもうなにもない』
あず 『私に気遣ってない?』
花井 『バカ言うな。本当に忙しかったらデートにも誘えないし、家にも呼ぶわけないだろ。ほら、お茶漬け冷めるぞ』
あず 『う、うん。ありがとう。いただきます・・・・・・わ、おいしい!』
笑顔で箸を進める私を、一沙が目を細めて見ている。
穏やかで幸せな時間。
(もし毎日一沙といられて、こんなふうに過ごせたら楽しいだろうな。毎日ってことは・・・・結婚?さすがにそれはまだ早い気がするけど・・・・でもやっぱり憧れちゃうな)
あず 『ごちそうさまでした。すっごくおいしかったよ』
一沙はにっこり微笑むと、お茶碗をキッチンに片付けた。
花井 『あず、ワイン飲めるか?』
キッチンから一沙が話しかける。
あず 『ううん、私はお水でいい』
一沙は水の入ったグラスと赤ワインの入ったグラスを手に戻ってきた。
花井 『まだ帰らなくていいだろ?少し付き合え』
あず 『うん』
一沙がテレビをつけると、ちょうど映画をやっていた。
2人でソファに並んでぼんやり映画を観ていると、
一沙の手が肩に回ってぐいっと抱き寄せられた。
腕がぴったりくっついて、あったかい。
(一沙に寄りかかりたいな。でも自分からそういうことするの恥ずかしいし・・・・)
寄り添いながらも、身体が緊張してどこかぎこちない私。
(本当はもっと甘えてみたい。甘えられたらいいのに・・・・甘えてもいいのかな?・・・・少しくらいなら、いいよね?)
ドキドキしながらも、ゆっくり、
そっと一沙の肩に頭を乗せると、一沙が頬をくっつけてきた。
一沙の温かさが伝わってきて、気持ちがいい。
静かで、やさしくて、甘い時間が流れていく。
ワインをひと口飲んだ一沙がグラスを私に差し出した。
花井 『飲むか?』
あず 『じゃあ、少し』
一沙からグラスを手渡され、口をつける。
あず 『まろやかで飲みやすいね。ありがとう』
グラスを返すと、一沙はそのままワインを口に含んだ。
花井 『今日泊まってけば』
あず 『え、でも・・・・』
花井 『着替えは置いてあるんだし、問題ないだろ?』
あず 『それはそうだけど・・・・』
(とはいえ・・・・やっぱり一緒にいたい)
あず 『・・・・そうしよっかな』
花井 『じゃ、決まりな』
一沙は私の髪にキスをすると、
さっきよりもぎゅっと肩を抱き寄せた。
花井 『あずの髪、いつもいい匂いがする。この髪型も似合ってる。俺、こういうの好きだよ』
あず 『ありがとう』
(今日はステキなことがたくさんの日だったな。そんな1日の締めくくりを一沙と過ごせるなんて幸せ)
思いがけず一緒にいられることになって、胸がときめく。
私は一沙にもたれかかったまま、うっとりと目を閉じた。
翌朝。
私は一沙の部屋から、時間をずらして出勤した。
あず 『おはようございます』
京橋 『櫻井さん、昨晩は花井さんとのデートどうでしたか?』
あず 『えっ』
京橋 『高級なレストランでお食事されたのではないですか?』
あず 『ええっ!』
(な、なんでバレてるの!?)
天王寺 『ほんまに櫻井ってアホやな』
あず 『アホって・・・・ひどいじゃないですか、天王寺さん!』
浅野 『鎌かけられて、まんまとはまった・・・・』
八千草 『昨日、一沙さんがさっさと仕事を切り上げて帰って行ったので、もしかしてってみんなで話してたんだ』
あず 『そ、そっか・・・・』
別にみんなに隠すことでもないんだけど、やっぱり恥ずかしい。
私は笑ってごまかしながらパソコンの電源を入れた。
午後、会議の後に一沙と廊下を歩いていた。
花井 『窃盗グループの元締めには目星がついている。あとはどうやって崩していくかだ』
あず 『さっきの会議でも話が出たけど・・・・』
?? 『花井』
振り向くと上層部の人が立っていた。
花井 『お疲れさまです』
私は一沙と共に一礼した。
上層部 『ちょっと話があるんだ。いいか』
花井 『はい』
一沙は私に"先に行ってろ"と目で合図をすると、
上層部の人と行ってしまった。
階段を上がっていると、上から天王寺さんが下りてきた。
天王寺 『あ、櫻井。一沙どこに行ったか知らん?』
あず 『今さっき上層部の人に呼ばれて、どこか行っちゃいましたけど』
天王寺 『ボスが探してるんや。一緒に探してくれ』
あず 『は、はい』
天王寺さんと一沙を探していると、会議室から話し声が聞こえた。
少し開いているドアから中を覗くと、
一沙と上層部の人が話をしていた。
上層部 『それでだ。お前に紹介したい人がいる』
花井 『紹介・・・・とおっしゃいますと』
上層部 『率直に言えば、見合いだ』
(お、お見合い・・・・?)
天王寺 『マジかよ・・・・』
(そんなお見合いだなんて・・・・一沙、どうするつもりだろう・・・・)
私の胸は一気にざわめき始めた。