ある日突然、前触れもなく「三浦大知」のバックダンサーに抜擢される。
全くの素人が、拾われる形で ◯月◯日の音楽イベントに一緒に出させてもらえる事になったのだ。
その日までに指定された曲を 完璧に踊れるようになっていないといけない という事で、本人やダンサーの人達が使っているスタジオを借りて練習をしようと、高層ビルの最上階にあるスタジオにやってきた。
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スタジオに入り鏡の前に立ち、一つ一つの動きを確認しながら動いてみる…が、ここ数日間 練習をサボってしまっていたツケが回り、やはり所々の動きを忘れてしまっていた。
イベントまで残り一週間と時間は迫っている
自業自得ではあるのだが『これじゃマズイ』と焦っていると、扉が開き、大知君や他のダンサー達も練習の為にスタジオに入ってきた
『みんな集まったんなら一回合わせてみよう』と大地君に言われて『踊れないのがバレてしまうと』とてつもなく焦る。
すると、『今日はいいよ』という声がダンサーの人達の中から上がり皆んなの意見がまとまない。
大地君は更に『イベントまで毎日集まって練習しよう』と提案したが 周りの人達は『当日でいいだろう』と言い、帰ってしまった。
みんなが去っていく姿を見つめる大地君の後ろ姿を見るのは辛かったが、あと一週間で全て完璧に踊れるか不安だった自分は、踊れなくなってる事がバレなくて良かった…と少し胸を撫で下ろした。
スタジオを出て、同じビルの上層階に友人のオフィスがあるというので、顔を出しに行く
友人のオフィスの扉を開けると細長い廊下の先に、沢山の本や地球儀や地図や双眼鏡や色々な物が並べられているウッド調のこじんまりとした部屋が広がる。
その部屋の中にもう一人、カリスマヒーラーのYさんも居て、友人と話をしながらテーブルを囲って何かをしている。
友人が、私がいつも身に付けているパワーストーンのブレスレットを指し『ちょっと見せてほしい』と言ってきたので、『いいよ』とブレスレットを腕から外しテーブルの上に置いた。
友人は 何やら丸いルーペの様な物を取り出し、それで一つずつ石を映していった。
すると、ルーペのガラス部分に、黒い数字と小さな文字のようなものが次々と浮かび 映し出されていく…。
『これは…もしや石の数値を測っているの?!』と若干興奮して聞くと、Yさんが『そうですね』と答えた。
5.6.0.19...と石と数字がコロコロと変わっていく中で、一際高い数値を出す石があり、友人が『これはっ!!!』と興奮している。
それはブレスレットの中でも一番大きな『特別な石』と、以前にYさんがブレスレットを作ってくれた際に入れてくれた石だった。
友人はその石をルーペで覗き込んだまま、しばらくすると その石をカツーンと指で叩いた
すると、黒い石がオレンジ色のようにジンワリ変色しテーブルが『ブーン』と振動した。(携帯のバイブのような感じ)
友人は興奮しながら別のテーブルに移動して、何かを一心に書き始めた。
私もその石を見つめて『こんな色になるんだ』と呟きながらホクホクした気持ちになった
すると隣にいた Yさんが、ルーペを手に取り テーブルの上に置いてあるブレスレットを、一周・二週・三週と驚くべき速さでグルグルと計測し始める。
ルーペから残像のような光と軽い火花が飛んで、『はい、これがこのブレスレット自体の数値ですよ』とサッとルーペを差し出した。
そこには小さな文字の羅列と『415』と数字が映し出されていた。
「これが高いのか低いのか分からないな…」と思っていたら、すかさずYさんが『私が持ってるやつが大体510位ですかね』と言ったので、この数値がかなり高い事が分かり、有難やと思う気持ちと共に なんかとっても嬉しかった。
それから、席に座って友人の作業が終わるのを待つ。
その間に Yさんにブレスレットの事で聞きたい事を聞いてみることにした。
『あの……ブレスレットの2本目を持つタイミングって…』と言うと『オーダーですか?』とかぶり気味に返事が来る。
『実は、ここ二週間位前から 突然2本目が欲しいって思うようになって、それまで全くそんなことは考えてなかったんですけど』と言うと『あ、◯◯◯◯ですね、それじゃあ補足するような形で、小さな石が連なった感じの物にしましょうか』とYさんは言った。
(どうやら、石と付けてる人の間に差異が出ていて効きにくい為、石がパワーアップする為にサインを出している状態らしい)
私は今しがたブレスレットの数値を見たばかりだったから「補足って事は数値的には低い石なのかな…」とか「今のと同じような効果・効能の強いものが良いと思ってるんだけど…」と 口に出さずに考えていた…。
Yさんが私の前に座って小さな箱の中に入っている石を見せて『これなんてどうですか?』と言った。
中に入っていたのは、小さな四角いキューブキャンディーみたいな 水色とエメラルドグリーンの綺麗な可愛らしい石だった。
『 これは「こうなりたい」って部分を、願いを届けるような形で引き伸ばしてくれる石なんですよ、何になりたいか、何をどうしたいか、実は…ってコッソリ耳打ちするような部分を伸ばす。そんな石ですね 』
それを聞いて、『ん〜…』と方向性が定まっていない私は、Yさんに答え合わせをしてもらうような感じで『 ◯◯ですかね? それとも◯◯とか…』と顔色を伺いながら、それとなく呟いてみる。
『いや それは僕に聞かれても分かりませんね』と至極当然な答えが返ってくるも、耳打ちしようと近づいて『◯◯?』ともう一度言うと、『僕が聞いてもどうにもなりませんよ、それは自分で決めて、こちら(石)に言わないと』と返答された。
その時、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴って Yさんが『あ、来ましたね』と言いドアに向かった。
Yさんが玄関のドアを開けると、14〜16歳位の鼻に傷のある少年が入ってきた。
少年は中を見回しながら、迷いなく進んで来て部屋の中央で立ち止まった。
すると、今まで居たはずの友人やYさんは居なくなり部屋の内装も普通の2DKのマンションの一室へと様変わりしていた。
玄関から伸びた狭い廊下の隅に置かれた小さいターブルと椅子に40代の女性が2人対面で座って話をしている。
少年にそっと声をかけると、突然少年の向かいの壁から火の手が上がった。
『なにしたの?!』と少年に声をかけると少年は下を向いてブツブツと『どうせまた一ヶ月は酒に溺れて、泣いて、抜け殻になって、ロクでもないんだ……。
だったらもう全部終わらせてやる…』と呟いていた。
それは玄関に座っている女性を指しているようで、片方の女性はこの少年の母親のようだった。
突然玄関ドアが「バァン!!」と勢いよく開いて、学校の先生と思われる女性と、少年の家族らしき女の子が入って来た。
彼女達は部屋の中の様子を見て慌てるも、一呼吸置いてから『急いでここを出るのよ!!』と少年の背中を叩いて外へ出るように促した。
私はこの後この少年と少女が身一つで外に飛び出すのが不憫に思い、部屋に置いてあった少女のリュックの中に2人分の洋服や下着を詰められるだけ詰めて、少女に持たせた。
先生と少女はそのまま外に飛び出していき、私も後を追おうとしたが、火の広がりにまだ少しの余裕を感じて家の中にある物を急いでリュックに押し込んで、少年を促し玄関へ向かった。
玄関から廊下は火で燃え盛って炎がユラユラと揺れている。
『一気に行くよ!』と言い火に向かって走った。
2人の女性の横を通る時チラリと横目で見ると、1人は火に巻かれ、もう1人は手首から血を流してすでに死んでいるようだった。
勢いよく外へ飛び出すと、向かいの家や隣人さん、同フロアの住人達が『え?! 火事?!』『どこで?! ここで?!』『おかーさん!この階で火事だよ!』と慌ててる人や、状況を把握できてない人やらで溢れていた。
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その人達を横目に、エレベーターで逃げようとしたが、すぐ横にあった非常階段で私と少年は下へと逃げた。
一階まで降りてると、景色が……変わる。
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赤茶けた土の広がる文明の止まった地…そんな印象を受けるのは、乾いた風と建物を覆う緑と空には大きな鳥が羽ばたいているからか。
辺りの建物は草や葉っぱがお生い茂りコンクリートを包み隠し、時折見えるコンクリートには亀裂が走り所々崩れ落ちている。
まるで廃墟のような…。
夕暮れ時の空は赤く染まっていて、子供達の笑い声や遊んでいる元気な声が響き渡っている。
建物はカタカナのコを描くように一つ繋ぎで建てられていて、中央が大きな空き地になっている、そこにアフリカ部族の子供達が(基本腰巻だけで腰にジャラジャラと飾りをつけている)そこそこな大きさのフリスビーみたいな形の石を投げて遊んでいる…。
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ここはどこだ…と思いながらも、少年を連れてマンションの正面玄関に向かおうとするが、異次元に居る気がしてならない。
アフリカ部族の子供達は私達の姿にクスクスと笑いながらも興味を持ち、ヒソヒソ話しながら後をついて来る。
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その中の一人、フリスビーの石を持っているリーダー的な子供が、イタズラするかのように私達に向かってその石を投げてきた。
しかし、その石は私達に当たることなく、勢いよく地面を滑っていき、石が向かったその先は、シルクハット姿のフランス紳士達が闊歩し、馬車が走る またどこか違う時空間の場所だった。