期間限定で秘仏の観音様が東京にくるという事で、観音菩薩様に会いに行く。
展示コーナーでは列にならなければいけないらしく、皆一列になって中々の長さまで伸びた列に並んでいる。
どうやら参拝出来る形式になっているようで、みな観音様の前に上がってしっかりと手を合わせている。
そしてその後に隅々まで眺めている。
もうすぐ私の番だ。
人越しに拝見できるお姿がとても美しくて、早く私も近くでお目にかかりたいという気持ちが強まる。
それからしばらく待ち、私の番になった…。
観音様の前に行き、小さな一人分の畳の座布団の上に座り顔を上げる…と。
ザザッザーー!!とまるでシャッターが下りるように 簾のような仕切りが上から垂れ下がり、観音様のお姿が隠れてしまい、代わりに頭の中に声が流れてきた…。
(声)
『地元周辺を統治していた最古の龍神様が祀られていた場所にいくといい 』
『目には見えなくても。聞こえなくても、その場所(部屋)の中にたくさんの低級霊がいて、本人が気づいていなくても、触れられれば、気は下がる。
その姿見れていれば、ここにはずっとは居られないはずじゃ
聞こえていれば、ずっと聞いてるうちに気がおかしくなってくるはずじゃ』
『見えていなくても、聞こえていなくても、やはり近くで囁かれ続けていれば、影響が出ていて貴方の調子も悪くなってきている。』
仕切りで観音様がお隠れになった部屋の中には、半透明の人が何処からともなく沢山現れて部屋の中を彷徨いている。
幽霊どうしてぶつかってビックリしてたり、床から半分だけ体が出てたり、隅から隅を行ったり来たりしていたり、でもみんな表情は無機質な顔をしている。
あぁ、もしや今の自分の部屋はこんな感じなのか、こんな所に居るようなものなのか。
嫌だわ…と素直に思った。
(声)
『では何故そうなってるかは、不動産屋達が龍神様に挨拶をせずその土地にさまざまな建物を建てていったからだ。
昔のことすぎて今の不動産屋達はその存在すら知らないだろう、だからここもそうやって建てられた。
これを収めてもらうには、あなたが不動産屋達の代わりも兼ねて、その場所に行きなさい
そして、ことを話しなさい。
そうすれば収まる。』
そう言って声は止んだ。
私は座ったまま顔を上げた。
次に頭の中に映像が流れてくる。
木漏れ日の光がいくつも差し込む、小高い山の一部のような場所。足元の土は雑草と苔が入り混じり濃い緑色をしていて、土と水と緑の濃い香りが清々しく、ヒラヒラと白い蝶が舞う。
周囲を取り囲むように木々が生え、まるで気付かれぬように目隠しされているかのようなこの場所に、ひっそりと小さな石の祠が建っている。
「あ、きっとここだ…」 と思った。
この場所へ行って、ここにおられる龍神さまにご挨拶しなければと思った。
場所は、近いような遠いような、見たことあるような無いような…。
まるでジブリの世界のようなこの場所に行かねばな…と、ゆっくりと目を開ける。
立ち上がり、その場を去り、次の人が座る頃に振り返ると、仕切りは取っ払われていて、キラキラと輝く観音様が来た人を優しいお顔で迎えていた。