古い時代、まだ髷を結っている頃。
小さな村にある家の中、殺風景な板の間で『お見送りの儀(今でいうお葬式)』が執り行われている。
儀式を進行している男が一人、向かいに関係者と思われる男が二人と女が一人、座って静かにその流れを見守っている。
儀式は静かに進み、一通りの流れが終わると 最後の工程に移っていく。
左にわさび・真ん中に粉唐辛子・右に赤い練り辛子と、真ん中に細かく刻んだ蕎麦が乗ったお皿を乗せたお膳の前に進行役の男が静かに座る。
黙って蕎麦がのっているお椀を手に取り、蕎麦を3口[わさび・唐辛子・練り辛子]それぞれをつけて食べた。
食べ終わり、箸を置くと、参列者の方へと振り返り、男の人はこう言った。
『◯◯の儀、滞りなく終了致しました。あとは皆さまのお心からの経を…、それが無ければ、彼方で「辛い辛い」と喉が渇いて苦しみもがく事でしょう……』
と、皆からの供養を促した。
この時代 この場所では、それに見合ったお見送りの儀式があるらしく、今目の前で行われていたのは、自ら死を選んだ者への「お見送りの儀」であった。
ほんの少しの間、静まり返ったあと、その場にいる三人はスッと胸の真ん中で手を合わせ、目をつぶり経を唱えました。
自殺に対しての罰と、周りの皆からの慈悲による救済。
彼方でどう過ごすかの沙汰を先にこちらで再現して決めてしまい、そのまま救ってしまおうって事のように感じて、[ いい事ばかりではなく、経をもらえない場合もあるのだろう…全てはどう人と関わり生きたのか…なのだろうな…]と思いながら、その光景を見つめていた。



