好きなところは・・・ | 「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  

「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  

かけがえのない大切な時の流れ・・・
心の窓を開いて望む一瞬の風景を、優しい言の葉で綴ります。



カレンダーをめくれば、そこに描かれる風景は美しい桜色。時、まさに春です 桜 桜

お花見を楽しみに待ちわびながらも、瞳閉じ逝かれる方も多いことでしょう。

大震災後の状況を伝えるテレビでは、身元が確認されたご遺体を火葬や土葬で

お見送りをされているとのこと。満足なご葬儀もできないままだろうと思えば

「こうして皆さんに見送っていただけることが、どんなに幸せだろうか・・・。」と

謝辞の際に言葉を添えられるご遺族も、少なくありません。

80代半ばのおじいちゃまを見送るご葬儀。お孫さん3人がそれぞれの思いを手紙に綴って

語りかけられました。20代前半の男性は、幼い頃に一緒に釣りに連れて行ってもらったことが

いちばんの思い出で、じいちゃんの楽しそうな笑顔が大好きだったと涙をこらえながら

お話しなさいました。そして、結婚して父親となり、ひ孫の顔を見せてやれたのが

じいちゃん孝行だったかな?これからも俺たち親子を見守ってくださいと・・・。

高校生の女の子も、しゃくりあげながらおじいちゃんとの思い出を語り、ご親族の多くが

もらい泣きをしていらっしゃいました。そして三番目にマイクの前に立ったのは

中学生らしき女の子でした。必死で泣くのを我慢している様子が伝わってくる中、彼女は

話し始めました。「私は、おじいちゃんの好きなところを3つ言います。一つ目は・・・」


「おじいちゃんの手。大きくてゴツゴツしてて、小さい頃はおじいちゃんがその手で顔を

触ってくるとザラザラして痛かったけど、入院してから時々お見舞いに行って

手を握ると、ちょっと小さくなった気がした。でもあったかくて気持ちよかった・・・。

二つ目は、おじいちゃんのひざ。おじいちゃんちに遊びに行った時はかならず

胡坐をかいてるおじいちゃんのひざの上に座るのが、私の決まり!そのまま寝てしまうことも

多かったよね。そして三つ目は、おじいちゃんの頭だよ。いつの間にか髪が抜けてしまって

ツルツルになった頭を、私がヨシヨシと撫でると、おじいちゃんは大笑いしてた。

おじいちゃんとの思い出は、決して忘れません。おじいちゃん、ありがとうね。」


ご遺影に向かって語られたお孫さんからの言葉を、おじいちゃんは笑顔で嬉しそうに

聞いていらっしゃいました。ご生前の、祖父と孫の仲むつまじい姿が目の前に浮かびます。

大好きな人の、さらに好きな部分をこんな風に表現するのも、素敵な感性だなと思いました。

笑顔と涙が混じり合う場面を見ていて、浮かんだフレーズは、「人は、待ちわびる笑顔の中に

泣き叫ぶ産声を以て生まれ、惜別の涙に包まれる中に笑顔を残して逝く」・・・

そんな思いを込めて、わずかな言葉を添えました。

ご出棺を見送り、戻ろうとする私に、声をかけてくださる方がありました。

「故人の弟です。とてもいい言葉で送ってもらいました。ありがとう。」

供花の名札に、「総合葬祭〇〇」と書かれたものがあり、ご親族に他県で葬儀社を

経営しておられる方がおいでだと聞いていましたが、どうもこの弟さんだったようです。

同業者の目や耳に適ったとすれば、なによりでございます(^^;)書いた原稿をもらえないかと

おっしゃいましたが、いやいやそれはもう、自分でも解読不明の殴り書きですから

人目に触れさせることなぞできませぬ(汗) 丁重にお断りして、その場をそそくさと

立ち去る司会者なのでした(笑)


おじいちゃん、ちらほらと咲いた桜の花を見ることができて、良かったですね。

満開のお花見は、どうぞ空の上からご一緒に・・・・。




「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  



(オマケ)


一昨日の夜は、昔ながらの町屋をそのまま再現した観光スポットで、弦楽器の一つである

ウッドベースのチャリティーソロコンサートに出かけました。土間の通路を挟んで

ほんの目の前という至近距離で、ナマの演奏を聞ける機会なんて、そうありませんよね。

暖房設備もないところで、ち~と寒くはあったのですが、聞き覚えのあるクラシックから

ジャズナンバーやオリジナル曲に至るまで、心にずんと響く音色に包まれて、心地よい

ひとときを過ごしました。奏者の指の微妙な動きで、弦からいろいろなメロディーが流れてくる

楽器と人とが一体になったかのような迫力も、間近で見られてとても感動的な経験でしたよ♪