怒りの矛先 | 「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  

「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  

かけがえのない大切な時の流れ・・・
心の窓を開いて望む一瞬の風景を、優しい言の葉で綴ります。



木々の枝先に膨らみ始めた桜のつぼみたち。私たちの生活を春の色に染めて

明日への希望に包み込んでくれる日も間近です。

遠く離れた地震の被災地で、辛い避難生活を送っておられる皆さんにも

どうか一日も早く、咲く花を愛でて笑顔になれるひとときが訪れますように・・・。


「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  




ご葬儀を施行するにあたっては、各葬儀社によって、規模や希望に合わせたプランがあったり

必要な項目を一つ一つ丁寧に説明確認を行い、整った見積りに応じた内容で、お見送りの儀式を

進めさせていただくことになります。葬儀司会に関しては、すでに式典費用の中に組み込まれている

場合もあれば、一方では規模や予算の関係で、プロの司会者を入れるか入れないかを選択できる

オプション項目になっていることもあるでしょう。

結婚式やお葬式の司会は、一昔前は友人や身内の人間がやることも多かったはずです。

もはや大昔となった(笑)私たち夫婦の結婚式も、地元の友人がマイクを握ってくれた記憶があります。

自宅で行われていたお葬式では、特に司会進行もなく、お寺様の指示か葬儀社屋さんが誘導して

それほど問題もなく、執り行われていたような気がします。時代と共にいずれも、儀式に豪華さや重厚さが

好まれるようになるにつれて専門式場へ移行し、それに伴って、知識と経験を積んだ専門職として

司会者のニーズが増えたとも思われます。さらに女性司会者の増加も、ここ数年の傾向だと思います。

最近は「家族葬」という、少しばかり誤解も含んだ表現が一人歩きをしてしまい、また人間関係が

希薄になりつつあることも影響しているのか、本来は親族で気兼ねなく過ごすはずの御通夜が

大勢の弔問客に溢れ、最期のお見送りの場であるはずのご葬儀への参列が激減すると言う現象も

ごく当たり前のようになってきました。そこで、通夜・葬儀共に進行役として、司会者が入る場合が

ほとんどです。全国各地で活躍している同業の友人達も、2日間にわたり、ご遺族と関わりながら

さまざまな思いを言霊にして、お手伝いに力を尽くしていることでしょう。

私が勤務しているところは、原則としてご葬儀のみ専門の司会者が入り、通夜司会は施行担当者が

進行を務めます。ですから、司会料はオプションです。もちろん社葬や大規模葬の場合、また時には

ご遺族の希望で、通夜からプロの依頼が入るときもありますよ。数年前まで所属していた事務所では

両日の司会が通常勤務でしたし、私自身もまたご遺族にとっても、2日間をご一緒させていただくことで

より親密度も深くなりますし、雰囲気もつかめるので対応がしやすいというメリットがありました。

現在は、ご葬儀のほぼ1時間ほど前に、ご遺族と初対面での打ち合わせですから、実際は

ゆっくりお話を伺える余裕を作るのもなかなか困難で、担当者から聞く事前情報だけが頼りですが

やはり直接お会いしてみると、印象が異なることも少なくありません。わずかな時間で、式進行に

関する確認事項と、合わせてナレーションのための取材を行うわけですから、より簡潔にかつ

わかりやすく答えやすい質問で、言葉を引き出す工夫も必要です。

(そんなところから、近々心理学の勉強も始めたいと思っているのですが・・・。)



前置きが長くなりましたが、実は数日前のご葬儀の際に、喪主の方とのあるトラブルが起きて

しまいました。・・・というか、一方的に怒られたという方が正しいのですが^^;

50代後半の奥様を亡くされたご主人が喪主を務められる、ご葬儀の司会に出向きました。

担当は、まだ20代の若くて可愛らしい女性スタッフです。打ち合わせに入る前に彼女からは

喪主の方が昨年末にお父様を亡くされており、続けざまに大切なご家族を見送ることになり

少しナーバスになっていらっしゃること、ナレーションの取材なども難しいだろうということなどを聞き

それならば必要最低限のことだけを確認する程度にしておこうと話した上で、喪主のもとへ・・・。

式場の遺族席にお座りいただきご挨拶をして、私はいつものように式の流れなどについて説明を

始めました。故人のお名前・喪主のお名前・導師を務められるお寺様の正式名称、開式してからの

動きやご弔辞の有無など・・・・すると突然、喪主が私を睨みつけるようにして一言「もういいよ!」と

強い口調で吐き捨てるようにおっしゃいました。私も、傍で聞いていた女性担当者もビクッとして絶句。

「そんなん、もういいって!昨日の通夜は〇〇さん(女性担当者)がいろいろ世話してくれたやん。

 あんたでいいんよ。あんたが一生懸命してくれよるんやから、(司会は)頼んでもおらんのに

 そんな大げさにせんでもよか。〇〇さんがしてくれればいいとよ。」

「いえ、これは・・・」と言葉をはさむ間もなく、喪主は女性担当者に全てを頼んだと言う意味なのか

彼女の肩をたたき握手をして、そのまま席を立ち、式場の外へと出て行ってしまわれたのです。

きっと昨晩、いえこの会館にお着きになってからずっと、親身にお世話をしていた女性担当者を

心から信頼してのことだろうとも思いました。ご葬儀当日の直前になって、一面識もない人間が

急に出てきていろいろ話し出すことに不快感を持たれても、仕方がないことかも知れません。

もちろん、見積りの段階で司会が入ることはご承知だったはずですが、慌しい中での打ち合わせで

十分な理解が得られてないことも、実際には多いに違いありません。司会ブースで女性担当者と

二人、さてどうするかを検討しました。私は、「喪主があれだけ〇〇さんを信頼しておっしゃって

くださっているのですから、あなたがマイクを握られた方がいいと思いますよ。私は傍でフォローします。」

弔電のお名前確認やご挨拶など、まだまだたくさんやることはあるんですが、この後、私が喪主の方と

お話しするのは困難だろうと思いましたし、彼女はまだそれほど司会進行の経験が多くはないので

お寺様との打ち合わせは私が行い、進行に合わせてアナウンスのタイミングを教えていこうと

考えたのです。彼女の優しい声(若くて!)がお気に入りの喪主ですもの。それなのに、私があえて

やるわけにもいきますまい(^^;)

ところが・・・です。他のスタッフにも話を聞いてみると、どうも前夜の通夜司会は、彼女ではなく

男性支配人だったらしい。はい?どういうことかな???今回の導師をお勤めになるお寺様は

「合掌礼拝」などのマイクアナウンスは不要で、初めと終わりの案内だけを入れるんですね。

・・・で、焼香の際の誘導を女性スタッフが担っていたわけです。つまり、喪主の視界の中でこまめに

お世話をしている彼女の姿に、安心しきっておられたようです。

その後、少し時間を置いて、喪主と残りの打ち合わせを済ませてきた担当者からは、先ほどの

大人気ない態度を詫びられ、二人で進行させていただくことを了承してもらったとの報告があり

山ほどの弔電をお預かりして、いつものように私がマイクを握ることとなったのでした。

開式直前に遺族席へ出向き、一言だけ「よろしくお願いします。」とお声をかけさせていただくと

「さっきはすいませんでした。気が立っていて・・・。悪気はなかったとやけど・・・。」と、和解成立?!

無事にご出棺を見送り、女性担当者と私は顔を見合わせて苦笑いしながら、胸を撫で下ろしました。

彼女が喪主を説得しようと涙をぽろぽろとこぼす様子に、不覚にももらい泣きしてしまった私は

身体はデカクとも態度は決してデカクないはずなのに(笑)、やっぱりご遺族との対面の際には

もっと物腰柔らかくしなければならんのだ!と、深く反省をするのでありました(トホホ・・・汗)


この喪主の方の言動は、怒りと言うより疲れの塊であったような気もします。

ご危篤の状態から、寝ずの看病をなさり、ご臨終から慌しく通夜・葬儀へと流れていく数日間で

慣れないことばかりに翻弄されるわけですから、無理もないことだと理解できます。
非日常空間で起こるさまざまなトラブル(矛)に対して、私たちスタッフは柔軟に受けとめ(楯)

悔いのないお見送りのお手伝いができるように、心がけたいものです。



帰宅後、夕食の際にその日の顛末をダンナに話しました。(実はこの喪主がウチの亭主と同い年でした)

すると、「へええ、まあいろんな人がおるしな~。なんで見ず知らずの人間に・・って警戒する人もおれば

ほんの短い時間に話しただけで、あんな風に紹介してもらえて嬉しかったって思う人もおるやろ。

今日みたいな感じの人が多いわけでもないし、まあいい経験やったと思えばよかろうもん。」

おや?いつもはなんだかんだとヘリクツ気味の説教が多いのに、めずらしく慰めてくれるじゃないよ。

じゃあ、お言葉に甘えて一言だけ毒を吐かせてもらいます!!


「もう、50代のオヤジって、ホント・・めんどくさっ!! (#`ε´#) 」