笑顔 | 「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  

「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽  

かけがえのない大切な時の流れ・・・
心の窓を開いて望む一瞬の風景を、優しい言の葉で綴ります。




昨晩、テレビ番組でお葬式に関する内容が放映されていましたね。

ご覧になった方も多いかと思います。タモリさんが司会進行を務める

「エチカの鏡」でしたっけ。

「ご主人が亡くなったときに、あなたがしなければならない25項目」を

葬儀コンサルタントの女性が、理由なども付け加えながら説明を

しておられました。画面の隅に、「宗派や地域によっても異なります。」と

小さなテロップが出ておりましたけど、確かに日本全国同一では

ありませんから、参考までにメモっておいてもよさそうな内容でした。

臨終の瞬間から、悲しむ暇もないほど次々に決めていかなければ

ならないことが押し寄せるのは事実です。昔に比べると、朝刊などに

葬儀社の広告がたくさん入っていますし、実際に事前相談に

お見えになる方も増えているようです。大切な家族を見送った経験の

ある方の約7割が、後々葬儀に不満を感じたという調査結果も

あると聞きますが、それは見方を変えればあまりにも知らないことが

多すぎて、判断を誤り、冷静になった時に気づく後悔でもあると

思うのです。式後に届く清算書の金額に驚くことも多いと言われますが

少なくとも、葬儀担当者はご遺族の了解のもとに話を進めていくわけ

ですから、理解できないままに承諾していることもあるはずです。

物品一つ一つから選ぶのが大変だからと、さまざまな葬儀プランも

用意されていますが、ランク別の違いもよくわからないままに

決めてしまわざるを得ないのが現状です。結婚式とか、新車の購入とか

そういった高額な支出を伴うものには、事前にたくさんの知識や情報を

取り寄せたりするわけですから、ほぼ同じくらいの費用が

そこ数日のうちに吹っ飛んでしまうご葬儀についても、日頃から

ある程度の情報を仕入れておくにこしたことはないと、現場の人間からは

ほんのかる~いアドバイスでございます(^^)v




「あら、おばあちゃん・・・笑っていらっしゃる!!」

先日担当させていただいたご葬儀は、90代後半のおばあちゃま。

式場に入り、まずは祭壇に向かってお参りをし、そしてご遺影に

「初めてお目にかかりますが、よろしくお願いします。」とご挨拶をします。

お柩の小窓からお顔を拝見しますと、本当に笑っておられるような

目元口元に微笑みが感じられるのです。

いつも思うのですが、高齢の女性の肌のきれいなこと!!

艶やかで張りがあり、湯灌スタッフが薄化粧を施してはいますが

肌そのものが美しいので、化粧をしているのがわからないくらいに

自然な感じで、ご親族や会葬者の皆さんも拝顔の際に

「まあ、きれいな顔やね~。」と声をあげられる場合も少なくありません。

故人が90代後半ですから、喪主を務められるご長男をはじめ

お子さん方も6~70代の方々です。お孫さんやひ孫さんもたくさん

いらっしゃり、式場のご近所にお住まいのようでしたが

大きな立て看板を出すこともなく、近親者だけでお見送りを

なさるようでした。弔辞・弔電・謝辞もなく、宗派の読経が

静かに流れ、ご導師が退席された後、閉式につなげるように

少しだけ言葉を添えました。


おばあちゃまがお柩の中で微笑んでいらっしゃるご様子は、きっと

これまでの長いご生涯には、さまざまなご苦労がおありながら

晩年はご家族と共に幸せな日々を過ごされた証のように思えること。

ご家族は、おばあちゃまの笑顔を心の支えにそれぞれの人生を

大切に歩んでいくことを誓われること。

ある一人のご婦人が、私が発する言葉に合わせるように

頷いておられるお姿がありました。閉式後、お柩の蓋を開けて

お別れの献花をしていただく際に、その女性が私の横に近づいてこられ


「母とのお別れの場に、とてもいい言葉を添えていただきました。

 ありがとうございました。」

と、おばあちゃまによく似た笑顔で声をかけてくださいました。

故人のご長女さまでした。お孫さまたちも


「あ、ほんとだ。おばあちゃん、笑っとるねえ~~。」

泣き笑いしながら、お花を手向けていらっしゃいました。

小柄で、いつもニコニコ優しい笑顔のおばあちゃまに

可愛がられて成長されたであろうお孫さまにとって

命の灯消える時に、こうして笑顔で逝くことの尊さを

教えてくださるおばあちゃまの存在は、どんなに大きいものでしょう。

度重なる戦争の悲劇を乗り越え、平和を求めつつも劇的に変化する

社会情勢の真っ只中で、子育てを含めた家庭生活を積み重ね

晩年をご家族に囲まれて過ごし、感謝の涙に包まれて

ご生涯を閉じ逝かれるおばあちゃま。

最期に、ほんとうに優しい笑顔を残してくださいましたね。


人は、命の誕生を笑顔で待ちわびる中に、泣きながら生まれ

命の終わりを涙で送る中に微笑みながら逝くことができれば

これ以上の幸せはないと思いませんか?


「窓辺の風景」 ・・・喜・想・哀・楽