其の壱~vol.64 映画『ブレイブ -群青戦記-』本広克行監督インタビュー | Koharu日記

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本広克行監督が話してくれる

春馬くんと真剣佑くん
…可愛らしい
…微笑ましい

春馬くんの
作品に対する向き合い方
…やっぱり凄いや

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vol.64 映画『ブレイブ -群青戦記-』本広克行監督インタビュー


笠原真樹による人気コミック「群青戦記」を『踊る大捜査線』シリーズの本広克行監督が実写映画化。ある日突然、校舎ごと戦国時代にタイムスリップしてしまったスポーツ名門校の生徒達が、松平元康(のちの徳川家康)と手を組み、織田信長の軍勢と戦うバトルアクションが完成。単独主演初となる新田真剣佑を筆頭に、山崎紘菜、鈴木伸之、渡邉圭祐、三浦春馬、松山ケンイチ他、新旧の武器を用いて知力体力を使い果たし、仲間を救うために命を懸ける『ブレイブ -群青戦記-』。

今回は、大掛かりな現場で皆をまとめた本広克行監督に、長年の映画作りへの思いや、未来を担う若者達への思いを伺いました。


ーー登場人物が多いのに、それぞれの見せ場が作られていて監督の手腕にさすがと思いながらも、俳優陣も演じ甲斐があるのではと思いました。

監督:それぞれの俳優に“見せ場”があると感じるのは、役者たちの力だと思います。そんなに濃く描いていない場面でも自分たちの力を出している。例えばフェンシング部と空手部の2人、そこまでドラマは無いんですけど「お前らのどちらかが死ぬんだから、ちゃんと死ぬ時の看取り方とか言葉のかけ方とか全部、伏線を張っておくように」と伝えていたんです。彼らはお互いにリレーしながらその伏線を回収していく、そこも良かった。
それに僕が今まで一緒にやって来た仲間たちを呼んでいるんです。2019年に北海道テレビ放送でやっていた『チャンネルはそのまま!』のメンバーとか、彼らは僕のやり方を理解しているので“どうしてくるかな”と作戦を立てながらやって来ていました。
最近は家を解放して、スタッフやキャストを集めたりしているんです。皆が話せる場所を作って、そこで色々な演技プランを語り合っている人たちが居たり、演出部は「もっといいアイデアを役者たちに与えられるように」と言って脚本には書いていない【花をピッと差し出すシーン】(劇中で採用)を考えたり、皆が慣れていないので演出部がリハーサルをやってあげたりもしていました。


実は30年やって来ましたが【キスシーン】を撮ったのは、今回が始めてなんです。『踊る大捜査線』シリーズでも一回もやったことがありません。死んでいく人に対してキスして終わる、そんな凄く切ないキスなんで「初キスシーンです」と現場の皆に言ったら凄く盛り上がりました(笑)
「いいシーンに仕上げてね」と伝えたら「どうしますか、監督」と聞かれたので「岩井俊二さんみたいな、岩井映画みたいなキスシーンにしてよ」と言うと、全員が「岩井さんのどのシーンだ?」みたいになって(笑)
「ほら、逆光になる」とか伝えたら照明部が一生懸命に逆光を入れてくれて、そうやって一致団結していく感じになって、いいキスシーンを撮ることが出来ました。
その後にアドリブで瀬野遥役の(山崎)紘菜が泣き崩れる女の子をはがしたんです。あのシーンは彼女のアドリブなんです。僕はカットをかけられなくて“いいシーンだな、僕が役者たちに求めているものがちゃんと出ている”とそれを見ながら思いました。何でもないところでスタッフは感動するんです。


ーー脚本通りではなく、役者の皆さんに考えてもらうスタイルだったのですね。

監督:そうですね。脚本という与えられたものだけでなく、“更に良くしよう”という気持ちからいいものがいっぱい撮れました。
モニターを観ていてカットと言ってから、良いのか?悪いのか?判断がわからない時は後ろに居るスタッフを見るんです。すると女性スタッフが泣いていたりする。それを見て“これはOKだ”と思ったりもしました(笑)そういう作り方でしたね。


ーーこの映画を観ていて本広監督がやりたいことは、役者やスタッフ、若者たちを育てていくことなんじゃないか、と感じてました。

監督:映画の裏テーマというか、僕のテーマとしては「継承していく」なんです。スタッフも役者も継承していく。春馬君がまっけん(新田真剣佑)に剣を渡すシーンをアップで撮影していたのですが、ゾクっとしました。地球ゴージャスでも春馬君が演じていた役をまっけんが演じています。撮影時も僕らがまっけんに言うとふざけたりするんですが、春馬君が言うとまっけんはピンとなるんです(笑)
その姿を見てまっけんは“三浦春馬という役者が本当に好きなんだ”と思いました。それが継承されていく感じがあるし、想いがいっぱい詰まっていると感じていました。
そんな意味で、若い役者たちは皆“ここからスタートダッシュだ”という感じでしたね。最初この面子を見て「地味な面子だね」と色々な所から言われたりもしたんです、僕は「今から全員売れるから」と。それは『サマータイムマシン・ブルース』(公開:2005年)で経験しているから“絶対にいけるでしょう”と思っています。本当に皆が良かったです。


ーー三浦春馬さんがいざ戦うという瞬間に両手を広げられますが、舞台経験がある三浦春馬さんならではの魅せる殺陣のように感じました。あれはご本人のアイデアだったのですか。

監督:あのシーンの動きは彼のアイデアです。「かかって来い」と言うシーン、カッコいいですよね。
一応、殺陣はアクション監督の奥住さんが付けて下さっているのですが、春馬君もかなり意見を言っていました。僕は編集し終わった後にこのシーンにどんな曲をかけようか考えて『アベンジャーズ』をかけたら「カッコいい!ヤバい、この曲を超えられない!」と言うくらいめっちゃ合っていました(笑)そしたらそれがテーマ曲になって、「ブレイブ」とタイトルが出て来て、そこでブレイブのテーマが流れるという感じになりました。
そう考えると映画作りって本当に面白いですよね。僕は何も考えないで現場に臨むので「いい画撮れたな、いい音楽がマッチングしたな」と後々、まるで陶芸をしているような感じなんです。


ーーそれが監督の手腕ですね。
若者たちに継承しようと思っていても、映画制作の現場で実現させるのはなかなか難しいと思います。


監督:何本かしか撮れていないのなら「ここから動くな」とガチガチに固めちゃうと思います。もっと人は考えているし、役者さんは僕よりも絶対に芝居のことを考えているはずだから、それを引き出す。僕は収穫という言い方をするのですが、収穫していったら最後はまとめていい料理にすればいい。その素材が撮れないと駄目なんです。皆が“立つ”ように、小道具でも立たせようと思います。
ポスターには出ていませんが、アメフト部で拉致される生徒役のイッチー(市川知宏)のシーンは泣けるんです。ポスターに写っていない彼らにも見せ場があるということが、彼らが良くなっていったところだと思っています。


ーー脚本にはあそこまでドラマチックに書かれていたのですか。

監督:脚本にも書かれていますが、彼らの想いが芝居に乗って来ているので良かったんじゃないかな。
イッチー(市川知宏)は『曇天に笑う』(公開:2018年)頃から一緒にやっていて「もうお前、売れないとヤバいぞ」と言っていたんです。彼はいい役者なのに何かが足りない。「他の現場だと“こうしろ、ああしろ”と言われていっぱいいっぱいなんです」と言うので「今回は思いっきり考えてみなよ」と伝えました。そしたら彼は凄く考えて来てリハーサルもあまりやらなかったんですけど、とにかく身体を低くして突っ込んで行く時の顔がまたいいんです。
弁慶の様に矢がいっぱい刺さっている方が劇的だと思います。でも、劇的ではないけれども、ちょっとした所でもキャラが立つといいなと。科学部が意外と立っていて人気ですよね(笑)


ーーそれは本広監督が色々な映画を観たり、現場での体験、そして舞台での経験が生かされているからではないですか。

監督:舞台経験はかなり大きいと思います。映画という短い時間の中でどうやって役者に役のことを考えさせるのかという部分は、舞台演出がいかされています。「こうして、こうして」とどんどん言葉を浴びせかけるんです。映像の時はあまり出来なかったんですが、今はずっと言い続けられます。人にずっとダメ出しをするという嫌な演出ですが、何度かやっていくと気持ちがいい芝居が出て来て、それをキャッチしたら正解。役者には特徴があるんです。例えば紘菜ちゃんはすぐに泣いちゃう。だから彼女には「絶対に泣くな」と「泣いたらNG」とずっと言っていました。


ーー山崎紘菜さんは映画『モンスターハンター』(日本公開:2021年)に出演されていますが、撮影は『ブレイブ -群青戦記-』の後になるのですか。モンハンの彼女の表情もまた良かったんです。

監督:『ブレイブ -群青戦記-』の方が先だと思います。彼女はこの作品『ブレイブ -群青戦記-』で一皮むけたと思います。「泣くな」と何度も何度も言ったんですけど、泣いちゃうんです。
どうしても我慢できない涙が出て来るんです。でもそれがいいんです(笑)目から一筋流れる涙は号泣よりもいいんです。これはなかなか撮れない画です。でも紘菜は「泣いちゃったんで、もう一回お願いします」と毎回言う。それに対して僕は「いいや、これでいい」と返す。泣くのを我慢して、でもどうしようもなく出て来てしまった涙が切なくて良かったです。あれも青春にありがちな涙ですよね、大人になったら人前であまり泣かないですから(笑)


ーー今後どのような作品を作っていきたいですか。そして、どんな存在になっていきたいですか。

監督:僕はお仕事を頂いて、いい作品を形にしていければと思っています。やっぱり、監督に指名されるというのはそういうことだと思うんです。“本広だったら面白いものを作ってくれる”と思ってくれているので、なるべく面白いもの、料理で例えるなら美味しいものを。シェフじゃないけどそういう気分でやった方が楽です。自分の想いで全部をやってしまうと多分精神がぶっ壊れるかなと、なるべく俯瞰して作っています。
あとは僕もそうですが、若い人たちはやっぱり撮りたいし、上に上がりたいと思っている。そういう人たちをなるべく上に上げてあげる。そうすれば映画業界も活性化すると思うんです。故郷香川県の映画祭「さぬき映画祭」のディレクターをやっていた時は色々な人と知り合いになって、皆の考え方を聞きました。それを山田洋次監督が評価して下さっていて、大林宣彦監督は「君ら世代がやっていることは、いいことだよ」と仰って下さったんです。
助監督をたくさん雇って頂いて、その分削るところは削る、だけどご飯は削らない(笑)そうすると皆、考えますよね。「やれ」と言われたことをやるのではなく、考えて作っていく。そうすれば、皆が大好きな映画になっていきます。自分の意見が通っている映画はいいですよね。真剣佑君もやりやすかったみたいです。