私の会社で、非常食を扱っている。レトルトカレーみたいなやつで、水がなくても特殊な発熱剤みたいなもので、熱々のカレーや、牛丼が食べられるものなんだけど。
今、私の会社でこの商品を大々的に売り込めという動きが出ている。本社の社長が言い出したことで、人々が不安感をいだいているこの時期に、キャンペーンを張れば、この手の商品はじゃんじゃん売れるぞ、ということのようだ。
私は、西日本にある私の会社などは、当面この手の商品の取り扱いは控えるべきだと思うし、人間としては恥ずかしいことのように思う。とりあえず非常食や、ペットボトルの水は東日本の被災地を優先することが常識だろう。
本社の社長は、親会社からの天下りで、この親会社は東京電力とも浅からぬ関連がある。どうしてこんな発想が出てくるのか。メーカーに無理を言って、商品を確保し売りさばいていくばくかの利益を得ることに、企業としてどんな価値があるというのか。
今週、会議があって方針が決まる。ちょっと昔話をさせていただくと、80年代の半ば、日本がバブルという時代に突入しつつあったころ、土地本位制という制度が始まった。あらゆる金融機関が銀行、ノンバンクを問わず融資するか否かの判断を、対象となる企業の所有する不動産に担保余力があるかどうかのみで決定するようになったのだ。
その頃の会議で、「与信判断は、決算書を分析したり、経営計画を聴取してきめるべきではないか」などど、まともなことを言う者は一人もいなかった。みんながバブルに踊り始めていた、ということもあるし、まともなことを言えば、会社から疎まれて結局損をする、という打算もあったと思う。
結果、金融機関を筆頭とする日本の企業が、バブル崩壊で被った損失はご存じの通りだ。
おそらく、私の会社の今週の会議では、反対意見を述べるものは私を含めて皆無だろう。まともなことを言って損をする体質は、私の会社のような田舎企業では、まったく改善されていない。
とてもつらいし、情けないことだが現実はそういうことなのだ、と思う。