Facebookが計画中のMusic Dashboardの意味を考えてみる
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おもしろいニュースが流れていました。GigaOMによれば、FacebookがSpotifyも含めた複数のオンライン音楽サービスを統合し、Facebook上での新しい音楽サービスを計画しているようです。
Revealed: Facebook’s music plans tap Spotify, others|GigaOM
■Facebookが計画中の新しい音楽サービスとは
GigaOMの記事で紹介されていた内容をいくつか抜粋しておきます。計画中の音楽サービスの機能としては大きく2つです。
1つ目が、フェイスブック上で音楽を再生し聴くことができる機能です。フェイスブックの右下にはチャットのアイコンが表示されていますが、ここに再生/停止ボタンが表示される。PCで音楽を聴くには、iTunesやWindows media playerなどがあるかと思いますが、フェイスブック上でも聴けるようになるのです。
2つ目が、自分たちがよく聞いている音楽や好きな曲を友達と共有できるというものです。フェイスブックのサイトの左上(ニュースフィードなどがあるところ)に「Music」が新しく追加され、それをクリックするとMusic Dashboardのページが表示されるようです。Music Dashboard上では具体的には、フェイスブックでの友達がレコメンドする曲やアルバム、友達がよく聞いている曲、あるいは今聴いている曲などが表示されます。
これらのサービスをフェイスブック単独ではなく、すでに存在している例えば音楽ストリーミング配信サービスなどのSpotifyと連携することで、フェイスブック上で実現させようとするものです。
■滞在時間の長いFacebook上で音楽が聞ける
ここからは、計画中のフェイスブックの音楽サービスの意味について考えてみます。まず、上記で1点目として言及したフェイスブック上で自分が聴きたい曲が簡単に再生できる機能ですが、これだけでも魅力的なものだと感じます。フェイスブックの滞在時間がグーグルを抜いたというニュースが以前に話題になったことがありましたが、その後もフェイスブックの滞在時間は増加しているようです。滞在時間の長いサイト上で自分の好きな音楽が簡単に聞けるような仕組みが追加されるのです。
引用:Trend in Share (%) of Time Spent for Top 5 U.S. Web Properties|comScore
■Facebook上で音楽を共有できると何がいいのか
上記2点目で書いた音楽を友達同士で共有するというのも、フェイスブックとすごく相性がいいのではと思います。既存のサービスでも音楽を友達を共有するようなソーシャルのサービスはいくつかありますが、個人的な実感としてはまだあまり普及していない印象があります。例えばAppleがPingというソーシャル機能を去年リリースした時には、期待したのですが、自分自身も今ではほとんど使っていませんし、自分のTLでもたまに流れているくらいの印象です。
これはなぜだろうと考えた時に、友達同士で音楽を共有する場がうまく構築されていない点にあるように思います。確かにツイッターとPingを連携すれば、ツイッター上でおすすめの曲名を表示させたり、iTunesへのリンクをつけることもできます。またツイッター上でも試聴はできるのですが、個人的にはツイッター上のタイムラインでの音楽の共有は限定的なものだと感じます。というのは、TLでは他の情報もたくさん流れておりその中でPingの情報があったとして埋もれてしまったりなど、Pingからの音楽情報もその他多くの情報の1つでしかないからです。
それに比べてフェイスブック上にMusic Dashboardができれば、そこは音楽を共有することを目的とした設計になっているはずで、だからこそ、そこには友達がおすすめする曲以外にも、今聴いている曲なども表示されるような仕組みになっている。さらにはいいねボタンだったりコメントがつけられ、その情報がニュースフィードにアップされ、フェイスブック上でのコミュニケーションがより活性化されていくのではと思います。単に自分の好きな曲を友達にも紹介する以外にも、今自分が聞いている曲を共有できたり、その時の私の気持ちを音楽で共有したりとか、テキストや写真・動画などでのコミュニケーションとはまた違ったやりとりが発生するのではないかなと。
なお、自分の聴いている曲やおすすめする曲も、おそらく公開する範囲が自分で決められるのではないかなと思うので、共有するかどうかやどの音楽を共有したいかはユーザーが自由に選択できるようになり、このあたりのプライバシーの扱いはフェイスブックも慎重にやってくるはず。
このようにフェイスブックというプラットフォームに音楽サービスが乗ることで、ユーザーにとって使い心地のよい環境になるだけではなく、楽曲の提供者側にとっても自分の曲を知ってもらう場ができることが期待できます。このあたりは個人的な憶測にすぎないのですが、知名度が高くないアーティストでも自分たちの音楽をMusic Dashboardを利用してフェイスブック上でアピールすることができ、それがいいねボタンで広がっていく可能性も出てきます。自分たちの活動やPRなどをフェイスブックページでやるだけではなく、実際に視聴してもらったり、さらにはフェイスブッククレジットとかもうまく使えるようになれば、フェイブック上で自分たちの楽曲を売ることだってできる。フェイスブック上の広告も音楽の要素が入ったものができ、そこにフェイブックが持つ最大の強みであるソーシャルグラフ(人間関係)を活用されていくのでしょう。マーケットは世界のフェイスブックユーザーなので、フェイスブック発の世界的なヒット曲というのも将来的には出てくるかもしれません。
GigaOMによれば、Music Dashboardについては2011年8月に開催されるf8開発者カンファレンスで詳細が発表されるのではないかとしています。GigaOmの記事では、情報源は明らかにされていないものの複数の情報筋からのようなのでまだはっきりとは見えていない部分もありますが、フェイスブックでの音楽サービスの話は今後も注目しておきたい動きです。
※参考情報
Revealed: Facebook’s music plans tap Spotify, others|GigaOM
Will Facebook Launch a Music Service in August?|Mashable
Facebook’s Music Dashboard Could Unite the Fractured Streaming Market|Inside Facebook
Facebook May Soon Launch Music Dashboard|All Facebook
Facebook、Spotifyを統合する新しい音楽サービスを計画か--GigaOm報道|cnet Japan
Trend in Share (%) of Time Spent for Top 5 U.S. Web Properties|comScore
おもしろいニュースが流れていました。GigaOMによれば、FacebookがSpotifyも含めた複数のオンライン音楽サービスを統合し、Facebook上での新しい音楽サービスを計画しているようです。
Revealed: Facebook’s music plans tap Spotify, others|GigaOM
■Facebookが計画中の新しい音楽サービスとは
GigaOMの記事で紹介されていた内容をいくつか抜粋しておきます。計画中の音楽サービスの機能としては大きく2つです。
1つ目が、フェイスブック上で音楽を再生し聴くことができる機能です。フェイスブックの右下にはチャットのアイコンが表示されていますが、ここに再生/停止ボタンが表示される。PCで音楽を聴くには、iTunesやWindows media playerなどがあるかと思いますが、フェイスブック上でも聴けるようになるのです。
2つ目が、自分たちがよく聞いている音楽や好きな曲を友達と共有できるというものです。フェイスブックのサイトの左上(ニュースフィードなどがあるところ)に「Music」が新しく追加され、それをクリックするとMusic Dashboardのページが表示されるようです。Music Dashboard上では具体的には、フェイスブックでの友達がレコメンドする曲やアルバム、友達がよく聞いている曲、あるいは今聴いている曲などが表示されます。
これらのサービスをフェイスブック単独ではなく、すでに存在している例えば音楽ストリーミング配信サービスなどのSpotifyと連携することで、フェイスブック上で実現させようとするものです。
■滞在時間の長いFacebook上で音楽が聞ける
ここからは、計画中のフェイスブックの音楽サービスの意味について考えてみます。まず、上記で1点目として言及したフェイスブック上で自分が聴きたい曲が簡単に再生できる機能ですが、これだけでも魅力的なものだと感じます。フェイスブックの滞在時間がグーグルを抜いたというニュースが以前に話題になったことがありましたが、その後もフェイスブックの滞在時間は増加しているようです。滞在時間の長いサイト上で自分の好きな音楽が簡単に聞けるような仕組みが追加されるのです。
引用:Trend in Share (%) of Time Spent for Top 5 U.S. Web Properties|comScore
■Facebook上で音楽を共有できると何がいいのか
上記2点目で書いた音楽を友達同士で共有するというのも、フェイスブックとすごく相性がいいのではと思います。既存のサービスでも音楽を友達を共有するようなソーシャルのサービスはいくつかありますが、個人的な実感としてはまだあまり普及していない印象があります。例えばAppleがPingというソーシャル機能を去年リリースした時には、期待したのですが、自分自身も今ではほとんど使っていませんし、自分のTLでもたまに流れているくらいの印象です。
これはなぜだろうと考えた時に、友達同士で音楽を共有する場がうまく構築されていない点にあるように思います。確かにツイッターとPingを連携すれば、ツイッター上でおすすめの曲名を表示させたり、iTunesへのリンクをつけることもできます。またツイッター上でも試聴はできるのですが、個人的にはツイッター上のタイムラインでの音楽の共有は限定的なものだと感じます。というのは、TLでは他の情報もたくさん流れておりその中でPingの情報があったとして埋もれてしまったりなど、Pingからの音楽情報もその他多くの情報の1つでしかないからです。
それに比べてフェイスブック上にMusic Dashboardができれば、そこは音楽を共有することを目的とした設計になっているはずで、だからこそ、そこには友達がおすすめする曲以外にも、今聴いている曲なども表示されるような仕組みになっている。さらにはいいねボタンだったりコメントがつけられ、その情報がニュースフィードにアップされ、フェイスブック上でのコミュニケーションがより活性化されていくのではと思います。単に自分の好きな曲を友達にも紹介する以外にも、今自分が聞いている曲を共有できたり、その時の私の気持ちを音楽で共有したりとか、テキストや写真・動画などでのコミュニケーションとはまた違ったやりとりが発生するのではないかなと。
なお、自分の聴いている曲やおすすめする曲も、おそらく公開する範囲が自分で決められるのではないかなと思うので、共有するかどうかやどの音楽を共有したいかはユーザーが自由に選択できるようになり、このあたりのプライバシーの扱いはフェイスブックも慎重にやってくるはず。
このようにフェイスブックというプラットフォームに音楽サービスが乗ることで、ユーザーにとって使い心地のよい環境になるだけではなく、楽曲の提供者側にとっても自分の曲を知ってもらう場ができることが期待できます。このあたりは個人的な憶測にすぎないのですが、知名度が高くないアーティストでも自分たちの音楽をMusic Dashboardを利用してフェイスブック上でアピールすることができ、それがいいねボタンで広がっていく可能性も出てきます。自分たちの活動やPRなどをフェイスブックページでやるだけではなく、実際に視聴してもらったり、さらにはフェイスブッククレジットとかもうまく使えるようになれば、フェイブック上で自分たちの楽曲を売ることだってできる。フェイスブック上の広告も音楽の要素が入ったものができ、そこにフェイブックが持つ最大の強みであるソーシャルグラフ(人間関係)を活用されていくのでしょう。マーケットは世界のフェイスブックユーザーなので、フェイスブック発の世界的なヒット曲というのも将来的には出てくるかもしれません。
GigaOMによれば、Music Dashboardについては2011年8月に開催されるf8開発者カンファレンスで詳細が発表されるのではないかとしています。GigaOmの記事では、情報源は明らかにされていないものの複数の情報筋からのようなのでまだはっきりとは見えていない部分もありますが、フェイスブックでの音楽サービスの話は今後も注目しておきたい動きです。
※参考情報
Revealed: Facebook’s music plans tap Spotify, others|GigaOM
Will Facebook Launch a Music Service in August?|Mashable
Facebook’s Music Dashboard Could Unite the Fractured Streaming Market|Inside Facebook
Facebook May Soon Launch Music Dashboard|All Facebook
Facebook、Spotifyを統合する新しい音楽サービスを計画か--GigaOm報道|cnet Japan
Trend in Share (%) of Time Spent for Top 5 U.S. Web Properties|comScore
相手も自分も動かす「自分ごと化」のススメ
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メールを送って仕事の依頼を伝えたつもりが、こちらの意図が正しく伝わっていたなかった。仕事をされている方であれば一度はこんな経験があると思います。
■「伝える」と「伝わる」は同じではない
このような「伝える」と「伝わる」ことが必ずしも同じではないということを、マーケティングや広告の世界でも起こっているのではないか、という問題意識で書かれいてたのが「どう伝わったら、買いたくなるか」(藤田康人 ダイヤモンド社)という本でした。著者は、消費者が得られる情報が今ほど多様ではなかった時代では、メディアや企業から得られる情報が多くを占め、「伝えること」とはそのまま届くことであり、「届くこと」と同じ意味だったと言います。しかし、今や情報を伝えても、簡単には消費者に届かなくなり、届いたとしても伝わったことにはならない。そして、買ってもらうという行動につなげるのが以前よりも難しくなったという主張です。
では、伝えるためにはどうすればいいのか。本書のポイントは2つで、1つめが消費者が本当に聞きたいことを把握すること、そのためには消費者を観察し彼ら/彼女らのことを深く知ることといういわゆる消費者インサイトの重要性が挙げられています。2つめが伝えたい相手(ターゲットとなる消費者)にとっていかに「自分ごと」として受け取ってもらうかという発想でした。今回のエントリーでは、1点目の消費者インサイトについては論点とせず、2点目の自分ごとをテーマにして書いてみたいと思います。
■そのためには「自分ごと」として受け取ってもらうこと
自分ごとについての著者の主張をもう少し見てみます。「自分ごと」というのは、その情報が自分にどれだけ関係あると思うということを指していますが、確かに自分のことを思い返してみても自分には関係ないと思った瞬間に興味・関心は薄れてしまうものです。いかに自分ごと化できるかは、その情報にどれだけベネフィットがあるかがポイントであると書かれています。ベネフィットには2種類あり、その情報を得ることでトクをするという0⇒プラスのものと、それを知らないと損をするというマイナス⇒0の2つ。
広告だったりマーケティングというのは、ほとんどのものが消費者に自社のモノ・サービスを買ってもらうということを1つの目的としています。上記の考え方は、そのためにはベネフィットが伝わることで消費者にどれだけ自分に関係する情報だと認識してもらう、それができなければ「伝わる」までには至らないということなのだと思います。
受け手側にいかに「自分ごと化」してもらうか、この視点はマーケティングや広告以外にも応用できそうな考え方ではないか。これが本書を読んだ中であらためて気づいた点です。そしてこうして記事にしようと思った動機でもあります。
冒頭でメールの例を挙げていますが、メールを書く際にもこちらの言いたいことを書くだけではなく、相手の立場で文章構成がつくれるか、その中でプラスなものがあるメリットやマイナスになる事態を防げるなどのベネフィットがあれば、読んだ相手もこちらの伝えたかった内容が伝わりやすくなるのではないでしょうか。
ビジネスにおいてはメール以外にも、上司への報連相であったり、プレゼンなんかもこの考え方は活かせそうです。プレゼンでは受け手側の視点で見ると、発表資料を見ただけでも、オーディエンスの目線でつくられているのとそうではないものは結構分かれます。資料がオーディエンスにとって自分ごと化されている構成になっていれば、プレゼン自体もそのような形になっていき、例えばプレゼンの目的であるオーディエンスに次のアクションをとってもらうことにつなげられそうです。
■日経も自分ごとで読む
ここまではいかに受け手側で自分に関係があると思ってもらえるかという送り手側からの発想でしたが、自分が受け手側になった場合も、自分ごととして捉えるような意識が大事だと思っています。これと関連すると思ったのが以下のブログ記事で書かれていた内容でした。
正しい日経新聞の読み方。(特に新社会人へ)|My Life After MIT Sloan
この記事の内容を簡単に整理すると、ビジネス界にいる人が新聞を毎日読むのが大事であり、そのためには日経を例にどう読めばよいかがわかりやすく書かれています。具体的には、それぞれの記事から「意味合いを考える」ことであり、1.記事内の事実、2.解釈、3.自分は何を考えるべきか、という3ステップで構成です。例えとして、空・雨・傘が使われていて、イメージとしては、カーテンを開けると曇り空という事実から、雨が降るのではないかと解釈し、じゃあ今日は傘を持って出かけようというものです。一般化すると以下になります。
1.「空」=「事実」は何かを見極め
2.「雨」=そこから得られる自分の業界への影響を考え
3.「傘」=何をすべきか、どう手を打つべきか
2つ目の解釈、3つ目の自分は何を考えるか・行動するかという視点は、今回の記事のキーワードである「自分ごと化」と通じるものがあります。新聞記事を漠然と読むのではなく、事実をつかみ、そこからいかに自分に関係のある情報として得られるか。情報収集という意味でも、あるいは記事から連想することで世の中の流れをつかむためにも、このような読み方は意識するかしないかで、得られることが全然違ってくるのではないでしょうか。
■最後に
上記のブログ記事では、新聞を読む理由として、「理由は世の中で何が起こっているか、最新情報を捉え、それがどのように自分たちのビジネスに影響するか、どうすべきかを毎日考えなくてはならないから」と書かれていました。これには同意で、そのためには新聞に限らず、ネットでのブログやツイッターなどで情報を得る時、仕事でまわってくる資料やメールに触れる時にも、こういった発想が有効になると思います。そのためのポイントがいかに「自分ごと化」ができるかを意識してみてはいかがでしょうか。
※参考情報
正しい日経新聞の読み方。(特に新社会人へ)|My Life After MIT Sloan
メールを送って仕事の依頼を伝えたつもりが、こちらの意図が正しく伝わっていたなかった。仕事をされている方であれば一度はこんな経験があると思います。
■「伝える」と「伝わる」は同じではない
このような「伝える」と「伝わる」ことが必ずしも同じではないということを、マーケティングや広告の世界でも起こっているのではないか、という問題意識で書かれいてたのが「どう伝わったら、買いたくなるか」(藤田康人 ダイヤモンド社)という本でした。著者は、消費者が得られる情報が今ほど多様ではなかった時代では、メディアや企業から得られる情報が多くを占め、「伝えること」とはそのまま届くことであり、「届くこと」と同じ意味だったと言います。しかし、今や情報を伝えても、簡単には消費者に届かなくなり、届いたとしても伝わったことにはならない。そして、買ってもらうという行動につなげるのが以前よりも難しくなったという主張です。
では、伝えるためにはどうすればいいのか。本書のポイントは2つで、1つめが消費者が本当に聞きたいことを把握すること、そのためには消費者を観察し彼ら/彼女らのことを深く知ることといういわゆる消費者インサイトの重要性が挙げられています。2つめが伝えたい相手(ターゲットとなる消費者)にとっていかに「自分ごと」として受け取ってもらうかという発想でした。今回のエントリーでは、1点目の消費者インサイトについては論点とせず、2点目の自分ごとをテーマにして書いてみたいと思います。
■そのためには「自分ごと」として受け取ってもらうこと
自分ごとについての著者の主張をもう少し見てみます。「自分ごと」というのは、その情報が自分にどれだけ関係あると思うということを指していますが、確かに自分のことを思い返してみても自分には関係ないと思った瞬間に興味・関心は薄れてしまうものです。いかに自分ごと化できるかは、その情報にどれだけベネフィットがあるかがポイントであると書かれています。ベネフィットには2種類あり、その情報を得ることでトクをするという0⇒プラスのものと、それを知らないと損をするというマイナス⇒0の2つ。
広告だったりマーケティングというのは、ほとんどのものが消費者に自社のモノ・サービスを買ってもらうということを1つの目的としています。上記の考え方は、そのためにはベネフィットが伝わることで消費者にどれだけ自分に関係する情報だと認識してもらう、それができなければ「伝わる」までには至らないということなのだと思います。
受け手側にいかに「自分ごと化」してもらうか、この視点はマーケティングや広告以外にも応用できそうな考え方ではないか。これが本書を読んだ中であらためて気づいた点です。そしてこうして記事にしようと思った動機でもあります。
冒頭でメールの例を挙げていますが、メールを書く際にもこちらの言いたいことを書くだけではなく、相手の立場で文章構成がつくれるか、その中でプラスなものがあるメリットやマイナスになる事態を防げるなどのベネフィットがあれば、読んだ相手もこちらの伝えたかった内容が伝わりやすくなるのではないでしょうか。
ビジネスにおいてはメール以外にも、上司への報連相であったり、プレゼンなんかもこの考え方は活かせそうです。プレゼンでは受け手側の視点で見ると、発表資料を見ただけでも、オーディエンスの目線でつくられているのとそうではないものは結構分かれます。資料がオーディエンスにとって自分ごと化されている構成になっていれば、プレゼン自体もそのような形になっていき、例えばプレゼンの目的であるオーディエンスに次のアクションをとってもらうことにつなげられそうです。
■日経も自分ごとで読む
ここまではいかに受け手側で自分に関係があると思ってもらえるかという送り手側からの発想でしたが、自分が受け手側になった場合も、自分ごととして捉えるような意識が大事だと思っています。これと関連すると思ったのが以下のブログ記事で書かれていた内容でした。
正しい日経新聞の読み方。(特に新社会人へ)|My Life After MIT Sloan
この記事の内容を簡単に整理すると、ビジネス界にいる人が新聞を毎日読むのが大事であり、そのためには日経を例にどう読めばよいかがわかりやすく書かれています。具体的には、それぞれの記事から「意味合いを考える」ことであり、1.記事内の事実、2.解釈、3.自分は何を考えるべきか、という3ステップで構成です。例えとして、空・雨・傘が使われていて、イメージとしては、カーテンを開けると曇り空という事実から、雨が降るのではないかと解釈し、じゃあ今日は傘を持って出かけようというものです。一般化すると以下になります。
1.「空」=「事実」は何かを見極め
2.「雨」=そこから得られる自分の業界への影響を考え
3.「傘」=何をすべきか、どう手を打つべきか
2つ目の解釈、3つ目の自分は何を考えるか・行動するかという視点は、今回の記事のキーワードである「自分ごと化」と通じるものがあります。新聞記事を漠然と読むのではなく、事実をつかみ、そこからいかに自分に関係のある情報として得られるか。情報収集という意味でも、あるいは記事から連想することで世の中の流れをつかむためにも、このような読み方は意識するかしないかで、得られることが全然違ってくるのではないでしょうか。
■最後に
上記のブログ記事では、新聞を読む理由として、「理由は世の中で何が起こっているか、最新情報を捉え、それがどのように自分たちのビジネスに影響するか、どうすべきかを毎日考えなくてはならないから」と書かれていました。これには同意で、そのためには新聞に限らず、ネットでのブログやツイッターなどで情報を得る時、仕事でまわってくる資料やメールに触れる時にも、こういった発想が有効になると思います。そのためのポイントがいかに「自分ごと化」ができるかを意識してみてはいかがでしょうか。
※参考情報
正しい日経新聞の読み方。(特に新社会人へ)|My Life After MIT Sloan
福沢諭吉から考える会議設計の3つのポイント
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最近読んだ本で、「福澤諭吉に学ぶ 思考の技術」(岩田規久男 東洋経済新報社)というものがあります。
■福沢諭吉と議論の本位
本書では福沢諭吉の著書「学問のすゝめ」「文明論之概略」から学べる論理的思考の技術が紹介されており、その中の1つに「議論の本位を定めること」が取り上げられています。今回のエントリーでは議論の本位を定めることについてと、議論する場の代表例として会議についてどうすれば生産的なものにできるかを書いています。
福沢諭吉は「文明論之概略」の第1章で、議論の本位を定めることは「何を話そうとしているかをはっきりさせること」だと言っています。議論をするためには、何を話すかを明確にしろというのは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、話している当事者で話していることがずれているために、意図的に論点をはずすことで相手の質問や追求を交わすという技術も含め、議論がかみ合わないというのは誰しもが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
■会議設計とは
それでは、何を話すかをはっきりさせること、すなわち議論の本位を定めるためにはどうすればいいのでしょうか。以下では、会議を例にとり、自分の考えることを整理しています。これらは自分自身への戒めというか、備忘録としても書いています。
会議をいかに生産的なものにするかは、事前準備と会議後のアフターフォローがカギだと思っています。これらを会議設計と表現すると、会議設計の要素は次の3つのポイントがあると考えています。
1.目的
2.位置づけと会議スタイル
3.インプットとアウトプット
1.目的
時としてあまり意識されていないように感じる時もありますが、会議目的は重要です。なぜその会議を開催するかという目的が明確でないということは、その会議を設定する意義が小さいからです。逆に言えば会議で集まってもらう目的・理由がない限りは時間の無駄ということになります。
目的の観点でもう1つ大事だと思うのは、会議をすることで何を得るのかという獲得目標です。これを関係者で明確にするために会議をすると言ってもいいかもしれません。獲得目標の例としては、上司の承認を得ることや関係者での合意(意思決定)、関係他部署での進捗状況を確認する(情報共有)、ブレストなどのでアイデア・可能性を探る(論点整理)といった感じでしょうか。
会議目的と獲得目標がちゃんと整理されていること、そして出席者の中で認識にずれがないこと、これらが明確になているほど、会議は生産的なものになると思っています。
2.位置づけ
目的や獲得目標が整理できると、自ずと会議の位置づけもはっきりしてきます。ここで言う位置づけは、案件やプロジェクトにおいて、どの段階かによるでしょう。具体的には、関係者が初めて集う顔合わせやキックオフ、ブレストや作業をするワークショップ、互いの状況を確認・共有する進捗報告会や定例会、意思決定の会議、プロジェクトを締めくくる報告会など。位置づけは会議のスタイルと言ってもいいかもしれません。
こうした位置づけをはっきりしておかないと、キックオフなのに各論の議論で時間を取られたり、意思決定の場なのに議論が発散してしまい合意が取れずに次のステップ・工程・作業に進めないといった事態になってしまいます。会議当日の進め方は議長やファシリテーターの腕によるところが大きいですが、一方で会議前の準備段階で、位置づけがはっきりしており、関係者で共有されていることが望ましいと思います。
3.インプットとアウトプット
3つ目が会議のインプットとアウトプットです。インプットは議論の本位、すなわち会議で何を話すかための事前情報を指していますが、当たり前のところでいうと自分の発表内容の資料準備や手持ちの情報を整理しておく必要がありますし、発表者でなくても、上記の目的や位置づけは把握しておきたいところです。このためには会議を取り仕切る役目の人は、事前に会議の目的や議題・論点について共有しておくことが望ましいのではないでしょうか。
アウトプットとは、その会議で何を得たのか・決めたのかで、事前の獲得目標通りのものが得られればその会議は生産的であったと言えます。アウトプットで重要になるのが議事録です。これはほんとに大事だと思っています。会議での意思決定が関係者の頭の中に入ったとして、時としてその認識がずれていたり、あるいは時間がたつと人間の記憶はあやふやになりがちです。だからこそ、議事録に会議でのアウトプットを紙に落としておく、そしてそれを関係者間で共有し、認識に齟齬がないようにしておくこと、ここが議事録というものの存在価値だと思っています。
議事録についてもう少し書いておくと、有益な議事録というのは、その会議で何が決まったか、次に進めるためのタスクについて「誰が」「いつまでに」というWhat・Who・Whenが責任が明確化されているものだと思っています。あとはタスクまでに落とし切れていない項目も継続検討事項として書いておくと、今後のタスクと成り得るものに漏れがなくなると思います。
議事録については、おそらく会社ごとの企業文化や社風により扱いが変わるかもしれませんが、自分自身の経験によると、全体的な外資企業や欧米企業などはわりときっちりとしており、簡単なメモのような場合も含めて、会議後に関係者で共有する文化を持っているように思います。(もちろん、そうでない場合もあると思いますが)
■最後にまとめ
会議というのは半歩でもいいので、プロジェクトや仕事を前に進めるものだと思っています。そのためには、会議設計をどれだけ詰めておけられるか。具体的には、目的・獲得目標を明確にする、会議の位置づけを設定し、事前のインプットと会議から得られるアウトプットを意識する、アウトプットは議事録として紙に落とし関係者で認識や責任の所在に齟齬がないよう共有すること、これらで構成される会議設計です。会議設計とは会議における予習と復習だと思っていますが、自分への戒めとしても意識し心がけたいと思っています。
※参考情報
書き方の基本から時間短縮のコツまで、使える「議事録」の書き方|はてなブックマークニュース
最近読んだ本で、「福澤諭吉に学ぶ 思考の技術」(岩田規久男 東洋経済新報社)というものがあります。
■福沢諭吉と議論の本位
本書では福沢諭吉の著書「学問のすゝめ」「文明論之概略」から学べる論理的思考の技術が紹介されており、その中の1つに「議論の本位を定めること」が取り上げられています。今回のエントリーでは議論の本位を定めることについてと、議論する場の代表例として会議についてどうすれば生産的なものにできるかを書いています。
福沢諭吉は「文明論之概略」の第1章で、議論の本位を定めることは「何を話そうとしているかをはっきりさせること」だと言っています。議論をするためには、何を話すかを明確にしろというのは当たり前のように聞こえるかもしれませんが、話している当事者で話していることがずれているために、意図的に論点をはずすことで相手の質問や追求を交わすという技術も含め、議論がかみ合わないというのは誰しもが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
■会議設計とは
それでは、何を話すかをはっきりさせること、すなわち議論の本位を定めるためにはどうすればいいのでしょうか。以下では、会議を例にとり、自分の考えることを整理しています。これらは自分自身への戒めというか、備忘録としても書いています。
会議をいかに生産的なものにするかは、事前準備と会議後のアフターフォローがカギだと思っています。これらを会議設計と表現すると、会議設計の要素は次の3つのポイントがあると考えています。
1.目的
2.位置づけと会議スタイル
3.インプットとアウトプット
1.目的
時としてあまり意識されていないように感じる時もありますが、会議目的は重要です。なぜその会議を開催するかという目的が明確でないということは、その会議を設定する意義が小さいからです。逆に言えば会議で集まってもらう目的・理由がない限りは時間の無駄ということになります。
目的の観点でもう1つ大事だと思うのは、会議をすることで何を得るのかという獲得目標です。これを関係者で明確にするために会議をすると言ってもいいかもしれません。獲得目標の例としては、上司の承認を得ることや関係者での合意(意思決定)、関係他部署での進捗状況を確認する(情報共有)、ブレストなどのでアイデア・可能性を探る(論点整理)といった感じでしょうか。
会議目的と獲得目標がちゃんと整理されていること、そして出席者の中で認識にずれがないこと、これらが明確になているほど、会議は生産的なものになると思っています。
2.位置づけ
目的や獲得目標が整理できると、自ずと会議の位置づけもはっきりしてきます。ここで言う位置づけは、案件やプロジェクトにおいて、どの段階かによるでしょう。具体的には、関係者が初めて集う顔合わせやキックオフ、ブレストや作業をするワークショップ、互いの状況を確認・共有する進捗報告会や定例会、意思決定の会議、プロジェクトを締めくくる報告会など。位置づけは会議のスタイルと言ってもいいかもしれません。
こうした位置づけをはっきりしておかないと、キックオフなのに各論の議論で時間を取られたり、意思決定の場なのに議論が発散してしまい合意が取れずに次のステップ・工程・作業に進めないといった事態になってしまいます。会議当日の進め方は議長やファシリテーターの腕によるところが大きいですが、一方で会議前の準備段階で、位置づけがはっきりしており、関係者で共有されていることが望ましいと思います。
3.インプットとアウトプット
3つ目が会議のインプットとアウトプットです。インプットは議論の本位、すなわち会議で何を話すかための事前情報を指していますが、当たり前のところでいうと自分の発表内容の資料準備や手持ちの情報を整理しておく必要がありますし、発表者でなくても、上記の目的や位置づけは把握しておきたいところです。このためには会議を取り仕切る役目の人は、事前に会議の目的や議題・論点について共有しておくことが望ましいのではないでしょうか。
アウトプットとは、その会議で何を得たのか・決めたのかで、事前の獲得目標通りのものが得られればその会議は生産的であったと言えます。アウトプットで重要になるのが議事録です。これはほんとに大事だと思っています。会議での意思決定が関係者の頭の中に入ったとして、時としてその認識がずれていたり、あるいは時間がたつと人間の記憶はあやふやになりがちです。だからこそ、議事録に会議でのアウトプットを紙に落としておく、そしてそれを関係者間で共有し、認識に齟齬がないようにしておくこと、ここが議事録というものの存在価値だと思っています。
議事録についてもう少し書いておくと、有益な議事録というのは、その会議で何が決まったか、次に進めるためのタスクについて「誰が」「いつまでに」というWhat・Who・Whenが責任が明確化されているものだと思っています。あとはタスクまでに落とし切れていない項目も継続検討事項として書いておくと、今後のタスクと成り得るものに漏れがなくなると思います。
議事録については、おそらく会社ごとの企業文化や社風により扱いが変わるかもしれませんが、自分自身の経験によると、全体的な外資企業や欧米企業などはわりときっちりとしており、簡単なメモのような場合も含めて、会議後に関係者で共有する文化を持っているように思います。(もちろん、そうでない場合もあると思いますが)
■最後にまとめ
会議というのは半歩でもいいので、プロジェクトや仕事を前に進めるものだと思っています。そのためには、会議設計をどれだけ詰めておけられるか。具体的には、目的・獲得目標を明確にする、会議の位置づけを設定し、事前のインプットと会議から得られるアウトプットを意識する、アウトプットは議事録として紙に落とし関係者で認識や責任の所在に齟齬がないよう共有すること、これらで構成される会議設計です。会議設計とは会議における予習と復習だと思っていますが、自分への戒めとしても意識し心がけたいと思っています。
※参考情報
書き方の基本から時間短縮のコツまで、使える「議事録」の書き方|はてなブックマークニュース