第82話 アガレスの不覚
「そこの白人、ここは許可なき者は立ち入り禁止だ。正面受け付けで基地見学許可を取れ」G36突撃ライフルを構えた上等兵がアガレスに言った。アガレスは冷たい笑みを浮かべながら爆炎の呪文を唱えた。基地にいた9人の兵士が黒焦げになって即死した。生き残った隊員でライフルを持っていた者はライフルを捨て、その場から逃げだした。
勇敢な伍長2人と下級軍曹が抵抗を試みる。伍長1人が誤射したが、もう一人の伍長は死に至らないまでもアガレスに命中させた。そして下級軍曹はアガレスを射殺した。生体エネルギーを失ったアガレスの姿は大地に吸い込まれるように魔界に消えた。
一部始終を見ていたイハラの部下はアガレスが魔界に消えるのを見届けるとイハラが待つ追浜の海軍基地からほとんど離れていないイハラの邸宅へと向かった。
「ナナミといい、モトといい、なんて運のいい奴らなんだ。普通なら全てうまくいっていたはずなのに!」イハラが怒りをこめて壁を叩いた。
「例の者の助けを借りますか?」イハラの部下が言った。部下は最下級の堕天使、アンドラス氏族の者だ。「奴の助けは借りたくなかったが……やむをえん。それに奴ならばナナミで満足するだろう」イハラが言った。イハラは蝿の王で退廃を司るバビロニアの魔王、ベルゼブブを召喚することにした。イハラはベルゼブブを式神として召還した。
「俺を支配出来ると思うなよ、ルシファー」豊かな黒髪と浅黒い肌の神々しい姿で背中には蝿の羽根、両手指先には鉤爪が生え、その左手にバビロニアの王錫を持ったベルゼブブがイハラに言った。
「今は私の式神だぞ、ベルゼブブ」イハラが言った。
「そうだったな。で、俺は何をすればいい?」ベルゼブブがイハラに尋ねた。
「蝿の姿になってこの男に憑依してくれ」イハラはナナミの顔写真をベルゼブブに見せた。
「その先もあるだろう。話せ」ベルゼブブが言った。
「この男、ナナミの全てとお前の全てを利用して、この男を倒してもらいたい」イハラはモトの写真を見せた。
「この男は……いいだろう。この男を倒して見せよう」ベルゼブブは冷たい笑みを浮かべた。(つづく)