お待たせしました(かどうかはわからないけれど)、


D砂漠に住む
三人の駅員兼Dファンたちの

物語の続きをお楽しみください。


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D「前編は6月14日記事になります~、興味があればどうぞ!」

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(砂漠といえばキャラバン、キャラバンといえばこれ。短絡的連想。

ところで拙ブログにリンク等という親切なものはありません、ごめんなさい)













汽車が「D砂漠」駅に止まると
ジョーンズさんは汽車から飛び降りました。


ブラウンさんは注意深く切符を受け取り
その間にスミスさんは汽車に「進め」の合図をしました。

それから二人はポットいっぱいのコーヒーを作って
旅人の話を聞くために座りました。


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「ねえ、みんな」

ジョーンズさんは言いました。

「世界はとても広いんだよ。

汽車はこれまでに知っていた国よりも、もっとたくさんの国を通っていったよ。

この砂漠よりももっと大きな町で止まった。

いや、おどろいたのなんの
駅だけでも1つの町くらいの大きさがあるのさ。

駅には店もあれば劇場もある。ホテルもレストランも。

サーカスまでが駅の中にあったのにはたまげたぜ。

だから僕はめんどうな思いをして町へ出かけなくてもいいと思ってね、ずっと駅の中にいた。とっても楽しかったよ」


ジョーンズさんのおみやげは

スミスさんに高層ビルの形をした文鎮

ブラウンさんには素晴らしく大きな駅の絵がふたに付いている箱でした。

二人はとても喜びました。



次の週になると、スミスさんがお金を数えて言いました。


「やあ、君たち。僕は休みをとるだけの金がたまった。

西行きの汽車に乗って、終点まで行ってみるつもりだよ」


そこでブラウンさんはスミスさんのためにいちばんいい切符を用意して

あらかじめスミスさんに教わった通り、信号手の仕事もしました。

ジョーンズさんはスミスさんの荷物を持って、汽車に積みこみました。(スミスさんはジョーンズさんにたっぷりチップをあげました)

スミスさんは汽車に乗り込み行ってしまいました。


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次の土曜日、スミスさんは星のように目をきらきら輝かしながら帰ってきました。

汽車が駅を出ていってしまうとすぐ、みんなはコーヒーを作り、話を聞くために座りました。


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「おどろいたのなんのって」

スミスさんは言いました。

「僕が考えていたよりも、世界はずっと広かったよ。

汽車はいろんな国を通っていった。

終点に近くなって汽車はとても高い山脈を通り抜けた。

あんまり山が高いものだから、汽車がお月様をこすっちまうんじゃないかと思うほどだったよ。

断崖のそばも通り、とうとう汽車は海に出た。そこが終点だったのさ。

海はこの砂漠よりもずっと大きいんだよ。

僕は、これをみやげに持ってきた」


そうしてスミスさんは

ブラウンさんに真珠色の貝を

ジョーンズさんには白い水晶の岩のかたまりをあげました。

二人は、このおみやげをとてもきれいだと思いました。



それから、スミスさんとジョーンズさんはブラウンさんに言いました。

「君は、いつ休みをとるつもりだい」


スミスさんは山と海へ行くことをすすめました。

ジョーンズさんは町をすすめます。

二人は自分の意見を譲らず議論となり
とうとうどなりあいになってしまいました。


でもブラウンさんは、長い間考えてから言いました。


「君たちはそれぞれ東と西へ行って、その話を聞かせてくれた。

だから僕は、どこか違う場所に行きたいんだよ」


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「だけど、他に行く所なんかありゃしないじゃないか。

汽車は、東行きか西行きのどっちかだけなんだから」


「僕は北に行ってみよう」

ブラウンさんは言いました。そうして、小さいかばんに荷物をつめました。

荷物はパンとチーズを少しずつ、それに、ビールが一本だけでした。


「だけど、どうやって北に行けるというんだい」


「歩くのさ、この足で」


ブラウンさんは言いました。

そして、日曜日が来ると朝早く線路を横切ってブラウンさんは出かけました。

茶色の砂の上を、一直線にまっすぐ歩いていくブラウンさんの姿を

見えなくなるまで二人は見送りました。



「あいつにまた会えるだろうか」

ジョーンズさんはポツリとつぶやきました。


「神のみぞ知る。念のため、僕は彼の荷物にiPhoneを滑りこませておいたよ。

いざって時に助けを呼べるように」

スミスさんは用心深いところを見せて答えました。


「iPhoneが生きてればさぞかし役に立つだろうけどね。

砂漠の彼方はここよりさらに、もっとすごく、ありえないくらい電波状況が悪いぜ」


「電波状況も神のみぞ知るさ」


「………」


ジョーンズさんは、その後は何も言いませんでした。




しかし、夕方になって沈みかけた太陽が地平線に近づくころ

目を輝かせ、喜びにあふれたブラウンさんが帰ってきたのです。



「どうだったい」

ジョーンズさんとスミスさんはコーヒーを作って座るとブラウンさんにたずねました。


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「ねえ、君たち」

ブラウンさんは言いました。


「この駅から北に二時間歩いたところに、僕はオアシスを見つけたんだよ。

そこにはきれいな水がわき出ていて、緑の草や花が生えているし、
オレンジやレモンの木もしげっているのさ。

僕は、こんなおみやげを持ってきたよ」


ブラウンさんは
大きな汁気たっぷりのオレンジをジョーンズさんに

スミスさんには羽のようにやわらかい葉と水色の花の束をあげました。


それからこう続けました。


「オアシスではさらにおどろくことが起こったんだ。

どういうわけかさっぱり分からないが

そこでは電波がうまく通ってるんだよ!

僕はオレンジをかじりながら

久しぶりにiPhoneで途切れることなくD氏の動画を楽しむことができた」


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「なんだって!一体どういうことだろう!?」


「いや、それが本当なら素晴らしいね!

まるでDオアシスじゃないか!!」


興奮する二人をなだめるようにブラウンさんは笑って言いました。


「とにかくそこはあらゆる意味でオアシスだったんだ。

我々D砂漠に住むDファンにとって奇跡のような場所。

こんなこともあるんだね」


「世の中は神のみぞ知るなのさ」

スミスさんはお得意のセリフをつぶやきました。





もし、あなたが日曜日に「D砂漠」駅に行ってみたところが

誰もいないからといって驚くことはありません。


三人の駅員兼Dファンたちは

二時間歩いてDオアシスへ行き、冷たい泉のそばの草の上に寝そべって

鳥の歌を聞きながら


D情報の収集に余念がないのですからね。


(BDプレーヤーの修理を急がねばならないことも知りました。


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(高橋大輔BD&DVD『The Real Athlete』8月発売決定!)




今では「D砂漠」と駅の名の書いてある看板には

「Dオアシスへは当駅下車」

という新しい言葉が書き込まれているのです。



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(終わり)







※元ネタ

作…ジョーン・エイキン

訳…猪熊葉子

絵…ヤン・ピアンコフスキー



「三人の旅人たち」は以下の本の中で読むことができます。



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ジョーン・エイキン作品集「しずくの首飾り」



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懐かしの教科書短編や詩を集めたシリーズ「光村ライブラリー第14巻」


私が持っているのは光村ライブラリー。


ちなみに「しずくの首飾り」は、光村ライブラリーに比べてやや漢字表記が少ないらしいです。
小さなお子さん向きのよう。


両方とも教科書に載っていたヤン・ピアンコフスキーの挿し絵があるとのこと。


原作を読みたい方は是非どうぞ。