【四国犬の古典鑑賞】
現在の日本犬中型 四国犬に影響を与えた犬
35:陸奥号(表現編 体躯)
陸奥号の体躯
陸奥号は大きな頭部、しっかりとした胴、そして、四肢が長く感じられるような腰の高いスタイルをしていました。
『日本犬名犬写真集』(愛犬の友編集部 誠文堂新光社)で大舘友重氏が「体型的には可なるも、骨量においてかけることが多い。」と書かれていますが、「骨量にかける」という表現がいったいどのようなことを指しているのか、私は未だに分かりかねています。この犬は管理が良くない時期が長かったので、状態が悪い時期の所見かも知れません。
因みに大舘氏のこの記事には、「楠号と印象が似ている」、「軽やかで力のこもった歩様は本質的に申し分ない」、「本川系を代表とする犬」といった記述もあります。
陸奥号
陸奥号の数少ない欠点のひとつが前躯に見られると考えられます。しかし、以前指摘されていた前肢の繋ぎの弱さ(※1)は当てはまらないと思います。前肢の繋ぎに見られる角度はゆるみではなく、険峻な四国山脈での猟を可能にするための関節の広い可動域の表れであり、また「強靭なバネの溜め」とでもいうものです。また、腰や蹴りの強さを支え、前傾を保つ力を受けとめるのがこの部分です。これについては、旧本川村(現高知県いの町)山出しの狩猟犬、楠号や長春号の写真でも前肢の繋ぎに顕著な溜めが確認できます。陸奥のリードを持った記憶では、綱が弛んでいても前肢の爪痕が地面に残るほど踏み込みが強く、喧嘩に向かうときの蹴りは大変強かったことを覚えています。
では、どこに欠点があったかというと、肩甲骨と上腕骨のなす角度が大きくなっているために、下顎から胸にかけて船底型を呈していること(※2)にあります。このために、胸に長春号のような厳しく美しい張りが見られません。この欠点は子孫のいくつかに受け継がれています。定太号や伊賀号(中15174 第29回本部展 若組一席)などがその例と言えます。
楠号(四国犬の祖となった4頭の雄のなかの1頭)
長春号(四国犬の祖となった4頭の雄のなかの1頭)
後肢については、弱いという指摘があったこともありますが、これはやはり、管理ができておらず、運動が不十分な時期だったと考えます。私は、管理が悪かった時と良かった時、両方を見ているので、この犬から受ける印象に幅があることも承知しています。また、立派な体躯にしては尾の毛が広がりにくい丸尾だったために、少々小さく見えたことも下半身に物足りなさを感じた原因かもしれません。また、先の記事(表現編 顔貌)で挙げております若い頃の陸奥号の画像はこのような欠点をあまり感じさせないものです。
次の記事では被毛についてお話いたします。(be-so)
追記:伊賀号の犬籍、賞歴を名前の後に追加しました。
陸奥の記事がずいぶん長くなってきましたので
記事の番号を少し変更しました。ご了承ください。
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