四国犬の古典鑑賞36:陸奥号(表現編 毛色毛質) | 未整理箱。古い四国犬の話でも入れておこうか

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主なテーマは以下です。
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■「表現のつづら」(たぶん雑談)

【四国犬の古典鑑賞】

現在の日本犬中型 四国犬に影響を与えた犬

36:陸奥号(表現編 毛色毛質)

 

 

陸奥号の毛色毛質

 陸奥号の毛色は、黒胡麻です。ただし、現在の黒胡麻とはちょっと違います。「胡麻毛」の色に関しては、筆舌に尽くし難いものですが、この系統の黒胡麻については、以前の記事「長春系四国犬の黒胡麻たち(其の壱)(其の弐)」をご覧いただきますようお願いいたします。

 

 

 

 上記の黒胡麻についての記事でも書きましたが、近年のカラー画像が残っている犬の中で、毛色が一番近いと感じたのは、秀嶺峰号(愛媛木下荘 中7-2804)です。陸奥号は秀嶺峰号のようなはっきりした頬白ではなく、四つ目も白くありませんでした。


下の画像が秀嶺峰号(「日保愛媛支部展 第100回記念誌」より)

 

 毛質については、実際に触った感じとして、主毛はバリバリとした手の平に刺さるような剛毛、綿毛は泳いでも水を通さず、手でかき分けても肌が見えないほど密でふっくらしていました。この剛毛と綿毛のバランスを毛質と一口に申していますが、陸奥号の毛質は良質であったと言えます。

 下の右向き前駆の画像が私が所有する中で一番分かりやすいでしょうか。上記しました頬白が無いこと、四つ目が白く抜けていないこと、また、右前肢の白足袋もはっきり写っていますね。タンカラーが濃かったことも感じていただけるでしょうか。陸奥号の写真はあまり残っていませんが、写りの良いものをじっくりご覧いただくしか、それを伝える方法は無いように感じます。

 

 

 陸奥号の良質な毛色は、古城先生が計画的にブリーディングされた結果として表現されたものです。後の記事でこの犬の血統についてお話いたしますが、陸奥号の場合は本川山出しの犬にこだわった血統構成であることが、毛色の鮮やかさに大きくかかわっていると考えられます。四国犬は複数の産地と系統があり、胡麻毛のタイプも様々であるために、血縁の遠い複数の系統が混ざると毛色が濁ることがあるのです。
 更に、この黒胡麻は、長春号の強い赤胡麻の因子をより合わせた中から生じたことも特筆すべき点です。因みに上記「陸奥によく似た黒胡麻」の秀嶺峰号も、父犬は鮮やかな赤胡麻の赤秀峰号であり、赤秀峰号の父系を辿り切ると長春号に到達します。
 また、本川山出しの長春号、楠号には昭和の初めに存在した「越裏門の黒四つ目」(『往古日本犬写真集』誠文堂新光社 に多くの写真が収められています)と呼ばれる黒四つ目の一群の血が入っていることも想像に難くありません。「黒四つ目」が近い祖先に入っている犬は、タンカラーがしっかりして、色素が良くなります。陸奥号の血統書からは黒四つ目の記録を見つけることはできませんが、陸奥号と胡麻毛の雌を交配して黒四つ目の黒旋風号(参考記事 )や、コロ号(中4037 愛媛支部第4回展 日保本部賞など)が作出されていることからも、黒四つ目の因子を強く持っていたことが分かります。

 

コロ号。会誌より。

展覧会場で目にした。両前肢に大きい白足袋があったが、しっかりした差し尾で背線が大変美しかった。管理がよく素晴らしい立ち姿だった。

 

 次回は閑話として、本部展での陸奥号の個評をご紹介します。(be-so)

 

 

 

やだもう月末! 陸奥の一連の記事、まだ終わりません。

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