古典鑑賞番外編:展覧会の思い出 | 未整理箱。古い四国犬の話でも入れておこうか

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主なテーマは以下です。
■二代目の箱「長春系四国犬の回顧録」
■三代目の箱「気が付けば犬がいた件」
■「遺伝子のつづら」(毛色で悩んでみる)
■「表現のつづら」(たぶん雑談)


【四国犬の古典鑑賞】

~ 番外編 ~

◆◇◆ 日本犬保存会展覧会の思い出 ◆◇◆

< 愛媛支部第2回展 >
日時場所:昭和24年10月2日愛媛県宇摩群三島町
審査員:松本克郎先生 古城九州男先生

第2回愛媛支部展


今年の日本犬保存会展覧会も明日からの全国展を残すのみとなりました。急に寒くなりましたので出陳される方、お役の方、そして先生方、皆さんお身体にはどうぞお気をつけて運営なさってください。


さて今回は古典鑑賞の番外編として、まだ中学生の私が初めて見学に行った昭和24年の愛媛支部展について、特に審査風景を中心にお話させていただこうと思います。

古臭い思い出ですがどうぞお付き合いくださいますようお願いいたします。



昭和24年の秋、中学生の私は父に連れられて第2回愛媛支部展を見学しました。

会場は当時私が住んでいた場所からほど近い旧伊予三島市の三島小学校、現在の愛媛県四国中央市にあたります。

この時の審査員は松本先生と古城先生でした。雰囲気も性格も対照的なお二人でしたが不思議とウマが合ったのか、この後数年にわたって何度もこのペアでの審査をお見かけしました。


■お二人の審査スタイルについて

当時は現在のように審査員全員のコンセンサスがとれている訳ではなく、審査される先生の“犬の見方”に若干幅があったように思います。

一審の審査も統一された「審査票」に記入しながら各部位をチェックするような方法ではなかったと記憶しています。もっとも、今と比べると出陳頭数も少なかったですし、各個体もそれぞれ個性的でしたので記録やメモの必要もあまり無かったのかも知れません。


二審の審査スタイルは各先生それぞれに個性が表れていました。

古城先生の審査は非常に静かだった記憶があります。物腰のおだやかな、犬を見る姿もまさに学者タイプの方でした。

松本先生の審査は印象的でした。先生は初め、近くで犬をご覧にはなりません。並んだ犬達のすべて、全体が見える位置で立って見渡します。たぶん個体の細かな部分というよりも、犬群の中から「気迫」や「悍威」が抜きん出て伝わってくる個体を見極めていたのでしょう。

そのあと気になった犬体を確認するように近くでご覧になり、最後に犬の並びを何度か入れ替えて各個体を比較されてから順位を決定されました。

松本先生は犬の全体感から瞬時にインスピレーションを受け取られているように見受けられました。しかし、後日会誌に掲載された個評を読むと、各個体にそれぞれ非常に具体的な評を書かれているのです。

後年、松本先生と直接お話させていただいて確信を持つことになるのですが、先生の感性の高さは驚くべきものがありました。


その後も幾つかの展覧会でお二人の審査姿を拝見しましたが、古城先生の冷静な分析力と松本先生のある種動物的とも言える感受性をお互いに信頼なさっているようで、お二人がご相談なさりながら審査されていることもありました。


■2頭のゴマ号直系が出陳される

第2回愛媛支部展は今思うと全出陳頭数が30頭であったにもかかわらず、なかなかの名犬揃いの展覧会でした。


富士女号
富士女号
陸奥号の姉犬である富士女号も出陳されていた。


私はこの展覧会で初めて大型犬を見ましたが、高松から出陳された美しい赤胡麻の秋田犬でした。写真が手元に残っていないのが残念ですが館太郎二世号という犬です。中型の赤胡麻と変わらぬ毛色が印象的で、この時三島町長賞を受賞しました。この犬はたしか戦中生まれだったと思いますので戦後に秋田犬が洋犬と交雑される前の姿をしていたのではないでしょうか。


中型犬では長春系の富士女号、有色紀州の二郎号など高レベルな犬が集まりましたが、なんといってもこの日の見所はゴマ号直系であり長春号の血も濃い同胎犬2頭が揃ったところにありました。


初花女号
(昭和27年第4号会誌より)
s27_4初花女
この写真は三島高校のテニスコート横で撮影された。
当時の愛媛支部委員の二葉氏に同行して
撮影を見学させていただいた思い出がある。

初緑号
(昭和25年第7号会誌より)
s25_7初緑
掲載された写真の元画像はこちら (←クリックで開きます)

上の写真でご覧いただいても判るかと思いますが、同胎とはいえ初花女は長春号寄りの表現、初緑はゴマ号寄りの表現です。

この2頭はさすがに抜群の血統、しかも同胎とあって甲乙付けがたい個性を持っていました。

結局は日保本部賞(一席)に初花女号(はつかめ-ごう)、愛媛県知事賞(二席)に初緑号(はつみどり-ごう)となりましたが、この時委員を務めていた叔父(後に支部長となった真鍋政利)から聞いたところによると、松本先生と古城先生はこの2頭の順位について、お二人でかなり悩まれていたそうです。

そして「メスはこのあと子を産むだろうからいつまた出陳されるかわからないし、出産で体型も崩れるかも知れないので今回は初花女号を一席に」という理由でこの順列になったと聞きました。

順位をつける場合でもお二人は日本犬の保存、繁殖のことを考慮していらっしゃったのです。


…考えてみればこの展覧会からなんと60年近くの月日が経ってしまいました。

日本犬保存会の先生方、会員の方々による連綿たる努力によって現在のような盛大な展覧会が催されるようになったことを嬉しく思うにつけ、同時に感慨深く当時を思い出しています。


最後に。この展覧会の審査報告より、初花女号と初緑号の個評(松本克郎先生文責)をご紹介させて頂きます。

【初花女号】

中型若牝。名犬ゴマ号の直系猪智号と村上氏の智備号との交配仔である。ゴマ号と長春系の合作に成功したるものと見るべき犬である。長春系独特の眼型も良くストップも尋常、本質的な良さは光彩を放っている。若犬ながら充分に乾燥度も良く歩様も弾力あり軽快である。凛性も男まさりの感あり、将来期待すべき曲者として賞賛を惜しまない。

ただ、若犬牝ながら体型完備し牡にも見間違う強さを持つ点折角の飼育管理に最新の注意を乞う。
【初緑号】

中型若犬牡。前記初花女号と同胎仔、愛媛県知事賞を獲得せる犬である。初花女号が長春号の質を享けたものとすれば、初緑号は
ゴマ号の型を享けたものと言うべく両者相並べて系統繁殖の面白さを讃歎するものである。八ヶ月の若犬ながら骨量あり、悍威あり、落着きあり。頭部大きく、ゴマ号の四代目の名をはづかしめざる凛性と質の良さは瞭然たるものである。同胎仔二頭、牡牝が最高位を争いたるは、本展の偉観であったであろう。

将来を期すべき名犬ながら、ただ惜しむらく総じて牡犬は完成が遅れるものと見るべきも、此の系統としては前軀は今少し良くなるべき筈であり、後肢飛節の角度も良くなるべき筈である。何れも運動不充分と難ずるの外なく。飼育上の注意は充分とは申し難い。折角の御愛育を乞い、来春の出来ばえを今一度拝見したき犬である。

今年の全国展も素晴らしい催しになりますことをお祈りいたしております。(be-so)



____________次回の古典鑑賞は昭宝号の予定です


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