四国犬の古典鑑賞12:長剣号と長新女号 | 未整理箱。古い四国犬の話でも入れておこうか

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主なテーマは以下です。
■二代目の箱「長春系四国犬の回顧録」
■三代目の箱「気が付けば犬がいた件」
■「遺伝子のつづら」(毛色で悩んでみる)
■「表現のつづら」(たぶん雑談)


【四国犬の古典鑑賞】


現在の日本犬中型 四国犬に影響をあたえた犬。一石を投じる犬。

12:長剣号と長新女号

長剣号&長新女号
左>長剣号   右>長新女号
[定太号と岡山長春女号]から生まれた珠玉の一胎
長新女号の正面の顔などは定太号にそっくり。

犬名(写真左) 長剣号[ ちょうけん-ごう ](S.36.1.20生/日犬籍中型第24978号)


作出犬舎: 如月荘 
父・定太号/母・岡山長春女

※同胎犬情報: 長秀号(24979) 長学号(24980) 長克号(24981) 長新女号(24982)

賞暦: 岡山支部展(年度不明)/総合三席


毛色毛質: 赤胡麻(しかしはっきりと胡麻が出ていた) 短毛気味 毛色毛質共に良好

顔貌体躯: 丸頭丸吻,上下に目張りが良いアーモンドアイ,体高およそ52㎝,巻尾(丸尾)

鑑賞ポイント: 顔貌、体躯ともに、ほぼ定太号のそれ
を表現しているが、四肢に岡山長春女号から受け継いだ“伸びやかさ”が表れたために定太号よりひと回りスケールが大きく感じられた。



犬名(写真右): 長新女号[ ちょうしんめ-ごう ](S.36.1.20生/日犬籍中型第24982号)


作出犬舎: 如月荘 
父・定太号/母・岡山長春女

※同胎犬情報: 長剣号(24978) 長秀号(24979) 長学号(24980) 長克号(24981)

賞暦: S.37年度愛媛支部春展/日保本部賞


毛色毛質: 胡麻(登録は赤胡麻だが実際は胡麻であった) 短毛気味、毛色毛質共に良好

顔貌体躯: 丸頭丸吻,上下に目張りが良いアーモンドアイ,体高およそ49㎝,巻尾(丸尾)

鑑賞ポイント: 顔貌、体躯ともに定太号に非常によく似ていた。ただ、毛色が胡麻だったために濃いオレンジ色の定太号ほどの艶やかさは感じられなかった。しかしそれが故に、当時は“渋い味わいの犬”と評された。

ただし、定太号にそくりだったために前肢と胸部に見られた定太号の欠点までも受け継いでいた。


数ある定太号 の直子の中でも長春系の強力な組み合わせの交配から生まれた一胎(5胎子)から2頭をご紹介します。


実は、私は当時から岡山長春女号 の母系に入っている[睦風号→京女号→那美女号]という松風号からの血統が“長春系”という観点からは違和感を感じていました。(もちろん父系は申し分ない長春系です。)

ですが岡山長春女号の表現は長春系そのもので、微塵もその違和感が感じられませんでした--これはひとえに松本克郎先生の遺伝形質を選別する目の正確さとご指導によるものだと思いますが--その岡山長春女号と古城先生が緻密な計算の元に作り出した最高の種オス=定太号を交配したとあって、非常に注目していた一胎でした。


長剣号と長新女号は5頭生まれた中でも特に定太号の形質を如実に表わしていました。

長剣号は定太号によく似ていましたが伸びやかな四肢を持っており、身体の割に脚が長く感じられたため「素軽い」と形容されることも多かったように記憶しています。この点は岡山長春女号からの表現と思われました。

長新女号は定太号よりは地味な毛色でしたが毛質は非常に良かったことをよく覚えています。この犬は毛色以外、定太号そっくりと言ってよいと思います。それ故に定太号の欠点と言われた前肢と胸部の接合が若干不正であったところまで表現していました。

また、2頭とも長春系のやや短毛気味の遺伝形質がでており、尻尾は定太号ゆずりの毛が密な丸尾でした。


長剣02
生後2ヶ月頃の長剣号
子犬ながら目型のキレが良く、すでに定太号の丸頭が表現されている。

長新女02
亡くなる1週間程前の長新女号
10歳くらいだったかと思う。この時既にヒラリアで体調が悪く
腹水がたまっていたが顔貌にゆるみ無く、毛質も衰えていなかった。


では、同胎犬の3頭はどうだったかというと、

長学号は手元に写真が無く残念ですが長新女号に似た胡麻毛で若干小ぶりな体躯をしていました。全体の表現は父母どちら似とは言えないような中間の表現でした。

長秀号と長克号の2頭はよく似ていました。毛色も赤胡麻でしたが、長春系定太号由来のオレンジがかった赤毛ではなく、松風号由来の濃い色の赤毛でした。

なんと、ここで岡山長春女号が遺伝子の奥底に持っていた[睦風号→京女号→那美女号]という松風号からの血統が発現していたのです。


長秀号
長秀号

睦風号
4代前に入っている睦風号
胸から足にかけてのパターン(柄)から体躯の表現まで
長秀号と驚くほど似ている。

このように、同胎犬5頭のうち、長剣号と長新女号,それに長学号は長春系の表現です。

あとの2頭、長秀号と長克号は賞歴(長秀号)もありますし、決して悪い犬ではありませんでした。ただ、何の所以か何代か前に入った別系統の遺伝形質が表れたのでした。


血統は一度違う系統が混ざると代を重ねる毎に、減数分裂して半減していきますが、まるで放射性物質のように、決してゼロになることはありません。

しかし、このように見分けることができれば、残したい表現型の遺伝子をできるだけ多く譲り受けた個体をセレクトしていくことができるはずです。

それは、かつて松本先生や古城先生が“なさってきたこと”そのものであったのです。(be-so)


_____________次回も通常の鑑賞の予定です