ご報告
光陰矢の如し。
今年も残り僅かとなってしまいました。
やり残したことはたくさんある気がしますが、どうしてもひとつご報告したかったことがあり、自分のこの一年の記録としても残しておきたいとも思い、この場を借りて書かせていただきます。
年末の慌ただしい時に仕事のことなので恐縮ではありますが、自分で何年も後で振り返った時に、2010年という年は恐らく一生忘れられない年になると思うので、PCに向かっている次第です。
私がどんな仕事をしているかというのをひと言で説明するのは大変難しいのですが、簡単に言えば、一企業のしがないサラリーマンではありますが、美術や芸術に関わる仕事をしています。
それで今年はひとつ大きな仕事がありまして、それは去る10月に永田町に新しくオープンした、とあるホテルがあるのですが、そのプロジェクトにおいて、インテリアの一部にアートという形で関わることができました。
ホテルについてはこちらやこちらを参照ください。
ご覧の通り、このホテルには大変長い歴史があり、2006年に立て替えの為に一旦取り壊されて、今年リニューアル開業。今後はグループのフラッグシップホテルとして展開されていくのでしょう。
何年も前から大規模な事業として長年プロジェクトが進められてきたものなのですが、様々な偶然や縁もあって、この一年、僕もそこにアートの部分で関わることができました。
(※下の方に画像を載せるので具体的なイメージは後ほどご覧ください)
具体的に何をしたかというと、インテリアの仕事には様々な種類がありますが、私がしたことは、建築空間に合わせてアート作品をコーディネートして設置するということ。各エリアでその空間に合う作品や作家を捜してきて、ホテル全体をプロデュースする方に提案し、プレゼンを重ね、作家と協力して作品を制作してもらったり、完成後は実際に現場に設置したり、、、
要するにそういう関係各所の様々な方と調整を重ねながら、一連の流れの中で仕事をしていました。
もちろん、過去にここまで大規模なプロジェクトに関わったことはありませんし、こんな若輩者のワタクシが参加できる類いの仕事でないことは、誰が見ても明らかだと思います。実際に一連のやり取りの中で顔を合わせた人の中に、20代と思われる人間はいませんでした。社内でも様々な事情や紆余曲折があって、私はチームに加わることになったのですが、これは本当に運がよかっただけです。参加できるだけで光栄だったと言っても過言ではありません。
ただもちろんこれは仕事ですし、案件が案件なだけに中途半端なことはできないし、正直、最後まできちんとやり遂げられるか自信もなく、最初から最後まで不安だらけでした。
ちょうど一年前くらい、去年の暮れあたりから実際に細かく動き出して、冬は打合せを重ね、春はプレゼンが続き、7月の終わりにようやく最後のエリアがFIX。その間作家さんには同時に作品制作を進めてもらい、8~9月頭に現場取付、その後も書籍の選定など最終調整があり、ようやく秋に無事開業という流れで、全てが終わった時には、ぐるりと季節が一周していました。
もちろん毎日こればっかりやっているわけにはいかないし、色んな会社が関わっていたので、全体の流れの中で一時停止と進行を繰り返しながら、一年が過ぎていった印象があります。
結果として我々は、客室からパブリックエリアのレストランを中心に、ホテル全体で大小合わせて、計111点のアート作品と数百冊の書籍を納めることができました。予算規模としても、当初のそれよりは下がりましたが、それなりの大きさになりました。
社内の担当者は、部長を筆頭に基本的に3名で進めていたのですが、そのプロセスの中で、私はプレゼン資料を作ったり、作家さんや先方との折衝だったり、実際に取付けの際には、取付け業者さんと共に真夏の現場で汗をかきながら駆け回ったりと、初めから終わりまでの全てのフェーズに関わることができて、実に様々な貴重な経験ができたように思います。各工程での細かいエピソードは省きますが、非常に中身の濃い充実した時間でした。
それなりに忙しかった気もしますが、終了時にはもうあの現場に足を運ぶこともないと思うと(実際にはお金を払って泊まったり食事をしに行けばよいのですが、現実問題、私のお給料で気軽に楽しめるような場所ではないので、簡単には行けないのです)、少し寂しい気持ちもあり、この仕事が終わらないでほしいとさえ思ったりもしました。仕事に対してそんな風に自分が思うとは、これまで想像したこともなかったので、正直、不思議な気持ちでした。頭にポッカリ穴があいたというか、妙な喪失感がありました。
世の中には様々な仕事がありますし、そこで働く人の気持ちも様々だと思います。
語弊がある言い方かもしれませんが、今振り返って思うのは、恐らく僕はこの件に関して、いわゆる「やらなければならない“仕事”」とは思っていなくて、ただ少しずつ物事が前進していくのが面白くて、その時その時で、目の前の問題をどうするかしか考えていなかったのでしょう。
大変なこともありましたが、今は楽しかったという印象の方が強いです。
* * *
個人的な話になりますが、僕はこれまでの27年間でそれなりの年月を過ごしてきたわけですが、過去を振り返ると、大学時代には途中で学部を変えたり、就職後も比較的早い段階で転職をしたりと、一体自分は何をしてきたんだろうと思っていました。
何というか、「私は一貫してずっと○○をやってきました」と、人にわかりやすく言えることが、これまでの僕には何もありません。
それはある意味ではひとつのコンプレックスでもあって、良く言えば「浅く広く」ということになるのでしょうが、人生それではダメなことも多いのです。
ただ、この仕事を進めていた中で、これまでの自分が過去に寄り道をしながらバラバラにやってきたことが、今回のプロジェクトの色んな場面で活かせたという実感がありました。
それは例えば、図面から空間がある程度把握できたり、構造とか材質とか、大学で建築を勉強していたこともそうだし、課題でデザインソフトを使って色々と作っていたのも助けになっているし、照明のことでは設備系の設計事務所で働いていた経験が活かせたり、効果的なプレゼン資料の作り方や文章の書き方は、以前勤めていた広告の会社での経験が役に立っていると思います。
あとは文学部にいたことや、昔から美術館などで作品を見るのが好きだったってことで、良いデザイン、良い作品についての、何となくの嗅覚も少しはあるのかもと勝手に思っています。
もう27にもなりましたが、こんな風に自分の過去をしっかり肯定できたことは初めてでした。
そういう意味ではこの一年の、自分の意志とは無関係に幸運もあって携われた仕事のおかげで、「自分は生涯を通じて一体何がしたいのか」、そんなことがぼんやりとではありますが、遅ればせながらも、ようやく自分の中で納得がいく形で見えたような気がします。
昔、ある人から「何かが出来上がっていくのはいいね」と言われたことがあるのですが、本当にその通りで、何もない所に人間の手によって何かが出来上がっていくというのは、あまりにも驚異的な事実で、あまりにも感動的な人間の営みの一つだと僕は考えています。
これは本来ならどんなことにも言えることなのでしょうけれど、一番わかりやすいのは、やはり建築とか美術作品とか、目に見えて手で触れられるものが創られていく過程です。純粋にそれが大きければ大きい程、労力もかかるし、大勢の人の手も必要になってきます。
元々は何もないところに、一本の線から描かれた図面によって建物や空間が出来上がって、その入れ物の中にアートが入る。作品には場や空間を大きく変える力があります。
インテリアとしてのアートは、装飾性という、ひとつのアートの在り方であり、その力は、美術館やギャラリーで作品を鑑賞するのとはまた違った形で僕を惹きつけます。
そういった芸術が持つ魅力や不思議を、もっと深く勉強したいと今は強く思います。
やはり人が何かを創造すること、つまりcreationという行為は、姿、形は変われども、どんな時代においても、その力が色褪せることはないと思うし、僕自身は作品を作ったり、図面を引けるわけではないですが、今後も何かしらの形で、このような「創造」の現場に参加していたいのです。
今回の物件のように、公共の場で自分が携わったものが多くの人の目に触れて、そこを通ったり利用する人々の様々な想いや記憶と共に未来へ残っていくことは、それをアレンジした当事者からすれば、とても嬉しいことです。
今年一年、この仕事で得たことや感じたことは、胸を張って今後の自分の糧にしたいと思うし、これからもこんな風に記憶に残るような仕事ができるように、日々がんばるしかないですね。
大変だとか辛いことがあるから、嬉しいことも楽しいことも感じられるのだと思うのです。
―――と、だんだん話がそれてきてしまいましたが、今年一年はそういった意味で、未熟者ながらも新しいことにも挑戦したりと、いい意味でフラフラとあっちへ行ったりこっちへ行ったりしていたという印象の一年でした。
実際に今回の仕事がきっかけとなって、私自身の仕事で、来年やその先にも繋がるような展開も出てきたので、本当に一年頑張って良かったなと思っています。
また来年も何か面白いことや良いニュースをお伝えできるといいなと考えています。
以下の写真はダイジェストのようなもので、あまり大々的に公開するのもまずいなとは思うのですが、何となく私がこんな場所にいたり、こんな景色を見て過ごしていたんだな、と参考までにご覧いただければと思います。
長々と失礼しました。
それでは皆様、良いお年をお過ごしくださいね。
では、また。







以下は設置後の公式記録用写真。もちろんプロのカメラマンによる撮影です。
一部の作品ではありますが、ダイジェストでご覧ください。
なんとなく全体の雰囲気がわかっていただけるかと思います。
今年も残り僅かとなってしまいました。
やり残したことはたくさんある気がしますが、どうしてもひとつご報告したかったことがあり、自分のこの一年の記録としても残しておきたいとも思い、この場を借りて書かせていただきます。
年末の慌ただしい時に仕事のことなので恐縮ではありますが、自分で何年も後で振り返った時に、2010年という年は恐らく一生忘れられない年になると思うので、PCに向かっている次第です。
私がどんな仕事をしているかというのをひと言で説明するのは大変難しいのですが、簡単に言えば、一企業のしがないサラリーマンではありますが、美術や芸術に関わる仕事をしています。
それで今年はひとつ大きな仕事がありまして、それは去る10月に永田町に新しくオープンした、とあるホテルがあるのですが、そのプロジェクトにおいて、インテリアの一部にアートという形で関わることができました。
ホテルについてはこちらやこちらを参照ください。
ご覧の通り、このホテルには大変長い歴史があり、2006年に立て替えの為に一旦取り壊されて、今年リニューアル開業。今後はグループのフラッグシップホテルとして展開されていくのでしょう。
何年も前から大規模な事業として長年プロジェクトが進められてきたものなのですが、様々な偶然や縁もあって、この一年、僕もそこにアートの部分で関わることができました。
(※下の方に画像を載せるので具体的なイメージは後ほどご覧ください)
具体的に何をしたかというと、インテリアの仕事には様々な種類がありますが、私がしたことは、建築空間に合わせてアート作品をコーディネートして設置するということ。各エリアでその空間に合う作品や作家を捜してきて、ホテル全体をプロデュースする方に提案し、プレゼンを重ね、作家と協力して作品を制作してもらったり、完成後は実際に現場に設置したり、、、
要するにそういう関係各所の様々な方と調整を重ねながら、一連の流れの中で仕事をしていました。
もちろん、過去にここまで大規模なプロジェクトに関わったことはありませんし、こんな若輩者のワタクシが参加できる類いの仕事でないことは、誰が見ても明らかだと思います。実際に一連のやり取りの中で顔を合わせた人の中に、20代と思われる人間はいませんでした。社内でも様々な事情や紆余曲折があって、私はチームに加わることになったのですが、これは本当に運がよかっただけです。参加できるだけで光栄だったと言っても過言ではありません。
ただもちろんこれは仕事ですし、案件が案件なだけに中途半端なことはできないし、正直、最後まできちんとやり遂げられるか自信もなく、最初から最後まで不安だらけでした。
ちょうど一年前くらい、去年の暮れあたりから実際に細かく動き出して、冬は打合せを重ね、春はプレゼンが続き、7月の終わりにようやく最後のエリアがFIX。その間作家さんには同時に作品制作を進めてもらい、8~9月頭に現場取付、その後も書籍の選定など最終調整があり、ようやく秋に無事開業という流れで、全てが終わった時には、ぐるりと季節が一周していました。
もちろん毎日こればっかりやっているわけにはいかないし、色んな会社が関わっていたので、全体の流れの中で一時停止と進行を繰り返しながら、一年が過ぎていった印象があります。
結果として我々は、客室からパブリックエリアのレストランを中心に、ホテル全体で大小合わせて、計111点のアート作品と数百冊の書籍を納めることができました。予算規模としても、当初のそれよりは下がりましたが、それなりの大きさになりました。
社内の担当者は、部長を筆頭に基本的に3名で進めていたのですが、そのプロセスの中で、私はプレゼン資料を作ったり、作家さんや先方との折衝だったり、実際に取付けの際には、取付け業者さんと共に真夏の現場で汗をかきながら駆け回ったりと、初めから終わりまでの全てのフェーズに関わることができて、実に様々な貴重な経験ができたように思います。各工程での細かいエピソードは省きますが、非常に中身の濃い充実した時間でした。
それなりに忙しかった気もしますが、終了時にはもうあの現場に足を運ぶこともないと思うと(実際にはお金を払って泊まったり食事をしに行けばよいのですが、現実問題、私のお給料で気軽に楽しめるような場所ではないので、簡単には行けないのです)、少し寂しい気持ちもあり、この仕事が終わらないでほしいとさえ思ったりもしました。仕事に対してそんな風に自分が思うとは、これまで想像したこともなかったので、正直、不思議な気持ちでした。頭にポッカリ穴があいたというか、妙な喪失感がありました。
世の中には様々な仕事がありますし、そこで働く人の気持ちも様々だと思います。
語弊がある言い方かもしれませんが、今振り返って思うのは、恐らく僕はこの件に関して、いわゆる「やらなければならない“仕事”」とは思っていなくて、ただ少しずつ物事が前進していくのが面白くて、その時その時で、目の前の問題をどうするかしか考えていなかったのでしょう。
大変なこともありましたが、今は楽しかったという印象の方が強いです。
* * *
個人的な話になりますが、僕はこれまでの27年間でそれなりの年月を過ごしてきたわけですが、過去を振り返ると、大学時代には途中で学部を変えたり、就職後も比較的早い段階で転職をしたりと、一体自分は何をしてきたんだろうと思っていました。
何というか、「私は一貫してずっと○○をやってきました」と、人にわかりやすく言えることが、これまでの僕には何もありません。
それはある意味ではひとつのコンプレックスでもあって、良く言えば「浅く広く」ということになるのでしょうが、人生それではダメなことも多いのです。
ただ、この仕事を進めていた中で、これまでの自分が過去に寄り道をしながらバラバラにやってきたことが、今回のプロジェクトの色んな場面で活かせたという実感がありました。
それは例えば、図面から空間がある程度把握できたり、構造とか材質とか、大学で建築を勉強していたこともそうだし、課題でデザインソフトを使って色々と作っていたのも助けになっているし、照明のことでは設備系の設計事務所で働いていた経験が活かせたり、効果的なプレゼン資料の作り方や文章の書き方は、以前勤めていた広告の会社での経験が役に立っていると思います。
あとは文学部にいたことや、昔から美術館などで作品を見るのが好きだったってことで、良いデザイン、良い作品についての、何となくの嗅覚も少しはあるのかもと勝手に思っています。
もう27にもなりましたが、こんな風に自分の過去をしっかり肯定できたことは初めてでした。
そういう意味ではこの一年の、自分の意志とは無関係に幸運もあって携われた仕事のおかげで、「自分は生涯を通じて一体何がしたいのか」、そんなことがぼんやりとではありますが、遅ればせながらも、ようやく自分の中で納得がいく形で見えたような気がします。
昔、ある人から「何かが出来上がっていくのはいいね」と言われたことがあるのですが、本当にその通りで、何もない所に人間の手によって何かが出来上がっていくというのは、あまりにも驚異的な事実で、あまりにも感動的な人間の営みの一つだと僕は考えています。
これは本来ならどんなことにも言えることなのでしょうけれど、一番わかりやすいのは、やはり建築とか美術作品とか、目に見えて手で触れられるものが創られていく過程です。純粋にそれが大きければ大きい程、労力もかかるし、大勢の人の手も必要になってきます。
元々は何もないところに、一本の線から描かれた図面によって建物や空間が出来上がって、その入れ物の中にアートが入る。作品には場や空間を大きく変える力があります。
インテリアとしてのアートは、装飾性という、ひとつのアートの在り方であり、その力は、美術館やギャラリーで作品を鑑賞するのとはまた違った形で僕を惹きつけます。
そういった芸術が持つ魅力や不思議を、もっと深く勉強したいと今は強く思います。
やはり人が何かを創造すること、つまりcreationという行為は、姿、形は変われども、どんな時代においても、その力が色褪せることはないと思うし、僕自身は作品を作ったり、図面を引けるわけではないですが、今後も何かしらの形で、このような「創造」の現場に参加していたいのです。
今回の物件のように、公共の場で自分が携わったものが多くの人の目に触れて、そこを通ったり利用する人々の様々な想いや記憶と共に未来へ残っていくことは、それをアレンジした当事者からすれば、とても嬉しいことです。
今年一年、この仕事で得たことや感じたことは、胸を張って今後の自分の糧にしたいと思うし、これからもこんな風に記憶に残るような仕事ができるように、日々がんばるしかないですね。
大変だとか辛いことがあるから、嬉しいことも楽しいことも感じられるのだと思うのです。
―――と、だんだん話がそれてきてしまいましたが、今年一年はそういった意味で、未熟者ながらも新しいことにも挑戦したりと、いい意味でフラフラとあっちへ行ったりこっちへ行ったりしていたという印象の一年でした。
実際に今回の仕事がきっかけとなって、私自身の仕事で、来年やその先にも繋がるような展開も出てきたので、本当に一年頑張って良かったなと思っています。
また来年も何か面白いことや良いニュースをお伝えできるといいなと考えています。
以下の写真はダイジェストのようなもので、あまり大々的に公開するのもまずいなとは思うのですが、何となく私がこんな場所にいたり、こんな景色を見て過ごしていたんだな、と参考までにご覧いただければと思います。
長々と失礼しました。
それでは皆様、良いお年をお過ごしくださいね。
では、また。







以下は設置後の公式記録用写真。もちろんプロのカメラマンによる撮影です。
一部の作品ではありますが、ダイジェストでご覧ください。
なんとなく全体の雰囲気がわかっていただけるかと思います。








































