「次は新神戸~!新神戸~!」






「オイ、ついたぞ!有田!」

「ムニャムニャ。おかわり・・・」

「早く降りるぞ!お前が松戸のオッサンを接待したんだろう?きっともう待ってるぞ!」


プシュー !

ガタンゴトン、ガタンゴトン ...


「ん?」

「どうした?有田?」

「おい、あのにーちゃん様子がへんだぞ?」

「あのギターをかついだヤツか?たしかに顔色が悪いな・・。」

「・・・・どんどん線路に近づいてないか?」

「ほんとだ。まさか・・・!」

「いくぞ!多良崎!!!」


二人は、今にも線路に飛び込もうとしていた男をつかまえた。

「オイ、あんた!気はたしかか?!」

「こ、ここは・・・?」

「新神戸駅だよ。あんた今、線路に飛び込もうとしてたんだぜ?」

「え・・・・?」

「覚えてないのかよ、危ねえな・・・。クスリか?」

「ととととんでもない・・・。僕はクスリなんかやらないよ・・・・。」

「ん?アンタよくみると見た顔だな。あ!もしかしてプロミュージシャンの、萩輝彦じゃないか?」

「ぼ、僕のことを知ってるの?」

「萩って、あの伝説のギタリスト?」

「そうだよ多良崎。ロックコンサートの演奏中に必ず気絶するという、あの”うつ病のギタリスト”だよ!」

「どうも、”うつ病のギタリスト”です。ハハ・・・。」

「萩さん、悪いことはいわん。ちゃんと医者に診てもらいなよ。」

「医者には、精神に負担をかけることは避けろ、って。だから、ギターと競馬から足を洗うつもりなんだ・・・」

「競馬?あんたも競馬をやるのかい?」

「多良崎はほんとに何も知らないんだな。萩さんといえば、ロック界一の大馬主なんだぜ?」

「ええ?馬主?!」

「馬主のマネゴトのようなものだよ・・・。」

「あんたの噂はよく聞くよ。今年も、クラシック戦線にいい馬を揃えてきてるじゃないの?」

「そうかな・・・。」

「ダンスパートナーの弟・ロックブライアンチャンピオン杯にも出走してただろ?ちゃんと覚えてるよ。」

「たしかに出走はしたけど、十着だったよ・・・。」

「なあ、萩さん。あんたからギターと競馬をとったら、いったい何が残るんだい?」

「・・・・。」

「生きる望みを失ってしまうんじゃないか?」

「・・・・。」

「そうだよ、萩さん。だから、さっきみたいに、無意識に電車に飛び込んだりするんだよ!」

「”うつ”なんて、あせって治す必要ないさ。」

「・・・・。」

「そうそう。”うつ”は早くても二年はかかるって聞くぜ。気楽に治療しようよ、萩さん。」






「う、うん・・・。」

「そうだ。お近づきのしるしに、一緒に食事でもどうだい?ちょうどこれから、オリエンタルホテルで知人と会食するんだ。あんたなら知ってるだろ?あのマッドヘリオスのオーナー、松戸さんだよ。」

「一度話した程度だけど知ってるよ。でも、今日のところは遠慮しとくよ・・・。」

「そうか。じゃあ、次は馬主席で会おうぜ!」

「馬主席・・・。」

「そうだ、オレたち神戸HCと約束しよう。今度は、日本ダービーの馬主席で会うって!」



「ダ、ダービー?! (((゜д゜;)))  ・・・バタン! 」



「オイ、有田!萩さん、気絶しちまったゾ!」


(つづく)




    (皐月賞翌日)






「マスター、スーパーキッド惜しかったな。それにしても、よくあの先行策を思いついたもんだぜ。」






「有田さん、天才調教師をなめたらイケマセン!それでも、サイトウ・・・もとい、マルゼンエッジには勝てなかったデスガ・・・。」

「まあ、今回は勝ち馬を褒めるしかないな。」 

「そうですね、多良崎さん。マルゼンエッジの勝負根性はすごかったですね。」 沖田がうなづく。

「敵ながらアッパレだったよ。しかし、そのうち必ずエッジを倒してやろうぜ!マスター!」

「ラジャー!有田サン!」

「・・・・。」

「どうしたんですか?西郷さん?」


「オイのせいでごわす・・・。」

「え?」

「オイのせいで、スーパーキッドは負けたんでごわす。」

「そう自分を責めるなよ、カツさん!あんたの騎乗は最高だったぜ。」 

「有田はん・・・。オイがあんな大外をブン回さなければ!素直に最内をついてさえいれば・・・。」

「・・・仕方ないね。あんたは三流騎手なんだから。」

「オイ、多良崎!」

「多良崎さん、ひどいですよ!」

「ひどい?キッドが負けたのはこいつのせいかもしれないぜ。仮にエッジには負けていたとしても、二着は確保できたはずだ。それが結果はどうだい。五着だぜ?」

「・・・・。」

「一流騎手なら、あんなバクチは打たねえよ。馬主が求める最低限の結果を残すはずだ。」

「五着でも十分立派な結果じゃないか、多良崎!」

「僕もそう思いますよ、多良崎さん・・・。」


「マアマア!スーパーキッドの真価が問われるのは、これからデス!」

「そうですよ西郷さん!あまり気にしないで、次のレースで見返してやりましょうよ!」

「次のレースでごわすか・・・。」

「そうだ、スーパーキッドの次走はどうするんだ、マスター?」

「決まってるだろ?ダービーでマルゼンエッジにリベンジだよ。有田。」

「・・・・・。」

「マスター?」

「次走は・・・・。安田記念に出走させマス!」

「安田記念?!」

「やっぱり、スーパーキッドは路線変更ですか?マスター。」

「YES、沖田クン。」

「NHKマイルCではなく安田記念?」


「皐月賞の疲労が大きいので、少し間隔を空ける必要があるんデス。」

「そうか・・・。それにしてもマイルとはな。」

「皐月賞はキッドにとって長すぎたんだと思いマス。」

「ほう。」

「最後の直線で脚がとまってしまったのも、距離が長かったからデス。」

「そうなのか?」

「YES!はっきり言いまショウ。マイルなら、何もしなくても勝てマス。 ( ̄∀ ̄)v 






「ウソつけ!!! (▼Д▼;) 」





「多良崎さん、僕もマスターと同じ考えです。」

「お、沖田くん・・・!」

「なるほどね。どうする?多良崎。おれはマスターたちの考えを尊重するよ。」

「おれは別にかまわんが・・・。しかし、エッジとの勝負はどうなる?」

「へへっ、忘れたのか?神戸HCには、もう1つの希望が残っているだろ?多良崎。」

「もう1つの希望?」

「有田はん、ヌルハチのことでごわすね?」

「ピンポン。カツさん、あんたにはヌルハチにまたがって、もう一度マルゼンエッジと戦ってもらうぜ。」

オカダトップガンをダービーに・・・?」

「そうですよ多良崎さん!ヌルハチならきっと大舞台でも「アッ」と言わせてくれるはずです!」

「だから、”ヌルハチ”じゃないってば!(▼Д▼#) 」

(つづく)





「たとえ100m余計に走ろうともかまわん!ここが王者エッジのビクトリーロードだ!」 






富士田の左鞭が飛んだ!馬場のド真ん中をぶち抜いて、マルゼンエッジがラストスパート!

直線、直線!コンディションのいい馬場を選んだエッジ!エッジが先頭だ!エッジが逃げる!ああっと、しかし!外ラチ?!外ラチ沿いから1頭現れた!これは・・・












・・・・・ キッド、キッド、キッドォ!!!



これは驚き!スーパーキッドはマルゼンエッジの更に外!「超」大外に進路をとっていた!




「大外はスーパーキッドの専売特許でごわす!」




鞍上ばんばのカツが雄たけび上げて、スーパーキッドが外ラチ沿いから現れた!消えたかに見えたスーパーキッド!ただ一騎、外ラチ沿いを疾風のごとく駆け抜ける!







「ドオオオオオ!」




スタンド前は騒然!騒然であります!豪雨を切り裂いて、スーパーキッドが外ラチ沿いを駆け上がってきた!スーパーキッドが一気に先頭に迫ってくる!

さあ、場内は大歓声!スーパーキッドが差を詰めてくる!交わすか、交わす勢いか、さあスーパーキッドがマルゼンエッジをかわすか!


さあスーパーキッドがかわしにくる、エッジは左鞭が飛んで、ああっ、エッジはちょっと苦しいか!ヨレた感じ!内にヨレた感じでエッジはピンチか!


来た!来た!来た!ミラクルスターがスーッと上がって来た!後続も一気に差を詰めて、さあ、これはどこからでも来れる状況か、ヒデノブライト、オーバーザワールド、ワールドはどこか、最内か、最内に突っ込んだか、


内からミラクルスターがやって来る!来たぞ赤い彗星!前二頭に迫って来る坂の下、さあミラクルスターがエンジン全快でエッジとキッドに迫ってきた! 先頭はどうか、マルゼンエッジ粘っているか、必死にキッド、必死にキッドが交わそうとしている!






あとは、あとは、一気にヒデノブライト来るか、オーバーザワールドも内から伸びてきて、さあこれは分からなくなった! エッジ、エッジが踏ん張っている!交わせないのかスーパーキッド、さあ来たぞ、ミラクルスターがやって来た!






ついに実現!ついに実現したこの瞬間!




マルゼンエッジにミラクルスターが内から並んできた! スーパーキッドはちょっと後退加減!さあ、二頭がやや抜けて来て、どちらか、どちらか!






内からミラクル!内からミラクルスターが交わしたか、交わしてしまったのか!?エッジ、エッジ踏ん張っているが、ミラクル僅かに先頭に立ったか、

ミラクルが先頭!さあ、ミラクルが僅かに先頭か!しかしエッジ!あっと、おっと、ああっ、エッジが差し返す!エッジが伸びた、エッジが再び並んでくるゴール前、


なんて馬だマルゼンエッジ!まだエッジは終わっていないぞ!エッジはまだ終わっていない!マルゼンエッジが再び先頭に立った!ミラクルスターも懸命に食い下がる!

これが見たかった!2強の叩き合い!さあ、どっちだ?どっちだ?おおっと、ヒデノブライト強襲して来たぁ!そして更に凄い脚でオーバーザワールド来る!最内から一気にワールド差を詰めて来る、

さあ前はマルゼンエッジ、そしてミラクルスター!神の子か?赤い彗星か?






今、2頭並んでゴォール、イン!

……!!!



さあどうかぁ!!一旦は先頭に立ったミラクルスターにマルゼンエッジの差し返し!2頭が並んでいましたがどうかっ!?見た目には、見た目には僅かに最後の最後で差し返したマルゼンエッジか、という感じ!









「ウワアアアアアア!」








ああ、掲示板にあがりました!







1着は6番!マルゼンエッジ!
ミラクルスター敗れるぅー!






「ドオオオオオオオ!」















エッジ神話は終わらない!エッジ神話は終わりません!最強の刺客・ミラクルスターを打ち破りました!勝ったのはマルゼンエッジ!王者の名は、マルゼンエッジです!

相手の力を十まで引き出し、自分は十二の力で勝つ!これが絶対王者の底力というものなのでしょうか?!



そして、3着以下は”追い込み三銃士”が入線した模様。直線あわやという形をつくったスーパーキッドを、ヒデノブライト、オーバーザワールドがわずかに捕らえたか?







大観衆からは、いまだにどよめきがおこっています!これぞまさに頂上決戦!凄い競馬になった雨中の皐月賞!競馬の神様は、マルゼンエッジに舞い降りました!

(つづく)



”時は今 あめがしたしる 皐月かな”  さあ、18頭全てゲートイン完了!






「ガシャン!!」






スタートです!おっと好ダッシュを見せたのはマルゼンエッジ、マルゼンエッジが……おおっ、これは行く構えか!?行った、行った、何とエッジが行った !






「ドオオオオオオ!」



スタンドは騒然!こうなるとグインはどうするのか、グインはちょっと出が悪かったのか押して押して四番手から三番手、そして二番手に上がってきますがさあ二番手で控えるのか?

グインはどうやら二番手に控える感じ。 何と言うことでしょう、先頭に立っているのは王者マルゼンエッジであります。グインが控えて一馬身差の二番手。

そして……おっと、スーパーキッドであります!スーパーキッドが何とこの位置!今日は早めの競馬か、意外な展開になっております皐月賞、三番手にスーパーキッド!


「なに?!スーパーキッド?」 マルゼンエッジの鞍上・富士田が声をあげた。

「おまんらの考えは、お見通しでごわす!」 スーパーキッドの鞍上・西郷が叫ぶ。

「チッ、”ばんばのカツ”め!・・・まあいい、エッジにはまだ奥の手があるさ!」

オフハンドジョークがその後に付いて、さあいました、ここにいましたミラクルスター。五番手の内目を通ってミラクルが行きます。その後になりますが、ここにサジタリアス。ディスコードがちょっと抑え気味でありまして、 トウショウキャロル、ミスカトニックも引っ張り気味、

ヒデノブライトは折り合って追走、バブルボーイ、ダテンシが押していって、クウキシャトルと竹本豊が行きます。そして最後方にオーバーザワールド、やはりオーバーザワールドは最後方で先頭からおしまいまでは十馬身程か、あまり差はありません、差はあまり付いていない、

エッジ、エッジがハナに立ってペースを作る格好。そんなに速いペースではありません。むしろスローペース、むしろスローに流れている感じか。スタンドは騒然、あれだけの歓声が湧き起こっていたスタンドが騒然としています! グインは二番手、抑えています、グイン。松長に何か策があるのか、珍しくグインは抑えての競馬。

スーパーキッドがその直後に付けています。これも驚きのポジショニングでありますが、レース前語っていたマスター富士川の秘策とはこのことだったのか、これで末脚切れたらもしかします、不気味な位置取り、スーパーキッド。

ミラクルスターは六番手と絶好のポジションであります。ライバルは先頭を行っているぞ、さあミラクルはどこで動くんでありましょうか?海老名はペースをどう読んでいる!?

ヒデノブライトは十一番手から二番手。その内からミスカトニックが掛かり気味でありますが、必死で抑えております川内、川内をもってしても制御できないといった感じか、ミスカトニック。

ずーっと行きまして、最後方がオーバーザワールド。最後方から悠々と進んでおりますがこのペース、このペースで差しきることが出来るかどうか、名手岡辺はこのペース、この位置からどんな競馬をするつもりなのか、

前はエッジ、終始エッジが先頭に立っております。各馬動きなく、というよりこれでは動けませんか、各馬、三コーナーから四コーナー、動きません、動けません!エッジが先頭!

おっとここでミラクルが動いたか!さあ、”赤い彗星”が天下取りに進出!これを見て一気に動いてきた、これを見て一気に各馬が動いてきます!

おっと、最終コーナーで前を行くエッジが大きくふくらんだ!い、いや、これは作戦か!なんとエッジは馬場状態のいい大外を目指した!

「ウワアアアアア!」


最終コーナー、さあエッジは大きな弧を描いて最終コーナーを回っている!内懐はガラ空きだぞ!二番手グインが内側をついて、先頭に躍り出る勢い!そして、直後からスーパーキッ・・・え?!

スーパーキッドが消えた!キッドが消えました!

(つづく)





(美浦・斉藤厩舎)






「斉藤先生!マルゼンエッジが皐月賞を回避するって本当ですか?!」


「そうなんだ、富士田くん。ジョッキーの君には、申し訳ないがね・・・。」


「そんな!」

「チャンピオン杯の疲労がああも大きいとは予想外だったよ。それに、高知での不慮の事故が我々スタッフに大きなダメージを与えたし、そこに追い討ちをかけるように、ここへきての熱発だろ?正直、お手上げの状態だよ。」

「だからって、逃げるんですか?」


勇気ある撤退、だよ。富士田くん。」


「負けるのがそんなに怖いんですか?」


「・・・・。」

「”王者はいついかなる状態でも、挑戦を受けて立つ責務がある” 先生は、いつもそう仰ってるじゃないですか?」

「富士田くん・・・。」

「マルゼンエッジは王者なんです!回避という選択肢はないはずですよね?!」

「・・・。」

「それに、まだ負けると決まったわけじゃないですよ。僕はエッジの力を信じています!」

「富士田くん・・・。」



     :





(皐月賞当日)

中山のメインレースは皐月賞、グレードワン。2強対決で盛り上がる中山競馬場から中継でお伝えしています。出走馬は18頭。生憎の雨でありまして馬場コンディションは重。さてこのあたり各馬にどう影響してきますか。


過ぎし日の、グラスワンダーVSエルコンドルパサー以上の盛り上がりを見せている場内では、既に大勢の観衆が”その時”を待ちわびています。


一番人気は万全の状態で来ているミラクルスターで2.5倍。マルゼンエッジは体調面での不安が囁かれて3.0倍の二番人気となっています。意外な形で実現した二強対決。

数分後に結果が出ると思うとなにかこう、鳥肌の立つ思いが致します。 二強に挑戦する形となった他の馬でありますが、三番人気はスーパーキッドで8.0倍と続いております。

(解説席)





吠々アナ:紀ノ川さん、皐月賞の解説をよろしくお願いします。

紀ノ川解説員:はいはい。

吠々アナ:いきなりですが、ミラクルスターを本命にした理由からお聞きしましょう。

紀ノ川解説員:僅かに力はエッジが上だと思ってるんですが、体調面での不利を考えると今回はミラクルに分があるだろうと。エッジは四ヶ月近い休養を挟むわけですからね。

吠々アナ:うーん、四ヶ月の休養明けは確かに辛いですね。

紀ノ川解説員:辛いなんてもんじゃないですよ。しかも熱発明けでもある。これで勝ったら素直に兜を取るしかないです。

吠々アナ:それでもエッジを対抗に推していますね。

紀ノ川解説員:まあそれだけこの二頭が抜けているということです。三番手評価はスーパーキッドにしていますが、正直面白みはヒデノブライトの方があるかも知れませんね。

吠々アナ:前走、休み明けでミラクルスターの二着しています。

紀ノ川解説員:素質は相当なものでしょう。早くから目を付けていた一頭なんです。今日も状態は良いようですねぇ。非常に楽しみです。

吠々アナ:あと、目に付いた馬などがいたら仰って下さい。

紀ノ川解説員:グインなんかが不気味ですね。この大舞台でまったく動揺していない。若虎杯の逃亡劇がまた見れるのか?

吠々アナ:なるほど。有り難うございました。ではもう一度、二強についてコメントしていただけますか。

紀ノ川解説員:印は打ってみたものの、やはりどちらが勝つのかは分からない、というのが本音です。ただエッジは噂通りいつもの迫力というか、覇気がちょっと感じられません。身体もまだ完調とまではいかないですね。これでミラクルに勝ったら……ちょっと恐いですね。

吠々アナ:そうですか。やはりエッジ不利と見るわけですね。有り難うございました。では実況にマイクを渡しましょう。

(パドック)






「斉藤先生、ありがとうございます!」

「私にだって、リーディングトレーナーとしてのプライドがあるしね。富士田くん、出るからには、もちろん勝ちにいくよ!」


「(勝ちにはこだわらない先生が・・・!)」

「・・・頼んだよ、富士田くん!」


「わかりました!マルゼンエッジを必ず勝たせてみせます!」


「さあ、いっておいで!富士田くん!」

(本馬場入場)

まずはグインの入場です!マスター富士川の秘蔵っ子グイン!凄まじいスパルタ調教に堪え、よくここまで来ることが出来ました。逃げ脚と根性、そして体力は誰にも負けません。調教の成果がここで試されます。鞍上は松長、前走は若虎杯1着。

       :


「ウワアアアア!」

歓声が湧きます、さあ入ってきた赤い彗星・ミラクルスター。今日もその凄さを見せてくれ、歓声にも全く動じない精神力はさすがであります。エッジ神話に終止符を打つのはやはりこの馬か。六連勝の不沈艦は今日も威風堂々!鞍上は海老名、前走は中山杯、1着。

一時期、トレーニングセンター内で「二強を負かせる馬」と話題になった素質馬の登場であります。兄の無念を晴らすのは今、オーバーザワールド。何と言っても名手岡辺とのゴールデンコンビ。「奇跡の末脚」は健在か。前走は中山杯4着。

 
        :

「ウワアアアアアア!」

おおっと、もの凄い歓声であります。さあ登場しました、ご覧下さいこれが神の子・マルゼンエッジです。ターフに姿を見せるのは、じつに昨年のチャンピオン杯以来。ああ、やはり凄い人気です、マルゼンエッジ。スタンド、割れんばかりの大声援であります。エッジ神話は今日も続くのか。体調不良が伝えられていましたが実際の所はどうなんでしょう。ゆっくりとキャンターに入りましたマルゼンエッジ。鞍上は富士田、前走はチャンピオン杯、1着。

       :

ヒデノブライト。斉藤師が二強に並ぶ器と評価しているのは周知の事実。休み明けをいきなり好走して、一気に人気が高まった感がありますが果たして今回はどうか。鞍上は喜田騎手。前走は中山杯2着。


      :

さて、最後の紹介となりますのは昨年のチャンピオン杯ではエッジにもっとも近づいた馬。最強の末脚が中山で爆発するか、スーパーキッド。鞍上”ばんばのカツ”こと西郷。神戸ホースクラブ所有、前走成績は若虎杯2着。

「キッドー、がんばってー!」

「どうだい?タカオくん、よく見えるだろ?」

「うん!有田のおじちゃん、キッドは勝つよね?」

「もちろんさ!古来のおやじさんが、きっと勝たせてくれるよ!」







さあ各馬ゲートインが既に始まっております。昨年のチャンピオン杯に集ったメンバー、プラス、ミラクルスターという図式が実現しただけも貴重なことです。存分に楽しみたいと思います、夢の皐月賞。ゲートインは完了!スタートを待ちます……








(つづく)





「ピンポーン、おじゃまします」






「おや?来客のようだね、えいくん。」



「ちょっと見てきます。有田さん。」





「はい、どちらさま・・・あ!貴女たちは!」



「栄太郎さん、ご無沙汰してます。その節はタカオを助けていただき、誠にありがとうございました。」


「おにいちゃん、こんにちは!」


「おや、タカオくん、すっかり元気になってよかったな!」


「うん!」



「ささ、どうぞお入りください!ちょうど有田さんも多良崎さんもいますよ。」



            :



「そうですか、それでわざわざ神戸まで来てくださったんですね?」


「ええ。タカオもこの通り順調に回復しましたので、お礼も兼ねて出てまいりました。」


「ぼうや、よくなってよかったな!古来のおやじさんも喜んでくれてると思うよ。」


「うん!ねえおじちゃん、僕、お馬さんがみたいな!」



「よし、じゃあ後でお兄ちゃんがお馬さんに会わせてあげるよ。」


「わーい!ありがとう!」



            :


「古来さんのことは、なんと言っていいか・・・。」


「お母さん、そう気になさらずに・・・。」


「みていてください、お母さん。今度の皐月賞では、おやじさんの秘蔵っ子・スーパーキッド号がきっと優勝してくれますよ。」


「ええ。私達も心から応援しています。」


「にっくきマルゼンエッジに勝って、オヤジさんとタカオくんの無念を晴らしてみせます!」


「有田さん・・・。」


「おいおい有田。マルゼンエッジに罪はないだろ?」


「まあね。だが、キッドがエッジに勝てば、天国のおやじさんも浮かばれるってもんだろ?多良崎」



「大丈夫!マルゼンエッジなんか目じゃないですよ。」



「お、えいくん!強気だな!」


「今回ばかりはエッジの状態は本調子じゃないですからね!もしこれで負けるようなことがあれば、きっともう二度と勝てないですよ・・・。」


「そうだな!よし、皐月賞は絶対に勝つぞ!」




「ねえ・・・おじちゃん。」


「なんだ?ぼうや。」


「僕も、キッドが走るところを見たいな・・・。」


「タカオ・・・。」



「そうか・・・。よし、わかった!ぼうやを皐月賞の馬主席にご招待してあげるよ!」


「ほんと?ヤッター!」


「いいんですか?有田さん」


「もちろんです。特等席で、古来のおやじさんが育てたスーパーキッドの勇姿をみてやってください。」


「タカオくん、ついでにウイナーズサークルにもご招待してあげるね。」


「おお!めずらしくポジティブな発言だな、多良崎!」


「ワハハハハ!」




「(古来のおやじさん、どうかスーパーキッドに力を貸してください・・・)」



「ん?どうしたえいくん。」



「いえ、別に!さあ、タカオくん、牧場を案内してあげるよ。ちょうどアリタブライアンってお馬さんが放牧中なんだ。」


「わーい、ヤッター!」









(つづく)



阪神のメインレースは若虎杯、G3。芝2000mで争われます。出走馬は16頭。一番人気は前走ワカタカ記念を5馬身差で圧勝したスーパーキッドで1.3倍。






さあゲートインが完了しています。ハナに行くのは恐らくグインだと思われますが……

今、スタートしました!

各馬揃ったスタートでありますが、まず行くのはグインか、グインがやはり逃げる構え、グインが出鞭を振るってハナに行きます。

ディスコードが行きます。そしてアキノミラクルがちょっと押っつけ気味。シーザスゴット、カムコマツがいてメディタオンラインがおります。

さあスーパーキッドはここだ、ちょっと抑えているか、西郷ジョッキー、スーパーキッドはやや抑えきれない感じでこれはスローペースか、かなりスローで流れている感じ、

さあ前に戻って、先頭はグイン、グインが後続を離して大逃げの構え、徐々に、徐々に差を広げてリードは四馬身。スーパーキッドはちょっと上がっていった感じで八番手あたり、

さあグインが軽快に逃げてリードをもう五馬身近く取っています。スーパーキッドも八番手から七番手、さあ最終コーナーに向かってグイン、グインがただ一騎、ぐんぐん行きまして直線に向かいます、

さあ最後の直線に向きまして、グインが先頭!グインのリードは四馬身、さあグインだ、グインだ、グインが先頭!先頭はグイン、リードはまだ四馬身ある、

さあスーパーキッドはどこだ!?スーパーキッドは内に潜ったか、しかし前は馬込みだ、上手く出せるのか、スーパーキッド、 先頭はグインで残り二百!グインが粘っている、さあスーパーキッドは馬群の中、キッドはピンチ!キッドはピンチ!

逃げる逃げる逃げる!グインが逃げています、阪神競馬場、さあ大歓声だ、大歓声だ、先頭はグイン スーパーキッドも漸く馬群を割って伸びてくる、おおっ、これは凄い脚だが、 前はグイン、どうか、さあ、凄い脚でスーパーキッドも飛んできたが、

先頭はグイン、ゴールイン!勝ったのは何とグイン!二着はどうやらスーパーキッド!いやあ、凄い逃亡劇!サイボーグホース・グインが重賞初制覇であります!父メジロパーマー・母エイシンバーリン、管理は富士川厩舎です!ああ、富士川厩舎はワン・ツーフィニッシュですね!


「YES!」






「グイン、頑張りましたね!」



「血のにじむような特訓をつませてきたからネ!皐月賞では、もっとすごい逃亡劇を見せてくれマスヨ!見ていなさい、サイトウ!」

「アハハ・・・。」


「スーパーキッドは、ちょっと展開が向きませんでしたね・・・。」

「これが追い込み馬の難しいところデスネ。いくらすごい末脚を持っていても、使えなければ意味がないデス。」

「・・・マスター、実は僕にキッドの秘策があるんですが・・・。聞いてもらえますか?」

「秘策?」

「ええ。皐月賞で、スーパーキッドの能力を最大限に生かすことができる秘策を思いついたんです。」

(つづく)


(皐月賞トライアルの若虎杯当日)





「これしかないデス・・・!マルゼンエッジに勝つにはこの戦法しか・・・!」






「マスター。今日の若虎杯も、グインとスーパーキッドのあの戦法を試すんですか?」 

「その通りデス、沖田クン。」

「チャンピオン杯ではマルゼンエッジに届かなかったデスガ、結果的に2着でしたからネ!あの”金ヶ崎の戦い”を極めることがエッジに勝てる唯一の方法なんデス!」

「そう何度もうまくいきますかね・・・。」


「それより、そろそろ1レースの新馬戦が始まるみたいネ。まあ、”あの馬鹿”には期待してマセンガ・・・。」

「オカダトップガン、ついにデビューですもんね。素質はありますし、僕は結構やると思いますよ。」

「1コーナーで、”ばんばのカツ”を振り落としてジ・エンド、デスヨ。」

「それは勘弁してほしいですね・・・。」


阪神1Rは3歳新馬戦、芝1600mで争われます。一番人気はアリスサイレンスで二倍。さあ、各馬ゲートインが完了・・・

おっと?!ああっ!ゲート内で暴れてる馬がいます!あれは・・・9番のオカダトップガンですね。危ない危ない、あ!鞍上の西郷騎手が振り落とされました!

「ウワアアアアアア!」

これはいけない、オカダトップガン。どうやら、オカダトップガンは外枠発走に変更される模様です。発走時刻は5分遅れる見込み、今しばらくお待ちください!

「あれが神戸の馬だとは・・・。は、恥ずかしい!」

「有田、言うな・・・。」






さあ、お待たせしました!体勢完了して、今スタートしました!



おおっと、いきなり大きく出遅れたのは、9番!オカダトップガン出遅れた!さあ、まず先頭に立つのはアリスサイレンス、アリスサイレンスが行きました。

その後はティーチングペペが押して上がっていきます。アルファが三番手、ラヴソングが続きまして、ロシアンルーレットが外目、レオナルドサンデーが控えて行って、カズキチタローも後方。そして最後方がマリッジチャンプ。






・・・


おっと、最後方からオカダトップガンがまくってきた!馬なりのまま一気に、一気に先頭集団に取り付いてきました!これは驚き!オカダトップガンがあっという間に先頭を伺う位置!


先頭はアリスサイレンス、二番手、掛かり気味にオカダトップガン!そしてティーチングペペ、岡辺鞍上のアルファがいて、その後ろにラヴソングがいます。ロシアンルーレットは中団あたり、カズキチタローは後方から二番手を進みます。

・・・

さあ、第四コーナーに掛かりまして先頭はここでオカダトップガンに変わった!先頭はオカダトップガンであります。レオナルドサンデー、カズキチタローあたりも徐々に差を詰めてきますが、まだ先頭からは距離があります。

さあ、先頭はオカダトップガンだ、直線に向いて、先頭は堂々とオカダトップガン。ティーチングペペは後退、変わってアルファが来ているが、オカダトップガンが離した!

オカダトップガンが先頭!さあ、後方からは何が来る!カズキチタローが来るか、カズキチタロー。 カズキチタローは大外に持ち出して追い込んでくるが、先頭はオカダトップガン!まだムチは入っていません!

オカダトップガンが先頭!アルファが追ってくるが、差は5馬身!まだ5馬身あります!後は、カズキチタローが来ているがこれは届きそうもない!

オカダトップガンだ!オカダトップガン、オカダトップガンが一着で、今ぁゴールイン!







「ウワアアアアアア!」



オカダトップガンが一着、勝ちタイムは、1:35:2。なんとなんと、大きく出遅れたはずのオカダトップガンが圧勝!父・マヤノトップガン、母ミスピーチ、オーナーは神戸ホースクラブです!


「多良崎、おめでとう!やったな!」

「し、信じられん・・・」

「なんてヤツだよ、こいつはとんだ掘り出し物だぜ。」

「夢、じゃないよな?」

「ああ。こんなド派手なデビュー戦ははじめて見たぜ。ホラ、さっそく記者たちもこっちに来たぞ。」

「神戸さん、すごいレースでしたね!少しお話を聞かせてくださいよ!」

「いやぁ・・・。」

「ホレ、ちゃんとしゃべれ!多良崎!」

「では、オッホン・・・。この勝利を、阪神大震災で被災された神戸の人々に捧げたいと思います。」

「阪神大震災ですか?また懐かしい・・・」

「懐かしい?そう、あんたたちにはそう思えるかもしれないな・・・。でも、あの出来事は決して風化させちゃいけないんだ・・・。」

「多良崎、おまえ・・・。」










「まあ、堅い話は抜きにして、またターフを沸かせてくれる馬が出てきたってことかな?」

「そうですね、”まともに走ったら”どれほど強いのか・・・。これは楽しみな1頭が出てきたなぁ!」

「へへ、あのヤングガン(やんちゃぼうず)を、まともに走らさせるのは大変だぞ。」

「有田、それを言うな・・・。」


(つづく)





さあ中山の10Rは中山杯、皐月賞トライアル、芝1800mのG2戦であります。






上位三頭までが皐月賞への切符を手に致しますこのレース、断然の人気になりましたのはレッドバロンHC期待の星・ミラクルスターであります。マルゼンエッジも皐月賞にはどうやら間に合うようで、二強対決はそれまでお預けということになりそうです。






二番人気はオーバーザワールド。今日はどんな末脚を見せてくれるのか、非常に楽しみであります。上り馬エアロゾーン、ミスカトニック、そして休養開けになりますがこれもG2ウィナー、ヒデノブライトも参戦いたします。

いやあ、凄いメンバーが顔を揃えました中山杯、いよいよゲートインが完了してスタートを迎えます。






「ガシャン!」


今、スタートしました!

おっと一頭出遅れた!これはミスカトニック、ゲート出が心配されておりましたミスカトニックが出遅れて後方になります。

ミラクルスターは好スタート、さあ押して押してマグニチュードが行きます。これは予想通り、マグニチュードがハナに行って歓声が上がります。二番手にはミラクルスターが付けた、さあミラクルスターが二番手であります。

三番手にはナカハートが押して行って、その後ろにヒデノブライトが早め。エアロゾーンがいて、押っつけ気味にロストシップ

レオンがおりましてサクラユウキオー、レイニングプレイズ、ミスカトニックが上がっていって、さあここにいました、オーバーザワールド。今日も指定席、最後方からレースを進めます。

さあハナに行ったマグニチュードでありますが、直後にミラクルスター、ミラクルスターが直後に付けています。ミラクルスター、いつでも抜けるといった形でピッタリとマーク!しかし、ペースはかなり速い!速いペースで流れております、これは後ろに有利な展開。

三番手は二馬身ほど離れましてナカハート。直後ヒデノブライト。休養開けになりますヒデノブライトが四番手から三番手に上がっていくか。ナカハート、必死に押しております。その後ろにエアロゾーンが追走。

さあ、おっと、ミスカトニックが掛かった感じで上がっていきます。これは作戦か、作戦なのか、ミスカトニック。ただ一頭が中団からぐんぐん上がっていきます、これは作戦なのか、北ジョッキー!?

さあ前はマグニチュードとミラクルスターが第三コーナーから最終コーナーへ。終始マークされる形でマグニチュード、これはキツイ展開、こうなるとマグニチュードはちょっと苦しいか、三番手以下も差を詰めてきます、ヒデノブライト、エアロゾーン、ミスカトニックあたりが上がってくるか、

マグニチュード先頭で最終コーナーを回って直線、さあ歓声が上がってミラクルスター、ミラクルスターが早くも先頭に立つ勢い、ああっ、マグニチュードは苦しいか、マグニチュードは後退して、ヒデノブライトが上がってくる、 そしてエアロゾーン、オーバーザワールドはどこにいる、まだ後方、まだ後方だ、

ミラクルスターが先頭、さあ見せてくれ”赤い彗星”、海老名の右鞭が入ってミラクルスターが突き放すか、二番手からヒデノブライト、ヒデノが食い下がっている、直後にエアロゾーンも付けているが、

ミラクルが先頭だ、おっと、内に潜ったオーバーザワールドが一気に来るか、ワールドが来た!内から……っと、しかしワールド詰まったか、馬込みが壁になったワールドちょっと窮屈になった感じ、

さあ前はミラクルにヒデノブライトとエアロゾーンが食い下がる!来るか、来るか、両頭が迫ってくるか、

しかし、しかし!赤い彗星!赤い彗星ミラクルスターが他馬を全く寄せ付けず、今、一着でゴールイン!






「ウワアアアアア!」

やはり勝ったのはミラクルスター!勝ち時計は1:47:3!二着争いはエアロゾーンとヒデノブライト、並んでいます!その後にオーバーザワールドか、 しかしこの競走は審議!恐らくワールドの不利に関してでしょうが、勝ち馬とは関係ないと思われます!

これでミラクルスターは負け知らずの六連勝!”待っていろマルゼンエッジ”といった感じで、さあミラクルスター、皐月賞に向けて王手であります!





つづく




「楽勝ネ・・・。」





皐月賞トライアル、G2中山杯の出走表を見たガミラス知美は、不敵な笑みを浮かべた。





「アウ、奥様。ミラクルスターはたしかに強いですが、このメンバーは強敵揃いですよ!」

「セバスチャンは黙ってろ!トモミのいう通り、こいつらじゃミラクルスターの相手はつとまらないよ。」 レッドバロンHCの伊達男・江草が冷たい視線をおくった。


「ア、アウ・・・。江草様、競馬に絶対はありませんよ!2歳G1チャンピオン杯の3・4着馬、オーバーザワールドとヒデノブライトがいるじゃないですか!」

「オホホ!セバスチャン、あなたは本当に心配性ね!私、悲観論者は大嫌いよ。」

「アウ・・・すみません奥様」


「”あの馬”と戦うまで、ミラクルスターが負けるもんですか。」

「”あの馬”?ああ、マルゼンエッジか?トモミ。」

「ええそうよ。まあ皐月賞に出てきたとしても、勝つのはスターに決まってるけど!」

「そりゃそうさ。なんたって、ミラクルスター、いや”赤い彗星”は、欧州遠征を視野に入れてるんだからな。」

「アウ?欧州遠征?!」 

「おや、セバスチャンにはまだ言ってなかったか?」

「アウ・・・。」

「そいつは悪かったな、セバスチャン。ミラクルスターは皐月賞を勝ったあと、キングジョージ参戦のため英国に遠征するんだよ。」

「アウウウウ?!」

「マルゼンエッジの首を手土産に、欧州競馬に殴りこむのさ。なあ?トモミ」

「ええ・・・。」

「どうしたんだ?トモミ」

「リオン・・・、その遠征だけど、もう少し様子を見ましょう。」

「WHY?皐月賞を勝つのは分かりきっているんだ。準備を進めて何が悪い?」

「私は、日本ダービーを優先したいの。」

「日本ダービーなんかに、まだこだわってるのかい?トモミ」

「レッドバロンHCがまだ勝ってないG1は、日本ダービーだけなのよ?今年は最大のチャンスじゃない!」

「何を弱気になっているんだい?ダービーなんて、そのうち勝つ馬が出てくるって。それより世界だよ、世界!」

「リオン・・・・。」








「なあトモミ。ミラクルスターは、俺達が今まで手がけた馬の中でも最強の馬なんだ。」

「それはもちろん分かってるわ。リオン。」

「あいつは、こんなちっぽけな島国の王になるために産まれてきたんじゃない。ミラクルスターは、”世界の王”になるために産まれてきたんだよ!」


「世界の王・・・。」

「江草様・・・。」


「秋には凱旋門賞にも出走させるんだ。1日も早く欧州の競馬に慣れさせたいんだよ。」

「・・・・凱旋門賞。」

「そうだよ、トモミ。ミラクルスターで、レッドバロン本部のやつらを見返してやろうよ。」

「・・・分かったわ。あなたがそこまでいうなら。

 でも約束して!”皐月賞を勝てなかったら、欧州遠征はあきらめる”と。」

「オーライ、トモミ!ただし、そんな心配はご無用さ。我らが”赤い彗星”は、こんなところで負ける器じゃないよ。ワハハハハ!」

「(日本ダービーは、私の長年の夢。皐月賞は・・・。)」

つづく